『NEWSに恋して』
「ストーリーイベント
        素敵な出会いはすぐそばに」
ノーマルエンド後 彼目線


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きっと騒がれると思う。
そうは言ったけど、本当にこんなに騒がれるなんて。
って、想像はしてたけど!

思わず手を繋いだまま店に入ってしまい、人間の女性どころか、彼女ができたと、大将はそれはもう大いなる盛り上がりを見せた。
最初は少し優越感のような、思わずニヤけてしまう嬉しさもあった。
けれど散々からかわれて、店に入ってからずっと大将に絡まれている綾目さんを思うと、頭を抱えたくなる。

「どこで出会ったの?」の定番から始まり、
「どっちからデートのお誘いしたの!?」
なんて細かいことまで聞いてくる。

その度に綾目さんは、丁寧に優しく応えてる。
顔を赤くしながら、はにかんでいる様子はとても可愛いんだけど。
でも!大将とばっかりで全然俺が話せていない。

そして案の定料理を手伝っているので、カウンターの中、手も動かしながらなんともせわしない。
む〜とむくれていると、大将が聞いてはいけないことまで聞き始める。

「ところで、加藤くんのどこがよかったの?」

「えぇ!?」

「て、ちょっと待って!
それ俺も聞いてない、の前に何聞こうとしてるの!?」

丁度魚を捌いてるところだったので、つっこんだところで思わず大将の顔の前に包丁を差し出してしまった。
慌てて引っ込めるが、大将は気にもとめず、上機嫌は止まらない。

「だって魚しか友達がいなかった加藤くんが、いきなり女性を連れてくるんだよ?
それもまだ3回しか会ってないのに彼女だって!
どんな技でこんな可愛らしい子を射止めたのか気になるよね〜」

嬉々として言う大将。
俺はなんとも格好がつかない告白を思い出して、かぁっと、顔が熱くなるのを感じた。
結果としては良かったんだけど、あの格好悪い姿を思い出すと顔を覆いたくなる。
すみません、て謝っちゃう自分もどうかと思うし。
俺だって、ちゃんと計画すればもっとスマートにーーー
そう、焦って柄にもないことをしようとしたのがまずかった。

「いやいや、俺人間の友達いるし。
どんな技も何も、俺の魚釣り技術を持ってすれば女性を釣ることだってーーー」

「え?」

「、、、え?」

最初の「え?」は大将の「え?」。
はたと気付いて、大将としばらく見つめ合う。
綾目さんからは驚いた視線を感じて、俺は熱くなった顔が、一気に冷めて固まっていくのを感じた。
しまった。
ついムキになって、虚勢を張ってしまった。

「ふ〜ん、そんなにこの子の前ではかっこいいとこ見せたいんだ?男らしいとこあるじゃない。
まぁ、やり方は間違ってるけど」

大将はニヤニヤして、このタイミングで奥へと消えていく。
おいおい、ずるいぞ大将。
そして、反論できないぞ。

「、、、、、、」

しばらく、無言の間が続く。
俺は恥も何も捨て去って、潔く頭を下げた。

「すみません、変なところで意地張りました。
、、、本当はもっと勢いだけじゃなく、計画的に告白だってしたかったのに、全然上手くできなくて。
そんな、余裕がある人間なんかじゃないんです」

これが俺の本音。
告白一つまともに出来ない、俺の情けない姿。

「、、、私は、そんな可愛い姿も好きですよ?」

「え?」

思いもよらぬら言葉が返ってきて、驚いて綾目さんを見つめる。

「私だって、余裕なんかないです。
こんなにかっこよくて、料理も出来る人が彼氏だなんて」

少し目を伏せて微笑む姿に、俺は今日何度目かわからない、心臓をぎゅつと掴まれる愛おしさに襲われる。
俺はカウンターの中から出て、綾目さんの隣の席へ移動した。

「、、、そんなことないですよ〜」

今日一番のワードを囁き、また二人で見つあって笑い合う。

けれどまだ、心臓の高鳴りは止まらない。
俺は勢いに任せて、綾目さんの頬に手を添えると、そっと触れるように唇を重ねた。
離れると、目をまんまるくしてる、可愛くて大切な人の顔。

「、、、こんな俺でも、好き?」

満面の笑顔で頷く彼女に、俺はまた愛おしさを募らせた。
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