ある場所へ行く途中、
大都会の駅の雑踏の中、

杖をついた女性が
誰かに突き飛ばされて 
その場に崩れ落ちました。

数人の人が助けに入り 
腕や背中を抱えて 
立たせようとしたのですが 

その人は、
手を振り払って
ヒステリックに叫びました。

よく見ると、
その人は目が見えていません。

そして、言葉の方も
そんなに上手には
話せない人のようでした。

助けようとした人達は
彼女がヒステリックに
叫んだことに驚き

立ち上がらせようとした手を離しました。

そして彼女が黙ると また
声もかけずに 立ち上がらせようとし

彼女が叫ぶと
またみんな手をパッと離す。

そんなくりかえし。



話を聞いてください!

と、彼女が叫んでいるのが
わかったので、

何を言っているのか
よく聞こうと思って近付くと

その内容は、

周りの人達から
何も声をかけられずに 

いきなりたくさんの人に 
抱えあげられたことで
パニックになっていたということ
だったのでした。


外人のたくましい黒人の男性が
たちあがらせるために、
腕をつかんだことで
痛みが走ったことが

より、恐怖心を煽ったようです。

もちろん、彼は
優しい気持ちで
やってくれたのだろうけど。


でも、周りの人は、

言葉を発するのが
上手じゃないこの女性の言葉を
ちゃんと聞こうとしません。

また、わらわらと
立たせようとします。



ほとんどの方は
ご存じないのかもしれませんが
 
目の見えない方には、
何かをする前にまず
声をかけるのは
基本中の基本です。


救命救急でも同じです。

わたしは、
あなたを助けに来ました。
安心してください。

そういってから、
行動を始めます。

パニックをしずめてあげることから
はじまります。


そして、
年齢があがるほど

関節以外のところをつかむと
皮膚が弱くなっているので
痛みが出てしまうのです。



なので、
それを言おうと
そばにいこうとしたら、


ある女性が落ち着いた声で

わたしの言いたかったことを
言ってくださったので

安心して
その場から離れました。


…結局
用事に間に合わなかったけれど。


 
目が見えていても、

状況がわからないまま
色んなことがおきると 
不安に押し潰されて

孤独の中
途方にくれるというのに、

その方は、
まったく見えてなかったのですから、
もっと恐怖感がつのったでしょう。


状況を伝えてあげれば
その人はパニックは
おこしませんでした。

不安になったり しなかったのです。

 
普段の人間関係もそう。

きちんと 説明をすること。

それが、

誤解のない、
優しい関係をつくることに
つながるのです。

見えないことは
不安で不安で
仕方がなくなることです。

誰を信じたらよいか、
誰が敵で 誰が味方か、
わからなくなるのです。


あなたは

状況が見えなくて
不安で押し潰されて

誰がどこで何をやっているか
見当もつかないなかで、

あなたを助けようとした人にまで、
手を振り払ったりしたことや、

叫んだことは
ありませんでしたか?


叫ばないにしても
不安で仕方がなかったこと
体験したことって、あるとおもいます。


もしくは、

そういう人を見たときに
理解しようとせずに
手を離してしまったり

どうしたらよいか
その人の言葉に耳を傾けるのが
めんどくさくなって

あきらめたり
したことはありませんか?



不安になった心を
知っているあなたなら

その人を助けることができるはず。

その人の立場にたてる人なら
気遣いが出来るはずです。


遅すぎることはありません。

そういう人をみつけたら、
優しく声をかけてから
手をさしのべてください。


あきらめず、耳を傾け
語りかけることで
それは出来るのです。

時間はかかるかもしれないけれど。