これで終わりという未来は変えられないのか…


「不適切にもほどがある!」宮藤官九郎っぽいセリフ集 最終回


「はあ~、あいみょん、なんで俺の気持ち知ってんだろう」

「知らねーよ!」

「失恋した男の失恋ソングってまかない料理みたいだよね。帰るよ」

「んん、どういう意味?」

「旨くもない。かと言って笑えるほど下手でもないカラオケって一番ストレス」

「じゃあ締めに『ドライフラワー』を」

「やめて! 好きだった曲がどんどん嫌いになる」

「あの部屋には帰りたくないんです。杏子と過ごした6日間が忘れられなくて」

「半年一緒に暮らした俺を追い出したことも忘れねーぞ」

「これがロスかあ。キョンキョンのいない世界なんて」

「フラれてからキョンキョンって呼ぶなバカ!」

 

「ほんとにいいの?」

「ああ、やれること大体やったし、どんな未来か大体わかったし、大人になった孫や、ひ孫にも会えた。面白いこといっぱいあった。捨てたもんじゃねーよ! こんな未来のためなら、おじいちゃんもうちょっとがんばれそうだ」

「ずっといれくれてもかまわないけど。そうもいかないか」

「俺はともかく純子が」

「(うん)」

「ちょめちょめしちゃうから」

「会うの楽しみ」

「喜ぶよ~あ、でも、娘としてじゃなく」

「わかってる。この前みたいに年上のお姉さんとして」

「ちょっと! 僕の事完全に忘れてましたね!」

「忘れてたし、願わくば帰ってて欲しかったよ」

「失恋したての人間ってのはね、24時間主人公なんですよ。忘れるとか、無視とかないから!」

「お父さん具合いどう?」

「小川!」

 

「ごめんね、もう会えないと思って」

「いよいよお別れですか、お義父さん」

「タイムマシン、最後の1回は渚っちのために使おうと思ってさ。ほら、最近元気ないでしょ」

「はい」

「おお。もう会えなくはないね」

「会えますね」

「お父さんはむしろ、これから4年後です」

「犬島ゆずるくん、私この人と結婚する」

「悪いけど、俺は2人の結婚許さないと思う」

「はい。許さないでください」

「『そんな肩幅の男に娘はやれん』。いいのか? 渚っちが生まれてこないぞ」

「御心配なく」

「お腹に赤ちゃんがいるの」

「この野郎。うん? ってことはそこで俺が体を張って2人を引きはがせば。『この野郎!』」

「大丈夫です。お義父さんがいくら反対しても、ゆずる、ゆずりませんから。ゆずる、六本木の覇者ですから。『はいはいはいはい! お義父さん、この通り、お義父さん、ビリーブ・ミー』」

「やがて渚っちが生まれ、俺と純子はこの世を去る」

「ところが2024年、お義父さんがタイムマシンで私の前に姿を現す」

「『初めまして、お父さん』。いろいろあって、昭和に帰って4年後。お前が俺に会いに来る」

「はいはいはいはい!」

「俺は許さない」

「許さないでください」

「この野郎!」

「渚っちが生まれ、俺と純子が死んで」

「2024年、お義父さんがタイムマシンで現れる」

「『初めまして、お父さん』。昭和に帰って4年後」

「はいはいはいはい!」

「やめよう、吐きそうだ」

「はい」

 

「ああ、どうしたもんかね、この裏声野郎」

「仕事にも支障が出てます。取引先で急に泣き出したり」

「ちょめちょめとキョンキョンしてー!」

「なんとかなんないの、おたくのアプリで」

「最新版にはロックオン属性モードが搭載されて、愛称99%の相手をロックオンできるんです。ただ本人じゃないと登録できないシステムなんで」

 

「にしても少ないね、見送りが。もうちょっと来てもよさそうなもんじゃない? 八嶋とか」

「朝早いから失礼しますって」

「失礼しちゃうね。やっぱり人望ないのかな」

「親父呼びましょうか」

「いいいい、向こうで会えるし、そんなに思い入れないから」

「キヨシ、お願いしますね。どんなに嫌がっても、無理やりにでも乗せてください」

「私に伝えてください。ムツゴロウ王国は崩壊すると」

「自分、ぜってえ、幸せになります」

「うん。基本みんな自分のことばっかりだね」

「小川さんももっと自分のこと大事にしていいんだよ。なんつって」

「あはは、ありがと」

「燃料もったいないんで、バス停までうちの学生が押します」

 

「はあ、ようこそ昭和へ。どうだい」

「臭い」

「臭いって感想は初めてだ。まあ、そうのうち慣れるさ」

 

