ドミトリー宿で知り合った佐藤が、ついに出て行った。佐藤は、もともと日本からバックパッカーとして旅をしていたが、すっかり友達になった高野に別れを告げて、次の目的地へ向かうことに決めた。高野はどこか寂しさを感じながらも、佐藤の背中を見送った。

その後、鈴木も宿を出て行くと言った。彼はカンボジアに商売を始めるために行くという。言葉少なに、でも確かな目をしている鈴木を見て、高野はどこかで鈴木の挑戦を尊敬しつつも、心の中で焦りを感じていた。自分にはそのような挑戦ができるのだろうか?と思いながらも、鈴木が旅立つ日、何も言えずにただ見送るだけだった。

そして、エミリーもまた、宿を出る日が来た。エミリーとは、日々の生活の中で少しずつ仲良くなり、気がつけば高野の心の支えになっていた。エミリーは、特に日本語が得意ではないにも関わらず、優しさを持った人物だった。別れが近づく中、高野は彼女に最後のお別れを言う前に、バンコクの街でデートをすることにした。

二人は町を歩きながら、いくつかの小さなカフェでお茶をしたり、雑貨店を覗いたりして過ごした。エミリーは、高野が自分を見つけられていないことを感じていたのだろう、ふと、「何か見つけた?」と聞いた。その言葉に、高野は胸が締め付けられるような思いを抱きながら答えた。

「まだ、何も見つけていない…」

エミリーは笑顔を浮かべ、優しく言った。「それでいいんじゃない?人生って、急ぐものじゃないわ。あなたはきっと、自分のペースで見つけられるわよ。」

その言葉に、高野は心が少し軽くなるのを感じた。エミリーの言葉は、あまりにも温かく、そして本当に優しさに満ちていた。

最後にエミリーは、高野に励ましの言葉を送った。「高野さん、あなたには素晴らしい未来が待っているわ。焦らずに、自分のペースで歩んでいってね。」

その言葉を胸に、高野は彼女を見送り、再び一人になった。

その後、宿に戻った高野は、ドミトリーの冷たい空気に包まれ、ふと気づいた。佐藤、鈴木、エミリー…これまで出会った人々はそれぞれ、自分の道を歩んでいる。その中で、自分は何をしているのだろうか。いつまでも同じ場所に立ち続けているわけにはいかない。だが、何をすべきかは分からない。

翌朝、高野は決断した。この地にいても、何も変わらない。自分の人生を歩むためには、やっぱり日本に戻るしかない。そして、日本での新しい一歩を踏み出す決心をした。