翌朝、昨夜の浸水事件から一睡もできないままテントから這い出し、ずぶ濡れになった衣類を無言で干す。



サブや大ちゃんはあの嵐の中、大丈夫だったのか?と聞くと「面倒だったから寝た」らしい。

大ちゃんに至っては寝ている間、ノイズキャンセル機能の付いたイヤホンをして寝ている為、テントの危機に気づいていなかったようだ。

朝食後、準備が整い全員がボートに乗り込み出船する。




昨日の打ち合わせ通りに川の合流地点で釣りをする。

ここでピーシェ、オニギリ、サンブーンの3スタッフは救命胴衣を着ているのだが、俺達の分が無い事に気づく。


やぷ:なんで俺らの救命胴衣ないの?ここ深いし危ないだろ?

オニギリ:我々は泳げないけど日本人は泳げるでしょ?だから貴方達の救命胴衣は我々が着用しますので


意味が分からないwww何なのこいつら。

大体お前ら日本人と接触したのは今回が初だろ!?

漁師のピーシェが泳げないってどうゆう事なのwww

子供達とかスゲー泳いでたじゃん!!!

俺達の命より自分の命を最優先する優秀なスタッフ達。

活き餌を確保し、合流点に到着するとアンカーを投げ込むようオニギリに指示を出す。

アンカーがあるのと無いのじゃ大違いなわけで、これで昨日よりマシな釣りが出来る。

オニギリが勢いよくアンカーを投げ込むとロープが勢いよく水中へ吸い込まれていった。

アンカーが着底し、テンションが掛かった所でブチっと大きな音がした。

アンカーロープがぼろ過ぎて結束部分から千切れてしまった。

呆然と沈んでゆくアンカーロープを見つめる一同。


俺:おい!!!泳いで取れ!!急げ!!!オニギリ!!!

オニギリ:泳げないんで無理かな・・・

サブ:え・・一番やばい奴ですよこれ・・・・

大ちゃん:まじありえへんwwなにやってんのオニギリwww

やぷ:まじでちゃんとしてほしい・・・・

一同:で、これからどうするの・・・釣りできないじゃん・・・・



ボート内に暗雲が漂う。


オニギリ:とりあえず村へ帰ってアンカーになる物とアンカーロープを探しましょう・・・


ポイントへ到着後、アンカーとアンカーロープの紛失で即座に村へ帰り必要な物資を調達に走った。




オニギリ:あの、アンカーロープは非常に貴重なのでお金が必要です。なもんでお金出して


お前らがしっかりしないから無くなったんでしょうよ!!!何故俺達が払わなければならんのや!!!

怒り心頭である。

しかしアンカーもアンカーロープも無くては良い場所で釣りが出来ない。

こんなところでケチケチしている場合ではない。

事態は急を要するのだ。

結局集まった物資は土嚢袋に石を詰め込んだアンカーの代用品と柔道の帯位の長さの奴を繋ぎまくったアンカーロープ約15mのみだった。


俺:おい、こんな短いとアンカーロープの意味なくね?ポイント入れないんじゃね?

オニギリ:村人もロープは貴重で余っているものしか売ってくれなかった。我慢してほしい
一同:我慢て・・・・・・・・


グダグダ言っていても仕方ない。

無いものは無いのだ。

不満たらたらだけどな!!!!

気を取り直し、再度ポイントへ入る。

ピーシェ曰く、支流の黒色と本流の茶色の水がぶつかり合っている境目に小魚が集まっている為、そこにムベンガが集まるという。

とりあえず言われた通りに境目に生餌を流す。

こんなのでほんとに来るのかよ?と思っていたらソッコーで大ちゃんにヒットした


大ちゃん:来たー!!!ジャーンプ!!!


