釣行2日目
この日は川の状況も考慮して、近場の小川とチョロートの合流で良型のレノック、グレイリング、タイメンを狙えるポイントがあるらしくそこへ向かう。
が
洪水の影響で合流ポイントも濁水の餌食になっており釣り所では無くなっていた。
仕方なく、昨日爆釣したポイントへ向かうも一向に連れる気配が無い。
いくら投げても釣れないので俺は早々に飽き自然撮影に没頭した。
N君は諦めず冷たい川に足まで浸かり頑張っていた。
釣れそうなのは雰囲気だけでこの日は坊主に終わった。
釣り以外でやる事と言えば、寝る・番犬とじゃれ合う・乗馬・酒盛り。
どれもパッとしないが、とりあえず犬とじゃれ合った。
やはり犬は可愛い。
そしてデカイ犬は遊び甲斐がある。
終いには自分の方が強い事を分らせる為、首元に噛みついてやった。
モンゴルの奥地まで来て何をやってるんだろう。
そう思いながら青い空に浮かぶ雲を見つめながら、ボーッと廃人のようになっていた。
あまりにやる事が無いので洪水のチョロート川を前に食事をした。
食事中、ゾリグと色々と今後の事について話し合う。
話しあってもまったく良い案は出てこないのだが、それでも暇なので話し合う。
とりあえず、夕方に射撃の練習をしたら23時まで寝ろと言われた。
23時になったら起こしに来るから準備しとけと。
23時を過ぎる頃、ゾリグが小屋に迎えに来た。
どうやらこれから狼狩りに行くらしい。
見知らぬおっさんとインケ、ゾリグ、俺、難波君で車に乗り込みサーチライトで辺りを照らしながら獣の光る眼を
探した。
暗闇に光るものが幾つもある。
何が一番嫌だったのはおっさんの銃口が俺のお頭を常に向けられていた事だった。
殆どが家畜であるが、たまにキツネや野兎が姿を現した。
狼捜索から1hが過ぎた頃、約400m先に鹿が2頭現れた。
ゾリグはゆっくりとライフルを構え、銃口を鹿へ向け狙いを定めた。
そして乾いた銃声音が静けさの中、1発・・・・2発・・・・3発と放たれ辺り一面にその音が響き渡った。
やった。
弾丸が鹿に当たる感触を感じた。
そして鹿の居る場所まで走って行き、とどめをおっさんがさした。
おっさんは首から流れる血を手で掬い上げ、山の神に祈りそしてその血を飲んだ。
結局、狼を見つける事が出来なかったが、雄の鹿を一匹仕留める事ができた。
興奮と衝撃が入り混じる中、さっそく鹿の解体が始まった。
腹を裂いた瞬間、辺り一面に生温い獣臭が漂った。
手慣れた手つきで各部位に分けて捌かれていく。
見ていて残酷という感情は全くなかった。
むしろ早く食べたいと思った。
そして鹿はものの数分で頭と皮だけになってしまった。
肉は人間の食料になり、骨や臓物の一部は犬の餌になり、流れ出る血はバケツに集めウォッカで割った飲み物になった。
とかく殺すという行為が取り沙汰される時代だが、そこには何一つ無駄が無く、生きる為の狩猟には残酷という意味合いは存在しない。
こうして退屈な一日はこの数時間の出来事で忘れられぬ一日になった。