全員がニートで取締役の会社、11月設立へ | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

 メンバー全員が「ニート」(若年無業者)で、株主で取締役という「NEET株式会社(仮称)」が11月に発足する。「これまでの働き方とは違う可能性を探りたい」という新しい試みで、30日に東京都内で、会社発足のための押印式が行われた。

 

  • 全員で集合写真
  •  

      

    「幕末の脱藩浪士のように新しい思考で」

     

     

     

      NEET株式会社の構想は1月ごろ、持ち上がった。1990年に人材コンサルティング会社ワイキューブを起業して倒産させ、現在は中小企業経営者によるNPO組織「中小企業共和国」代表などを務める安田佳生さんが、人材組織コンサルタントの若新雄純さんに「準備費用は出すから、何か新しいことはできないか」と声をかけたのがきっかけだ。若新さんはそこで、「経済成長が終わった転換期、幕末の脱藩浪士のように新しい思考で働き方を考えられるのではないか」と思い、NEET株式会社プロジェクト運営委員長を引き受けた。

     

      インターネットなどで呼びかけたところ、6月の説明会後の申し込みが全国で約500人に上ったうち、本名を名乗った約340人が当初の正式メンバーとなった。

     

     

    主導権争い、けんかを経て175人が残る

     

     

      7月以降、「自分たちで仕事を作る」ことに向けて月1回の顔を合わせたミーティング、インターネット上のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やネット電話スカイプなどで話し合いを重ねた。その途中で、主導権争いやけんかも珍しくなかったという。そのうち、冷やかしや「従業員になりたい」などというメンバーは去り、現時点で175人体制になっている。グループで起業のアイデアを練っており、既にTシャツ作製や「女の子の部屋の空気の缶詰」など30から40の案が出てきているという。

     

      ニートは英国から導入された概念だが、現在の国の定義では、15歳から34歳までの働かない男女のうち、通学も家事もしていないものとされ、2012年には全国で63万人、同年齢人口の2.3%いるとされている。しかし、この会社の参加資格は「ニートの条件にだいたい合致する方」で、アルバイトなどで働いていたり、家事をしていたりと必ずしも定義通りではない。

     

      メンバーは同時に株主でもあり、ひとりが500円の株を12株持ち、6000円の出資となる。これを集めた100万円強の資本金で税理士の顧問料など最低限の費用をまかなう。ネットやクラウドファンディングを活用し、活動費用や運営リスクを極力抑える予定だ。

     

      上下関係はないが、会社の形式上、若新さんが代表取締役になる。ただし、任期1年。若新さんは「思ってもみない、とんでもない切り口のアイデアで新しいものを生み出していく集団になってほしい。そのため、指示・命令系統や厳密なルールも作っていない。僕は何も押し付けない。今後何ができてくるか、それは彼ら彼女ら次第」と話している。

      

     

    押印式には「なぞの群衆」

     

    • 一人ずつ順番に実印を押していった

        「いよいよ、就任承諾書と定款委任状にハンコを押すことになりました、イエーイ!」若新さんの掛け声に、会場から拍手がわき上がる。

       

        30日午後2時過ぎ、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターの一室。11月21日に設立予定の「NEET株式会社」の定款委任状への押印式には、約100人の男女が集まっていた。この日会場に来られない人などを含む175人でのスタート体制を整える日だ。

       

        近畿地方から参加していた男性(25)は大卒後、就職活動に失敗し、「既存の採用活動に疑問を感じて」参加。首都圏の女性(27)は「アルバイトしているが、面白そうだから来ている」。2浪して大学受験をあきらめ、現在は都内で一人暮らしの男性(21)は「ここに来て、いかに自分が主観でしかものを見てないかわかった。友達ができてエンジョイしている」と話す。

      • 女性の参加者も多かった
      • Tシャツ作製のデモンストレーションも 

         

          また、ネットオークションで月に15万円から30万円を稼いでいる男性、働く彼氏と同棲どうせい中で生活に不安はないが「機械のように同じ繰り返しの仕事はしたくない」と参加した女性もいれば、生活保護受給者(株主にはなれない)もいる。「なぞの群衆です」と若新さん。

         

          この日は、長さ数メートルにわたる定款委任状、取締役就任承諾書がテーブルの上に広げられ、ひとりひとりが実印と身分証明書を確認した上で、次々に押印していった。

         

          既存の就業構造を再考するこのプロジェクト、どうなるか。

         

          (メディア局編集部 京極理恵)