
電力市場を自由化する動きが本格化してきた。経済産業省主導のロードマップによると、3つの段階に分けて自由化が進められる。
第1段階として、2015年に広域機関の設立と独立規制組織への移行、第2段階として2016年に小売り全面自由化、卸規制の撤廃、供給力確保のための新しい仕組みのスタート、1時間前市場の創設、そして第3段階として2018~2020年にリアルタイム市場の創設、送配電部門の法的分離が計画されている。
こうした動きを見据え、これまでの全国9地域で電力を供給してきた一般電気事業者だけでなく、さまざまな業種から電力市場への参入が相次いでいる。
日経BP社が2014年12月に発行した『主要電力・エネルギー企業ビジネスモデル総覧』によると、新規参入企業は自社の持つリソースを活かして電力事業に参入しようとしており、そのエネルギー戦略が明らかになってきた(表)。
表 電力自由化を見据えた新規参入企業の戦略例 (『主要電力・エネルギー企業ビジネスモデル総覧』(日経BP社)より)
■「ガス&パワー」を強みに参入
ガス大手の東京ガスは、主力のガス事業と電力事業を組み合わせた「ガス&パワー」を強みに参入しようとしている。同社は、その強みが発揮されるケースの一例として、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムと系統電力の組み合わせを挙げている。
通常、家庭用燃料電池を購入した家庭は、昼間は電気の需要に合わせて部分負荷で発電し、この間に熱をためて夜にお風呂などに使っている。しかし、社会全体では電力需要が高いのは昼間である。
制度設計では、燃料電池などの分散電源からの発電を系統網に流して売電する仕組みも検討されていることから、昼間も最大出力で売電できるようになれば、顧客にとっても系統運用者および社会全体にとってもメリットが出てくるとみている。
同社はオンサイト電源(コージェネレーション)の事業も展開している。今後オンサイト電源と系統電力との適切な組み合わせにより、コージェネレーションの導入で系統電力の負荷平準化の効果も期待できるという。
■デマンドレスポンスをどう確保するか
新電力最大手のエネットは、小売全面自由化に向けた取り組みとして、デマンドレスポンス(DR)によるネガワット(節電電力)の確保に注力している。設備故障など不測の事態における供給力代替として活用するほか、電力システム改革の制度設計では小売事業者に供給力確保義務を課す検討が進んでいることが、背景にある。
同社はデマンドレスポンスを活用したサービスを「スマート系サービス」と呼ぶ。同サービスでは、需要家は提示された料金メニューを参考にしたり、サービスメニューを活用したりして節電。それがスマートメーターとIT(情報技術)を介して供給側にフィードバックされる。