「脚本家はジェームス三木しか知りません」

 

タイムパラドックスなんてくそくらえ!

 

「不適切にもほどがある!」宮藤官九郎っぽいセリフ集 第6話

 

 

「あれ、エモケンと言えばあのカラーギャングのやつ、新橋の」

「SSLP、新橋SLパーク。マネしたよね、SLボーイズのファッション」

「なんだっけ? あの主人公の決めセリフ」

「当たり障りねー」

 

「シェアハウスなんてどう? ひょんなことで本屋の男と女優ひょんなことから一緒に住んで」

「そのひょんをくれよ、ひょん、ひょん考えるのが作家でしょうが」

「つーか、女優と本屋って」

「『ノッティングヒルの恋人』なのよ」

「ひーどい」

 

「恋愛遍歴以外はブレブレだな」

 

「奥田英二が森山良子と不倫しそう。森山良子と小川知子は親友同士、ざわわだわ。何なの、奥田英二の色気。子どもの頃はピンとこなかったけど、ざわわじゃなくてもざわわだわ。そして、『この人のこと、世界でいっちゃん好きや』板東英二の好感度、爆上がり。『親同士が仲ようしとんのが子供にはいっちゃん幸せや、子ども同士が仲ようしとんのが。親にはいっちゃん氏幸せや』こんなの、泣いちゃう。『お父ちゃん、好きやで、お母ちゃん、大好きや』」

「うん」

「おかえり。なによ」

「いつまでいるのって、純子先輩が。そりゃあ金妻が続く限りよ」

「それ再放送だよ」

 

「YOU出ちゃいなよ」

 

「純子さんのところに行ってあげてください。なんか、なんかわかんないけど、なんか、市郎さんなんか、なんかから何か逃げてると思ってなんか」

「なんかが多いな」

 

「必然なんだ。しょうがない。死ぬのがマイナスなんじゃなくて、むしろ、大人になった渚っちにこうして会えたことがプラスなんだ。死んでるんだから俺、ほんとは」

 

「ね、今日さ、錦糸町の駅前で松村雄基見ちゃった!」

「うっそー、川浜一の悪?」

 

「わーなにこれ、女がいる、えー!」

 

「いいから食えよ純子、ネギなんかいいから肉2枚ずつ食え」

「未来人もすき焼き食べるんだ」

「食べるものは大体一緒、サンマが小さくなるぐらいよ」

 

「ほんとは未来じゃなくてすすきの行ってたんでしょ」

「純子!」

 

「騙してるんでしょ。証拠は? ほんとに行ったんならうちらがびっくりするような未来の話してよ。38年後の世界がどうなってるか教えてよ」

「三原順子が国会議員になってた」

「えー!」

「はい、嘘だねー」

「嘘じゃないよ、バリバリ政治家だよ」

「なわけないじゃん。うちらの憧れあばずれの祖先、山田麗子だよ。顔ヤバいよボディやんなの山田麗子が政治家? ありえない!」

「金八先生の世界観とごっちゃになってる」

「もう1個、これ聞いたらぶったまげるぞ。カトちゃん、80歳にして35歳の嫁がいた」

「ええ、ええー!!」

「なにそれ! 38年後に35歳ってことはまだ生まれてないじゃん。ヤダなんか怖い、SF!」

「欽ちゃん82歳、78の時、大学中退してた」

「もうやめて、時空が、時空が歪んでる」

「マッチさんは、俺たちのマッチさんは」

「うーん、いろいろあって、レーサーになってた」

「さっすが」

 

「ひどいね、いくらなんでも」

「ほんとだよ。女房が病弱だったから、健康にだけは気を配って育てたのに。全部無駄じゃねえか、くそ。どうなるかわかってる人生なんて、やる意味あんのか」

「しょうがない。こればっかりは」

「ごめんね。あんたぐらいしか話せる人いないから」

「で、どうするんです」

「あんたならどうする?」

「息子が、あと9年しか生きられないとわかったら? 言うかね?」

「変えられない運命なら、言ってもしょうがないって、思う、かな」

「ほんとに変えられないのかね。渚ちゃんが生まれてくるところまでは悪くないんだよ、純子の人生、上出来。笑ってるよ。純子も俺も。この後なんだ問題は。この後どうなるか知ってるから。知ってるのに俺は」