「どんなお母さんだった?」

「ゆりちゃん? ちょっと変」

「市郎さん、市郎さん、今日のお昼は何を食べましたか?」

「そうっすね。妻の愛妻弁当いただきました」

「特に何が美味しかったですか?」

「そうっすね。ささみフライと、やっぱり玉子焼き。玉子焼きが甘くて美味しかったですね。それが勝利につながりましたね」

「晩御飯のおかずは何だと思いますか?」

「うーん、どうでしょう。カレーの匂いがプンプンしてますが」

「最後に奥様に一言」

「ゆりちゃん! 宇宙一愛してるよ!」

「ゆりも!」

「あははは」

「あは、それ毎晩?」

「毎晩。子ども心に、うちの親ちょっと異常? って思ってた」

 

「よー、元気そうだな」

「お帰りなさい」

「トゥナイト見たくて帰って来たよ。あはは。お前どうする? 純子とちょめちょめできなくても、地上波でおっぱい見たし、そろそろスタバのマンゴーフラペチーノ飲みたくねーか?」

「飲みたい」

「じゃあ3時55分に出るから、友達バイバイして来い」

 

「なんですか?」

「君、向坂キヨシの」

「はい、同居人ですけど」

「サカエさん、どこ行っちゃったの? 連絡とりたいんだけど」

「えっと」

「僕なんかした? 全く身に覚えなくて。そもそもあの人少し不思議っていうか」

「あれ? 安森君? どうした。同伴? 店外デート? ほどほどにね」

「はあ?」

 

「ごめん、なんか短時間でいろんなことが起き過ぎて、食べよっか」

「その後輩の人、もう怒ってないと思う」

「すいません、妊活で」

「どうかな」

「自分のことしか考えられない時ってあるよ、誰でも。そういう時他人の言葉とか、態度とか、ガラスの破片みたいに刺さcっちゃうんだよね。でも落ち着いて考えたら、渚がそんなつもりで言ったんじゃないって絶対わかるもん。渚がだって、ごめん、渚さんだね」

「渚でいいよ」

「ふふふ、だからその子、今頃後悔してる。引っ込みつかないだけで謝りたいと思ってるよ」

「うふふ、美味しい! なんだ! やればできんじゃんマスター!」

「俺?」

「ナポリタン、全然違う。なんで? なんか変えた?」

「いや、いつも通りですけど」

「いつも通りやんなよ! じゃあいつも。プロなんだから。もさっとして、べちゃっとして」

「渚さん、渚さん、ついてる、ケチャップ」

「うそ、どこ?」

「座って。♪渚のハイカラ人魚、キュートなヒップに」

「♪ズッキン、ドッキン」

「♪渚のハイカラ人魚、夏まで待てない」

「♪ズッキン、ドッキン」

 

「未来の俺に伝えてくれ、ムツゴロウ王国は不滅だ!」

 

「ありがとう、小川さん」

「ああ、うふふ、もう会えないんだね」

「俺は会えるけど、渚は、な? 俺が誰だ変わらない。ビリビリ来なかった。あはは。元気でな」

「うん、元気でね。おじいちゃん」

「おじいちゃん?」

「ああ、老人って意味だろう」

 

「ありがとう、純子先輩!」

「キヨシ!」

「純子先輩!」

「元気でね」

「おっぱい、見してくれて、ありがとう!」

「なに!」

「バイバイ!」

 

「いいか、地獄の小川は今日で引退だ。俺は今日から仏の小川だ。プロになるやつはな、怒られる前にやるんだ、自分で。よーく覚えとけ。将来日本からバンバン大リーガーが出て、世界中から注目される。ピッチャーでホームラン王。二刀流。顔こんなちっちぇえんだよ。ケツ、俺の顔の高さだよ。そんなやつにけつばっとなんかできっか!」

 

「あーあ、またじじいと二人暮らしかよ。気楽でいいけど」

「そんなこと言ってると再婚しちゃうぞ」

「してみろよ、屁こきじじい」

 

「娘さんすごいですよ! 現役合格狙えますって」

「うーん、そんなこと言わないで先生」

「ほんとですって、4月までぶっちぎりのビリだったんですよ。偏差値30、ビリのスケバン、ビリスケだったんですから」

「大学なんていかなくていいんです、純子は。高校卒業したら働け。水商売でも風俗でもいいから」

「何言ってんだよ、じじい。嬉しくねーの? 評価Aだよ」

「よく頑張ったな、小川。青学の幼稚園にも入れないようなバカ女だったのにな」

「バカでいいんです、純子は。バカのままでよかったのになあ」

 

