
◆「明日持ってきて」
拡声機やコピー機、事務机、電話機、冷蔵庫……。物品レンタル大手のエイトレントが千葉県松戸市に設置している約7500平方メートルの「東日本商品センター」には、約50万点の商品がずらりと並ぶ。学園祭やパーティー、スポーツイベントなど貸出先は様々だが、「解散風」が吹き始めた今月中旬から、選挙関係の注文が殺到している。
同センターにこれまで寄せられた問い合わせは約120件。今回は準備期間が短いため、「事務所を押さえたので明日備品を持ってきて」といった急な依頼もある。師走の寒い時期の戦いになることから、石油ストーブなどの暖房器具の注文は、平年よりも約3割増えている。
解散した21日からの約1週間は、各陣営が事務所を開設するピーク。アルバイトを5人雇い、貸し出しの準備に追われている。山崎宏センター長(62)は「衆院選関連の受注は1億円くらいになる。休み返上で頑張らなくては」と意気込む。
◆いつもの10倍
静岡県藤枝市の向田工業所は、アルミ製の投票箱などの製造に追われ、社員7人が休みなく作業にあたっている。同社は、北は青森から南は沖縄まで、約30の自治体の注文を受けた。
投票箱の寿命は15~20年ほどで、自治体は定期的に買い替えている。通常は月に10~20個の製造だが、解散を受け、今月はその10倍は作ることになりそうだという。向田博社長(44)は「急な解散だったので、いつもの国政選挙よりも慌ただしい」と話す。
◆受注を中止
注文が多すぎて依頼を断っているのは、選挙用のポスターやパンフレットを取り扱う印刷会社のイツキプリント(東京都品川区)だ。解散直後の3連休を返上、工場はフル稼働状態で、既に普段の倍以上の量を印刷している。
選挙ポスターは十数件受注、計2万枚は印刷する見込み。選挙ポスターは名前の部分が光を反射しやすくするなど特殊な加工を施すため、印刷に時間がかかる。20日以降に寄せられた10件ほどの急な依頼は断らざるを得なかった。
斎藤博社長(62)は「前回、前々回の衆院選に比べて準備期間が短すぎる。納期が少しでも遅れると候補者に迷惑をかけてしまうので、やむを得ず断る形になってしまった」と申し訳なさそうに話していた。