この抗体による治療薬開発を目指し、2017年度から臨床試験を始める計画だ。
森下教授らは、血液中の鉄分を細胞内に取り込む役割を果たす「トランスフェリン受容体」が、ATLの細胞の細胞膜表面に多いことを発見。この受容体に抗体を結合させることで鉄分の取り込みを阻害し、細胞を死滅させる。
動物実験で、がんを縮小させる効果や重い副作用がないことを確認した。独立行政法人・科学技術振興機構から最長5年間、約10億円の支援を受けてベンチャー企業とともに開発を進める。
ATLは毎年1000人以上が亡くなっており、九州・沖縄に多い。12年に治療薬が発売されたが、効果がみられる患者は約50%という。
日本HTLV―1学会理事長の渡辺俊樹・東大教授(血液腫瘍学)は「今回の抗体療法は治療の選択肢を増やす意味で有意義だ。他のがんに適応できる可能性もある」としている。