
高給取りの若者をバスで無料送迎
- のっぺりした某社の社員送迎バス
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シリコンバレーのIT系企業で働くソフトウェアエンジニアの給料は、ここ数年急上昇中です。
特に若くて優秀な人材の獲得競争は激しく、一流大学の情報科学・情報工学を卒業した学生の初任給はみるみる上昇、4大卒で800万~1000万円、さらに修士・博士ではそれぞれ数百万円ずつプラスでも、もはや驚かないレベルとなりました。また、企業間の人材引き抜き競争も激しく、それを阻止しようとしたアップル、グーグル、インテル、アドビの4社が「相互に人材を引き抜かないという裏協定」を結んでいたことが発覚、4社まとめて3億ドルを超す和解金を払ったのはこの5月のことです。
給料だけでなく、無料の食事と、同じく無料の高級バスによる送迎も、もはや一般的な待遇となっています。多くのIT企業は都会のサンフランシスコから60~70キロ離れており、その間にバスを走らせ「都会に住みたい若いエンジニア」をサポートしているのです。サンフランシスコでは、昔からいるヒッピー系・アーティスト系の住民と、新しく流入してきた高給取りの若者との間で確執がおこっており、その一環として「バス排斥運動」もおこっています。なので、無駄に刺激しないよう、ほとんどの会社のバスはどこにも会社名が書いていないのっぺりした外装だったりします。
中高生まで手厚い待遇?
「高給優遇」はインターンにまでおよび、最近では「月給6000ドル(約60万円)以上、加えて住宅と通勤の足も会社提供」などというのが「普通のインターンの待遇」になってきました。
Glassdoorという会社による調査では、全米インターン月給トップ10のうち、IT関係でないのはエクソンモービル1社のみ。トップは7000ドル払っているシリコンバレーのPalantirでした。(Palantirについての以前の記事)最近では、なんと中学生、高校生までが手厚い待遇でインターンをしているという話が聞かれるほどです。
さて、なぜそこまでの激しい待遇上昇があるのかと考えるに、「社会構造の世界的変化」という要因があると思います。
「効率化する人」と「効率化される人」
今、世界は、ITにより効率化が圧倒的に向上する側面にあります。それはまた「効率化する人」と「効率化される人」に人々が二分化されるということでもあります。この変化の中では、効率化によりいらなくなった人たちの仕事は二度と戻ってこない一方、IT化に必要なシステムを生み出して効率化を実現するスキルを持った人たちの価値は上昇します。シリコンバレーは「効率化のアイデアを生み出し、それを実現する人たち」が集積している場所であるために、給与水準が上がっているのではないか、と思うわけです。
とはいえ、そうした「本質的な変化」がおこっているときは、その価値は誇大に扱われがちで、そこにバブルが発生します。
シリコンバレーが「バブル的」状況にあることは誰もが感じているのですが、果たしてこれが「バブルの始まり」なのか「半ば」なのか「終わり」なのか。私は「まだ緒についたばかり」だと思っているのですが。