のケンジントンを見つけた時から2年ほど経っていたでしょうか。神戸勤務から和歌山勤務に戻り、新しい職場にも慣れてきて、休日がヒマだった私は、ふと、ミニ探しのことを思い出しました。

またミニ熱が上がってきました。

 

〝旧車は家からできるだけ近いショップで買う方が良い″ということで、私は、和歌山市内を中心に、自宅から1時間以内にあるミニのショップ回りを再開しました。当時知っていた条件に合うショップ軒数は4~5軒ほどでした。

 

最初に行ったのは、友人から教えてもらった、ちょっと旧い輸入車を扱っているショップでした。そこには、黒いミニがありました。外装はまぁまぁ(何回か塗り直しているのでしょう)、内装は黒ビニールで、少々傷みあり。モトリタのウッドステアリングは、ケバ立っています。リアのトランクフードには、Austinのロゴがありました。

「これって、Austin miniですか!」

「そうですよ」

「いくらですか?」

「乗り出しで100万円」

そのころの私には、ミニの知識が足りていませんでした。「100万円でAustinミニが買えるんだ」と思っていました。

検討すると伝え、家に帰ってネットで調べました。ショップで見たAustin Mk1の価格相場は、300万円以上でした。

「安い!買いだ!」

翌週もう一度そのショップに行ってみました。

黒いミニは、良く見ると、ネットで調べたMk1の特徴から外れていました。ローバーミニをMk1に寄せたミニでした。これはダメです。

ショップオーナーは、ウソをついたのではなく、ただミニに関する知識が不足しているようでした。

 

その数日後、1軒回りましたが、レストア前の古ぼけたミニが数台置いているだけで、どうやら複数台を継ぎはぎして1台のミニを作成している途中でした。この店はパスしました。

 

それから何日か後の日曜日、家から一番近い、マニアックで少し敷居が高い英国旧車専門ショップへ行ってみました。噂では、店主がなかなかの曲者で、マニアだけしか相手にしない店とのことでした。

緊張しながらショップに入ると、店番の女性が一人座っているだけで、他に客はいません。

店内は、何とも言えない古い空気が漂っていて、どこか懐かしい匂いがしました。

一見してかなりの年代物と分かるミニが数台、並んでいます。カントリーやスプリントもあります。MorrisやAustinのエンブレムが付いたミニは、本物のオールドミニです。どれも古いのですが、傷んではいません。店の外にもミニが数台並んでしました。店員さんに聞くと、全てイギリスから取り寄せた車ということです。継ぎはぎミニはありません。

ミニの他にも、水色とオレンジ色のGulfカラーのマーコス・マンチュラや同じカラーリングのミニ・マーコス、バンデンプラス、ロータス・ヨーロッパ、ジャガーEタイプ、そのうえユニパワーまで、雑誌でしか見たことのない希少な名車が息を潜めて展示されていました。すごいショップです。まるで英国車の博物館のようです。車を囲むように、アンティーク家具やオブジェ、グッズも並んでいました。車好きの私には、堪らないお店です。

色んなミニを、じっくり観察していて気付いたのですが、どうやら、ほとんどの車が、ノンレストア車のようでした。他のショップとは格が違うようです。そして、どの車にも価格は表示されていませんでした。

ミニ・マーコスに見入っていると、店の奥にあるエレベータのドアが開きました。中から、Gulfのポロシャツを着た、初老の男性が出てきました。店主のようです。

 

前情報に反して、店主は、早口でしゃべる、気さくなおっさんでした。ミニを買いたいと思っていると話すと、店内にあるクラシックミニのことをそれぞれ詳しく説明してくれました。店主のミニに関する知識は流石です。

価格はというと、Morris cooperは500万円、Morrisスプリントは600万円とのことです。

いろいろ話を聞いていると、この店では、Morris とAustinこそ本物のミニというふうに考えているようです。店内には貴重なオールドミニ、外は全てローバーミニ(ニューミニ)ということでした。そして、ローバーミニの価格は、車体価格88万円からということでした。

ローバーミニをチェックしてみると、メイフェアが3台、タータンが1台、ポールスミスが2台、クーパーが2台ありました。一台ずつじっくり見ている間も店主は、ずっと店内のMorrisやAustinミニを本物のミニだと勧めてきます。

店の内外を見終えたのですが、私の予算では、130万円のタータンが限界のようです。

それ以上見ていてもしょうがないので、「また出直します」と言って、私は店を出ようとしました。

「どんなミニを探しているんよ?(このラインナップに不足が?)」と店主が声を掛けてきました。

安価なメイフェアくらいしか買えそうになかったことが癪だった私は、雑誌で得た知識から、ローバーミニの中でも最も入手困難と書かれていたモデル名を言ってみました。

「ジョン・クーパーSを探しているんですが…、ローバーの」

 

(画像は、ネットからお借りしました)

 

ジョン・クーパーの名前を聞いて、店主は黙ってしまいました…。

 

つづく