それは、お気に入りのメガスクーター、シルバーウィングのオイル交換のためにレッドバロン和歌山店を訪れた時のことでした。
作業を待つ間、店内に展示されている色々なバイクを、何の気なしに見て回っていると、店の奥の方にとんでもなくデカいバイクが2台並んで展示されているのが目に入りました。
それは、異径丸目2灯ヘッドライトが特徴の、2台のBMW1150GSでした。
まるでラピュタに出てくるロボット兵のような顔つきのバイクでした。
1台は黒、もう1台は黄色のボディカラーで、近づいてみると、迫力満点です。
この頃には、BMW-GSは、すでに後継モデルの1200GSが発売されていたのですが、私にはこの1150GSの丸みを帯びた柔らかいデザインの方が好みでした。
シルバーウィングの作業完了まで、まだ時間があったので、店員にGSをセンタースタンドから下してもらい、跨ってみたところ、巨大なバイクではあるものの、脚が当たる部分はスリムで、シート幅も細く、足付きは不安を感じるほどではありませんでした。
「いいなぁ…」
元々オフロードバイク好きの私は、このビッグオフローダーがとても気になりました。
それから、家に帰っても、そのバイクに跨る自分を想像することが多くなっていました。
「欲しい!」
そう思ってしまったら、もうダメです。
仕事からの帰りに、レッドバロンに寄って、1150GSの見積りをしてもらいました。
対応してくれたのは、以前DR250SHCのトラブルの際に冷たい対応をした店長ではなく、新たに赴任したての若い店長さんでした。
中古車ながら、見積りは150万円を超える価格でした。
シルバーウィングを買ってから1年ほどしか経っていなかったので、奥さんには買い替えを言い出せるはずもなく、私は会社の財形を使ってしまいました。(バレないと思っていたのですが、後日、財形出金のお知らせが郵送されてきたことにより発覚してしまいました…)
そんなこんなで、私の愛車は、シルバーウィングからBMW1150GSに変わりました。
BMWはご存知の通り、ドイツのバイクで、大柄なゲルマン民族の体格に合わせた車体です。設計の良さで、足付きは何とかなりますが、小柄な私にはハンドル位置は少し遠く感じました。
ただ、さすがにBMWのバイクで、乗って走り出してしまえば、安定感は抜群で、何の不安も不満も感じない快適なバイクでした。
ドイツ製品らしく、造形や設計は全て理詰めで、操作系も独特でしたので、慣れるのには少し苦労しましたが、車格の割にとにかく乗りやすいバイクでした。
鮮やかで美しい黄色のボディは、走っていても目立つので、信号待ちや駐車場では、よく声をかけられました。
レッドバロンで並んでいた黒いGSと私が買った黄色のGSの2台の違いは、付属品でした。黒いGSは、アルミのリアサイドケースが2個ついていました(10万円程度)。黄色のGSには、セブリングの1本出しチタンマフラー(9万円程度)が付いていました。私は迷わず黄色にしました。
そのセブリングマフラーは、とても心地よいサウンドで、これを選んで正解でした。
財形を使ってしまった引け目もあったので、たまに奥さんを後ろに乗せて、タンデムツーリングにも出掛けましたが、二人乗りも何の不安もありませんでした。
ただ、センタースタンドから下すときは、かなり前方までバイクが動くので、毎回スリル満点でした。
GSはオフロードバイクなので、たまに河原のダートも走ってみたのですが、ABSブレーキが秀逸で、ダートでのフルブレーキも余裕でした。
それと、BMW特有の〝テレレバーサスペンション″と呼ばれる、ブレーキングでフロントが沈み込まないという独特のフロントサスペンションは、フルブレーキングの際も、前のめりになることがなく、ABSとの相乗効果で、どんなシチュエーションでも安定感が抜群で、BMWの価格が高いことも納得できました。
また、BMWのアイデンティティである水平対向ボクサーツインエンジンは、全く振動がなく、なめらかで、まるでモーターのようでした。
とにかく、非の打ちどころのない優等生バイクでした。
でも、このBMW1150GSは、たった1年ほどで買い替えることになりました。
その話は改めて。
つづく