エコな海上輸送支える 神鋼、鍛造技術100年の進化 | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

エコな海上輸送支える 神鋼、鍛造技術100年の進化 

  神戸製鋼所は現在、舶用エンジンや陸上発電機用エンジンのクランク軸生産で世界シェア40%を占める。1905年に鈴木商店神戸製鋼所として創業以来、トロッコ車輪やイカリなどの鋳物を製造し、14年に1200トンプレス機を装備してからは鋳鍛鋼へと手を広げた。海外からの技術導入で舶用ディーゼルエンジンに参入。24年建造のタンカー「あかつき丸」に搭載した「神鋼8KD76型機関」は当時、独自仕様のエンジンで国産最大級を誇った。競争力を培ったクランク軸の技術系譜を製造現場にみた。

 ■クランク軸でシェア40%

 

 1万トンプレス機で何度も鋼塊を延ばす(兵庫県高砂市の神戸製鋼所高砂製作所)

  神鋼の高砂製作所(兵庫県高砂市)は鋳鍛鋼の基幹工場だ。1万3000トン水圧プレス機と4000トンプレス機を装備していたが、2010年にはウクライナ製の1万トン油圧プレス機を導入した。加工物をつかんで適正な位置に移動させるドイツ製の装置も付いている。加工時間が短縮でき、生産性は向上した。メンテナンスはグループ会社の要員が受け持つ。神鋼はかつてプレス機を生産していたため、その経験者を登用した。1万3000トンプレス機もコラムという支柱を交換し、リニューアルした。07~11年に投じた300億円の設備投資がクランク軸の高いシェアを支えている。

  エンジンのピストン運動を回転運動に変換するのがクランク軸の役目だ。断面がU字型の「スロー」と、スロー同士を連結する柱状の「ジャーナル」で構成する。クランク軸の製造方法は組み立て型と一体型に分かれており、比較的小型のエンジンに使うクランク軸は一体型となっている。酸素と硫黄の少ない高清浄度鋼の塊をプレスで1本のバーに加工し、さらに鍛造装置でスローとジャーナルを形作っていく。

 

 

  大型のクランク軸はスローとジャーナルを別々に製造し、これらを組み合わせて完成させる。神鋼は55年から、溶かした鋼を鋳型に注いで成型する鋳鋼でスローを製造していた。鋼をプレス機でたたいて成型するのと同等の強度で、生産性が高くコスト競争力を備えていた。しかし韓国や欧州、さらには中国のメーカーの台頭で優位性が揺らぎ始めた。09年、神鋼は鋳鋼スローによる組み立て型クランク軸からの撤退を決断する。鋳鋼から鍛造への製法変更だ。

 

 

  ただしプレス機で鋼をたたいて成型する折り曲げ鍛造とはプロセスが異なる。高強度で硬度の高い特殊金型を余熱してから鋼を押し込み、予熱したポンチをプレス機で押して成型する独自の「型入れ鍛造法」を確立した。外枠となる金型の内面には潤滑剤を塗り、ポンチで押すのは1回だけの一発勝負だ。「最終形に近い形状で金型から取り出すことができ、表面を切削して仕上げる後工程が楽になる」と神鋼の柴田耕一朗常務執行役員は語る。