「いや、わかるんですけど、言いたいことはSNS。気に入らない相手はブロックっていう風潮。なんかもやもや。私も昭和で変わってしまったのかしら」

「こっちはこっちで酷いもんだよ。校長代理がいじめの加害者連れて、被害者の家に押しかけて、直接謝らせてる」

「ええ、何そのパフォーマンス」

「挙句の果てにPTAで熱弁ふるってよ」

「いじめられる側にだって問題があるはずです。ぜひご家庭で話し合ってください」

「最悪!」

「生きづらいわ―昭和。令和戻りたいわ。ラヴィット見ながらスシローのサラダ軍艦食べたいわ」

「だったら今日私が熱かった案件言いましょうか」

「ああ」

「戦隊もののピンクだけが女というのは家父長制の名残だと抗議を受けたら、同性愛者も入れるべきでしょうか」

「ええ」

「配信系で見られるように、男の乳首は自粛すべきでしょうか」

「なにそれ」

「ADにハラスメントで訴えられているが、そのような事実は一切なく、これはハラスメントハラスメントだと主張したらそれがハラスメントだ。ハラスメントハラスメントハラスメントだと逆提訴されました」

「いやー、令和無理! 昭和も令和も生きづらいってことでいいかな」

「生きづらい。どっちもそして寛容じゃない」

「その通り、寛容と大雑把は違うんだよ」

「腫れ物に触るのも違いますよね」

「無礼講とか、飲みにケーションとか、最悪だよ」

「どんな仕打ちにあったって、吐き気がするなんて、人が人に対して使っていい言葉じゃないでしょう」

「その通り」

「スマホじゃないでしょ、私たち。人間同士なんだから。片っぽがアップデートできてないとしてももう片っぽが寛容になればまだまだ付き合えるでしょう」

「寛容だよ。寛容が足りないんだよ」

 

♪やいのやいのと 申して来ましたが

とどのつまりは 老いも若きも

もっと寛容になりましょうよ

 

♪完全な平等なんてない

令和と昭和 男と女

容姿性格納税額違う

ちょっとのズレなら ぐっとこらえて

寛容になりましょう

大目に見ましょう

寛容になりましょう

どんと構えましょう

 

♪わたしあなたじゃないから

100%は寄り添えないわ

ずれた2パーか3パーは

書き込みたいところを ぐっとこらえて

寛容になりましょう

大目に見ましょう

寛容になりましょう

電源切りましょう

 

♪何を言っても炎上! 炎上!

黙っていても叩かれる

こんな世の中だから ポイズンよりも

寛容が肝要

インポータント

 

♪おまえほんとに出来た女さ

「お前?」

明日は6時にお越しておくれ

僕は9時まで起こさないで

私目覚まし時計じゃないわ

 

寛容に

「違う! 寛容と甘えは違います!」

 

♪たられば言ってもはじまらない

前だけ見てれば大丈夫

たまには後ろも振り返り

ゆずる時にはゆずりましょう

そんで 

寛容になりましょう

大目に見ましょう

 

♪17歳って大人? 子供?

危険な恋にクラクラしちゃう

お酒は20歳になってから

現世が無理なら 来世でお前を 私を

背中から抱いてやる

 

「ダサ」

「ああ?」

 

♪ちょっとのズレなら ぐっとこらえて

多様な価値観

寛い心で

受け入れて

寛容になりましょう

大目に見ましょう

寛容になりましょう

大目に見ましょう

 

♪負けないことよりも

寛容が大事

愛には負けるけど

寛容も大切

お腹はふくれないけど

寛容は肝要

 

♪大目に見ましょう

大目に見ましょう

大目に見ましょう

大目に見ましょう

大目に見ましょう

 

「行けよ、学校。学校なんてさ、自分と気の合わないやつが、この世界には存在するってことを勉強する場所だけどさ、3年かけて、自分以外は頭おかしいってことを確認する場所だけどさ、その中で1人か2人、友達が見つかれば、ほかは死ぬまで会わなくていいやつらだから。俺は佐高君に会えてよかったし、それは学校のおかげだし、気が合うやつとはつながれて、合わないやつとは関わらなくて済む。便利なもの、もうちょっと辛抱すればたくさんできるからさ」

 

「みんな卒業おめでとう。こんな時代に生まれてお前らかわいそうだな。どこ行っても煙草臭えし、連帯責任だっつって、ひっぱたかれて、やっと卒業だ。でも安心しろ。お前らの未来は面白れえから。俺みたいな不適切な暴力教師はいなくなるし、ツルっとしたのでウーア呼んだら家でビッグマック食える。そんな時代でも、大人は子どもに、こんな時代に生まれてかわいそうだなって言うんだよ。そんな大人の話は聞かなくて結構!」