都心のホテル「和」のもてなし | 国際そのほか速

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都心のホテル「和」のもてなし 
  • 竹細工の茶びつの中には長崎の「波佐見焼」の急須と湯飲み。「ゆったりとした時間を楽しんでもらうための、小さなこだわりです」(東京都千代田区で)=栗原怜里撮影
  •   8月、東京都心にオープンした「ホテル龍名館お茶の水本店」は、9部屋すべてが1泊5万円以上のスイートルームという小さな高級ホテルだ。

      元は、創業116年の和風旅館。改装プロジェクトの中心を担った「龍名館」経営企画部長の浜田裕章さん(32)は「歴史に恥じないブランドを築いていきたい」と話す。

      前身の旅館は、畳部屋で1泊7000円程度だったが、周辺のビジネスホテルなどに押され、不振が続いていた。創業の地で巻き返しを図ろうと改装計画が持ち上がり、増加傾向にある外国人観光客に客層を絞ることになった。

      まず、都内はもとより関西圏の旅館やホテルを訪ねて回った。神戸のホテルでは、机やソファ、壁紙に至るまで、なぜこのしつらえを選んだのか語る総支配人の言葉に信念を感じた。「上辺の高級感を追求するのではなく、自信を持って語れる個性を持つことが大事だと気づかされました」

      各地で撮影した写真は500枚以上。気付いたことは逐一メモにして開業準備チームで共有し、目指すホテル像を語り合った。

      運営の基本理念には「学ぶ」というキーワードを据えた。館内に日本文化を紹介する本を集めた図書室を作り、窓には障子、テーブルには竹細工の茶びつを配するなど随所に「和」の要素を取り入れた。

      風呂は信楽焼の陶器製。窯元を見学し、でき上がるまでの工程をホームページの動画で見られるようにした。「代表的な観光地だけでなく、日本各地にすばらしい文化が根付いていることを知ってほしくて」。開業間もなく、風呂について尋ねてきた外国人宿泊客がいたことが、何よりうれしかったという。

      日本人の利用者が想定より多いことも意外だった。「都心で日本文化に触れ、ぜいたくな時間を味わえるのが好評なようです」

      稼働率はまだ目標には及ばないが、「じわじわと口コミで魅力が広がり、やがてブランドになる。そんなホテルを目指して、おもてなしに磨きをかけていきます」(野倉早奈恵)

     【休日】妻が喜ぶパスタ作り

    •   9か月の長男の子育てに追われている妻(32)のために、休日は台所に立つことが多い=写真=。学生時代からの料理好きを自任するが、「学生の頃は冷蔵庫の中の野菜を適当にいためて食べることが多かった。家族には、きちんと作ろうと心がけています」と笑う。

        最近よく作るのがパスタ。特にトマトソースに凝っている。トマトの水煮缶を使い、ほどよい酸味になるように煮詰め方を調節するのがポイントだという。

        昨年は、ベランダの家庭菜園で育てたバジルの葉を散らしたソースが好評だった。妻が特に喜んでくれたのが、ウニを加えたトマトクリームパスタ。「プロ級の味」という言葉をもらったという。

        家族と一緒においしいものを食べ、笑う。何よりも大切にしたい時間だ。「いつかは息子と一緒に料理をしてみたい」と今から楽しみにしている。

       

       【道具】高級感あるノート 士気高揚

      •   打ち合わせのメモやアイデアを書きとめるノート=写真=は、高級感のあるものを選んでいる。現在使っているのは、フランスの文房具ブランド「ロディア」のもの。分厚く黒い表紙を手にすると、「よしやるぞ、という気分が湧いてくるんです」。

          選ぶ基準はもう一つ。なるべく無地に近いものを使うようにしている。「文字だけでなく、図やイラストも描く。線が入っていない方が自由に描ける気がするので」

          打ち合わせの場にはノートパソコンも持参するが、相手の目をきちんと見て話したいという理由で、使用は最小限にとどめている。

          3色入りのペンを愛用し、大事な所や急いで対処する必要があると思った所には、青や赤で線を引く。後からパソコンでまとめやすい。「打ち合わせが続くことも多く、頭の整理に役立っています」

        はまだ・ひろあき 1982年、東京都生まれ。大学卒業後、保険会社勤務を経て2008年、龍名館入社。「ホテル龍名館東京」「ホテル龍名館お茶の水本店」の改装業務に携わる。現在は両ホテルの経営企画や市場調査などを担当する。