ガタンゴトン…
ガタンゴトン…
真夜中の列車内。
二人の男が対峙している。
この二人は、犯人と刑事。しかも、犯人の手には刑事から奪った拳銃が刑事の体を狙っている。
犯人は無表情で語りだす…
「寝ますか。寝る前にお話ひとつ、してあげますよ。リップ・ヴァン・ウィンクルの話って知ってます?いい名前でしょ。リップ・ヴァン・ウィンクル。彼がね、山に狩りに行ったんですよ。山へ狩りに。そこでね、小人に会ったんです。何ていう名前の小人だったかは忘れましたけどねえ。
ずいぶん昔の話だから。とにかくその小人に会って、ウィンクルはお酒をごちそうになったんですよ。そのお酒があまりにもおいしくて、どんどん酔ってしまったんです。そして、夢を見たんです。眠りに落ちて。夢を見たんです。寒いですか?寒いでしょ?その夢はね、どんな狩りでも許されるという、素晴らしい夢だったんです。
犯人は淡々と語り続ける。
ところがその夢がクライマックスに達した頃、惜しい事に、目が覚めてしまったんですよ。辺りを見渡すと、小人はもういなかった。森の様子も少し変わってた。ウィンクルは慌てて妻に会う為に、村へ戻ったんです。ところが、妻はとっくの昔に死んでたんです。
村の様子も、全然変わってましてね。わかります?つまり、ウィンクルが一眠りしている間に、何十年もの歳月が経っていたんです。おもしろいでしょ?」
犯人がうすら笑みを浮かべながら刑事に聞く。
刑事は恐怖を感じながら聞き返す。
「・・・あんたには、はじめっから妻なんかいなかったじゃないか」
「僕の話をしているわけではないでしょう。リップ・ヴァン・ウィンクルの話をしているんですよ」と犯人は言い返す!
刑事は犯人の何の感情もこもらない語り口、そしてこちらの顔を、まばたき一つしないで見ている様に金縛り状態に陥っていた。
つづく