ムベンガは勢いよく弧を描きながらジャンプを繰り返し、そしてフックアウトし逃げられた。
惜しい惜しすぎる。


大ちゃん:やっぱ気抜いたらあかんなwwww


その後も大ちゃんに何度か当たりがあるもののランディングには至らず、夕方になり納竿の時間が迫っていた。

生簀で泳がせていた餌も底をつき、サンブーンが近くで漁をやっているオヤジに口笛で呼びつける。

明日の餌の事も考えて少し多めに購入することにした。





魚を物色すると見慣れないブサカワ系の魚(モルミルス)に目が行く。



ピーシェ:この魚がムベンガに超良いです。これはすごくいい匂いをだすのでムベンガの好物なんです。


普通のナマズの5倍の価格に驚きを隠せない。

このブサカワが5倍・・・・・

こんな鈍くさそうな魚食わねーだろwwwwwとかみんなで笑いながらブサカワ魚を付け流した。

ピーシェとサンブーンに餌の付いた竿を持たせて俺達は帰り支度をする。

帰り支度もあらかた済み竿の方を見るとピーシェの竿に魚がヒットしているではないか!?
しかも必死にファイトしてるし。


俺:おいwwwピーシェ!!変われ!!チェンジチェンジwwwそこどけwwwwどけってばwww

ピーシェ:フングウウウウウ!!!!!

サンブーン:ベンガ!!ベンガ!!ベンガ!!ムベンガ!!!


興奮の余り竿を頑なに持ったまま離そうとしないピーシェ。


俺:サブ!!!お前が釣れ!!!早く釣れ!!!やーっぷ!!ビデオビデオ!!!

やぷ:OK!!!

サブ:わかりました!!おいピーシェ!!どけっ!

大ちゃん:サブちゃん頑張ってや!!


ムベンガはジャンプを繰り返し、フックを外そうと必死に暴れ続けた。

この魚を生で見る為、そして獲る為にコンゴまで来た。

そして幾度となく挑戦し、様々なトラブルに梯子を外され行く事ができなかった。

俺にとっては夢の魚だった。

その夢だった魚が俺の目の前でジャンプをしていると思うと感慨深いものがあった。

そしてムベンガは抵抗虚しくサブの手によって釣り上げられた。


一同:ヨッシャアアアアアアアア!!!!キタアアアアア!!!ムベンガ釣れたあああああ!!!!











サンブーン:ベンガベンガベンガベンガベンガ!!!!


ムベンガのサイズは1mとまだまだ子供だったが、そんな事はどうでもよかった。

やっと獲れた!!夢が叶ったのだ。

皆で写真を撮り興奮冷めやらぬ内にサブがムベンガを締め、頭を土産で持ち帰る為に切り落とした。

あまりの手際の良さにオニギリが動揺しはじめる。


オニギリ:なんでサブは魚を捌くのが上手いんだ?

やぷ:サブはジャパニーズマフィアの息子でああやって人を・・・

オニギリ:サブさん・・・やばいっすね・・・・ジャパニーズマフィア怖い・・

サブ:やぷさんwwいい加減な事言わないでくださいww僕は善良な市民ですよ


やぷのいい加減な説明にやたら納得したオニギリはその日以降サブに一目置くようになった。

一匹釣れて満足した俺達はムベンガを食す為、キャンプへ戻り身を捌いた。




その間、酔っぱらった大ちゃんはピーシェの娘センテの巨乳を常に凝視していた。




ムベンガの身は白身で肉厚だ。コンゴでも高級魚らしく市場で買うと結構高いらしい。




半身を調理してもらい、俺達も焚火を起こし素焼にする。




食してみると太い骨が多いが白身に臭みも無くふっくらしていて美味い。






何とか2日目にして釣れた事で俺達の気持ちはだいぶ落ち着いた。

後はチャンピオン(現地では大物の事をこう呼ぶ)を狙うだけだ。

今夜は皆機嫌がよく酒が進む(いつもだけど)

焚火の前でダラダラしているとサンブーンが棍棒を持って叫びながら走ってくる。

そしていきなり地面を棍棒で何度も叩き付けた。


サンブーン:蛇だ!!!蛇だ!!蛇だ!!!蛇だ!!蛇・・・

やぷ:それ毒あるの?

オニギリ:サンブーンは毒のない無害な蛇だと言ってます

一同:なんで殺したん・・・・

サンブーン:・・・・


蛇はサンブーンの会心の一撃で絶命した。

蛇も焼いて食おうとサブが焚火でじっくり焼くも焼き過ぎて灰になってしまった。




蛇が哀れすぎて何も言えなかった。