[FT]ギリシャから距離を置く欧州中銀(社説) | 国際そのほか速

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[FT]ギリシャから距離を置く欧州中銀(社説) 

  欧州中央銀行(ECB)はここ数年、批判されるのが当たり前になってしまった。だが今週、ギリシャの銀行に対してECBではなく同国の中央銀行から融資を受けるよう求めたことは、見た目ほど強引ではない。

 

 ECBに到着したギリシャのバロファキス財務相(4日、フランクフルト)=ロイター

  これはECBが経済戦争を宣戦布告したというよりも、ギリシャの破綻を阻止するか否かの判断から手を引き、代わりに同国の新政権が欧州当局との交渉に取り組むことを表している。これは当然の一歩だ。ギリシャのユーロ圏での未来は中央銀行ではなく、政治家が決めるべきだからだ。

  ECBは今回の決定で、低格付けの債券を担保にすることを認めていた特例を撤廃する。ただし、ギリシャの銀行は「緊急流動性支援(ELA)」という枠組みを通じ、ギリシャ中央銀行から引き続き資金を調達することができる。

  ECBは崖からぶら下がっているギリシャが握る綱の片方を放した。ギリシャ中銀にELAを運営させる許可を撤回してもう片方の綱を手放せば、ギリシャは落下し、少なくともキプロスのような資本規制を実施するか、最悪の場合にはユーロ圏から離脱する事態に追い込まれる。

  これはECBが望んでもいなければ、主導すべき決断でもないのは明らかだ。ECBがユーロ危機への対応を担う「トロイカ」に加わっている主な理由は、国際通貨基金(IMF)と欧州委員会というほかの2つの機関に十分な資金力がないからだ。

  とはいえ、ECBはギリシャがトロイカの支援策を忠実に守っているかについての主な裁定者ではない。この支援策、とりわけ民営化や課税制度の改革など専門的な構造政策については、IMFとユーロ圏各国政府が中心になって評価すべきだ。ギリシャが改革を進めた見返りに、債務の返済条件や基礎的財政収支の黒字目標をどれほど緩和するかの判断もこうした機関が担うべきだ。

  ECBの今回の発表は、政治家に一歩踏み出すよう迫る明らかなサインとみるべきだ。確かに、支援策が見直されるか、全く新たな支援策で合意するまで、ECBはギリシャが破産しないようにするのを決めることができる。だがそれ以降は、協議の中心に居座るべきではない。