「子連れインターン」でママの呪縛を解く! | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

「子連れインターン」でママの呪縛を解く! 

  今回のテーマは、「子連れインターン」。

  インターンといえば学生がやるもの、と思われるかもしれません。でも、今やママだって、いえ、ママこそインターンの時代なのです。

  中小企業庁の取り組みの一環で、モーハウスでも、初回となる昨年9月、7名の「子連れインターン生」を受け入れました(今年も実施予定です)。

  授乳服自体を知らない子連れインターン生も多いなか、初日はママたちの“思い込み”の呪縛をほどくのに精一杯…?!でも、いったん環境に適応すれば、社会人経験のあるママたちは企業にとっては即戦力そのもの。そしてママたちも子育てがぐっとラクになる。

  今回は当時のドタバタエピソードを振り返りながら、「子連れインターン」についてお話ししてみたいと思います。

行政も“新戦力”として注目、ママの力

 

  • 講師を呼んでの研修の様子
  •   昨年から中小企業庁が「中小企業新戦力発掘プロジェクト」の一環として始めた、女性の社会復帰を後押しするインターンシップ事業をご存じでしょうか?

      中小企業庁によるとその概要は、「育児等で一度退職し、再就職を希望する主婦等(新戦力)に対し、職場経験のブランクを埋める機会を提供するため、中小企業・小規模事業者で実施する職場実習(いわゆるインターンシップ)を支援する」こと。

      公式文書に、主婦が“新戦力”って明記されているんですね。ママたちが持つ秘めたパワーに、社会の注目が高まっていることがうかがえます。

    敷居の低い「お試し働き」でよみがえる自信

     

      実は以前から、私自身、主婦インターンの制度があればいいのに!と思っていました。そもそも、モーハウスの子連れスタッフは、赤ちゃんが生まれたら入社して、大きくなったら卒業して、元の仕事に戻ったりして、仕事を本格的に始める人もたくさん。まさに、有償のインターンシップとも言えます。

      いったん仕事から離れると、そこに復帰するのは、勇気がいるもの。特に出産後は、自分が置かれた環境も産前とは大きく変わっていて、子育てとの両立ができるかしら?と不安になるのは当然です。でもそこに、お試しで働いてみる、という低めのステップを加えることで階段を上ることができるんですね。

      モーハウスにも、いきなり「スタッフ」という形ではなく、なんとなくボランティアで手伝っているうちに、スタッフになった人もいます。また、働くことに対する自信をとりもどして出産前に就いていた仕事に戻っていく、という方もいます。

      そんな背景もあり、昨年、行政からお話をいただき、モーハウスでも計7名の「主婦インターン生」を5か月にわたって受け入れることにしました。そして、お話しする中、ここはモーハウスなんだもの、単なる主婦インターン生でなく、「子連れインターン生」を受け入れましょう!ということになったのです。

    「授乳は隠れてするもの」「3時間おき」という呪縛

     

    • インターン初日のあいさつの様子

        子連れインターン生として集まった7名のママと、その赤ちゃん。今回は授乳服を体感したことのない方もいたので、まずはママたちの“呪縛”を解くところからのスタートとなりました。

        初日の研修で、講師が話していると、次から次に赤ちゃんが泣いてしまう。モーハウスのいつもの会議ならば、スタッフは泣く前のタイミングで授乳するので、赤ちゃんも泣くことなく会議はとどこおりなく進むのですが…。「いつでも、抱っこしてあやしたり、おっぱいを飲ませたりしていいですよ」と言っても、「授乳は隠れてするもの」という呪縛にとらわれていると、「どこであげたらいいですか?」となってしまうんです。

        急きょ、授乳服を貸し出して着替えてもらい、ショップのスタッフから使い方をレクチャー。スムーズに授乳できるようになり、さて、これで一段落。…と、思っていたら、また次のハードルが。

        今度は、赤ちゃんを抱っこして廊下をずっと行ったり来たりするインターン生が…。「さっき授乳したばかりだから、まだ授乳できないんです」と。彼女は「授乳は3時間おき」という呪縛にとらわれていたんですね。

        「赤ちゃんが欲しがったら、いつでも何度あげてもいいんですよ」そう伝えて授乳してもらったら、赤ちゃんが泣きやみます。「なんだ、これでいいんだ」。

        そんなふうにママたちの“呪縛”を解いていくやりとりを繰り返しました。

      赤ちゃんを安心させてあげること=仕事を優先すること

       

        また、「赤ちゃんと仕事だったら、会社は、基本的に仕事を優先する場です」という説明をしたら、仕事に集中するあまり、その隣で子どもが大泣きしていたケースも。

        「仕事を優先するということは、自分も、周りの人も仕事に集中できること。だからあなたがすべきことはまず、赤ちゃんを抱っこして、安心させてあげることですよ」。そんなことを伝えたら、彼女は後に、それがすごく印象に残ったと教えてくれました。

        お腹(なか)がすいた、さびしい、おむつがぬれた、といった赤ちゃんの欲求に応えることで、自分も周りも集中して仕事ができ、そして赤ちゃんも満足。これが実践できると、子連れして出勤する親子にとって、会社は幸せな環境になるはずなんです。

        とにかく、最初の方は毎日がそんな感じ。でも環境に慣れるにつれて、インターン生たちも自然に「子連れワーク術」を身につけ、仕事ができるようになっていく。その変化には目を見張るものがありました。

        月12日以上21日以内、一日4時間以上8時間以内――などの条件の中でシフトを組み、ショップでの接客、イベント参加、事務所での業務などを経験してもらいました。そんなこんなでインターンも無事終了。

      ママも会社も楽になる

       

        「家事と子育ての両立がしやすくなった」「復職は難しいと思っていたけれど、職場の理解があればできると思った」そんなインターン生の感想から、ここの経験から得た自信が、仕事復帰への背中を押し、そして、家庭での子育て自体も楽になっていく様子がうかがえます。

        ずっと廊下を行き来しながら子どもをあやしていたママも、インターンに参加したことで、子育て自体がぐんと楽になったはず。

       社会に参加し、生活に子育てを組み込むことで、子育ても会社も、楽になるのです。

        (次回は9月17日掲載予定です)