2児の母、安全思い弁当店を起業…宮城県・気仙沼 | 国際そのほか速

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2児の母、安全思い弁当店を起業…宮城県・気仙沼 
  • 「子供らに安全なものを」と故郷・気仙沼で弁当店を始めた佐藤さん
  •   福島第一原発事故後、故郷の宮城県気仙沼市で耕作放棄地を借りて就農した佐藤春佳さん(27)が3月から、弁当店を開いた。

      2児の母である佐藤さんは、子供たちに安全なものを食べさせたいという思いから2012年9月、農業を始めた。それから約1年半、今度は「おいしくて体にいいものを多くの人に届けたい」と起業した。放射能測定器で安全を確認した食材のみを使っている。

      気仙沼港から車で20分の内陸にある弁当店「ボアラズ」。佐藤さんは毎日50食ほどの日替わり弁当を作り、近隣の住宅へ宅配している。弁当作りの傍ら、近くにあるハウスでトマトやハーブの苗の草むしりをしていた。手を真っ黒にしながら、「土って触るとすごく温かいんです。自然を全身で感じることができ、ストレスも吹っ飛びます」と話す。

      佐藤さんはシングルマザーで、1人目の子供がおなかの中にいる時に故郷へ帰り、東日本大震災に遭った。実家は1階が浸水したが、それ以上に原発事故による放射能に不安を感じた。スーパーやコンビニに行っても2人の息子に何を食べさせて良いのかわからない。

      それなら自分で生産や検査をすべて行うのが一番だと思い立ち、農家である祖父母に指導を願い、農業を始めた。

      虫が苦手だったが、4歳と2歳の息子2人が収穫したトマトを喜んで食べるのを見て考えが変わった。「食べてくれる人がいると汚れも疲れも気にならない。むしろ幸せ。育児と一緒ですね」。今は、祖父母と一緒に80アールの水田で米作りをするほか、耕作放棄地だった畑30アールを借り、レタスやキュウリも育てている。

      実は、佐藤さんは中学卒業後、東京の高校に進学し、映画女優を目指して都内の芸能事務所に所属していたことがある。一時、芸能活動を休業して故郷に戻ったが、農業の魅力を知ったことで、芸能活動を再開する予定はないという。

      ボアラズとは、「飛んでいる光」という意味のポルトガル語。安心で安全な食材を使った弁当で、気仙沼の人たちに希望の光を届けたいという願いが込められている。