「その時になったら考えるってことじゃないかな。今考えてもその時考えても大して変わらないなら、今日々を楽しく、好きなように生きたらどうだろう」

「だよな。すぐって話じゃない。まだ9年もある。余命9年だ」

「お前? いたのか」

「なんでいないと思った!」

「シー、静かに」

「お腹痛くて、食べすぎちゃって、トイレ入ってたら、なんかすげー話になって、なんか俺いないことになってるみたいで、なんか出るに出れなくてなんか」

「お前もなんか多いな」

「黙って帰るやつじゃねーから」

「シー」

「帰る時はちゃんとお邪魔しました言うから。けじめあるからこう見えて」

「ごめんね、気をつけて帰ってね」

「純子、死ぬんすか?」

「外出ましょうか。はいはいはいはい」

 

「秋津くん、落ち着いて、落ち着いて、聞いて。あれは芝居よ」

「芝居?」

「そう、芝居。あなたを男にするためにわざと聞こえるように嘘をついたの」

「俺を男にするためにすか」

「そうよ。純子ちゃんには今蛙化現象が起こってる」

「純子が? 蛙?」

「ずっと好きだった相手が、こっちを向いた途端、興味がなくなるの。女ってそうなの。だから今はちょっと距離を置いて、不安にさせた方がいい」

「そういうの、自分、嫌いじゃないす」

「良かった」

 

「ねえ、沢口靖子はどうなってた?」

「科捜研で働いてた」

「斉藤由貴は?」

「捜査一課で働いてた」

「スケバン刑事が? すごい。純子は?」

「え? あ」

「あ、いい、聞きたくない。楽しみが減るから。おやすみ」

「おやすみ」

「楽しみにしてるのか。なおさら言えないよ。木曜か。まだ2日ある。せっかく帰って来たのに1週間が長い」

 

「東京オリンピックの頃が一番良かったな」

「64年、見に行ったな。アベベ靴はいててがっかりしたな。あ、だめだ、また娘に怒られちゃう」

「純子ちゃんに」

「昔話ばっかりすんなって、なんでだろうね」

「うん、楽だもん。この年になって先のこと考えると辛くなるからね」

「未来に希望が持てなくなると昔話すんのか、じじいは」

「純子ちゃんはこれからだもん。輝く未来が待ってるよ。羨ましいね」

 

「おい! 起きろブス! いつまで寝てんだこのやろー!」

「うるせーな、勝手に入ってくんな、チビゴリラ」

「俺がチビゴリラだったら、娘のおめえはブスゴリラだな! 来い来い来い来いこのやろー」

 

「気をつけてね、純子ちゃん、キャッチとか、婚カフェとか、ホストの売掛とか」

 

「犬島渚です」

「いい名前、『渚のハイカラ人魚』の渚?」

 

「お義父さんから聞いてます。あばずれの純子ちゃん」

「おお、なんだおめえ、ぶっ殺されてーか?」

「あばずれてるー」

 

「松村雄基です」

「えー、川浜一の悪じゃん! 本物」

 

「イソップは? 一緒じゃないんですか?」

 

「おい、なんだよ今の」

「純子ちゃん」

「親父の話ちゃんと聞けよ。さっきから若い方ばっか贔屓して。人の親父小ばかにしやがって、謝んなよ! 失礼じゃん」

「いや、僕は台本通り進行しているだけで」

「お嬢ちゃん、これそういう番組だから」

「はあ? どういう番組?」

「ん、だから、時代遅れの親父世代を笑いつつ、若者の無知を笑いつつ、双方のカルチャーへの気づきを学びを深めつつ、古価値観をアップデート」

「わかんねー要するにさらし者じゃん。ふざけんなよ! うちの親父を小ばかにしていいのはな、娘の私だけなんだよ!」

「純子」

「どうせコケにすんなら面白くやれよ。笑えねえ。全然面白くねえ。38年も経ってこんなもんなのかよ」

「もういいよ純子、ありがとう」

「離せよ、じじいのためじゃねえし、あんたもさ、川浜一の悪ならなんか言い返せよ」

「あれもう40年前のドラマだから」

「私こないだ見たんだもん。泣いたんだよ、感動したんだよ」

「17歳だから真剣に受け止めちゃうんだよ。ねえ先生。17ん時はそうだったよね。今のアイドル、見分けつかないけど、アグネス・ラムのスリーサイズだったら」

「90・55・92」

「覚えてるんだよね」

 

♪17歳 

ハマったドラマは

優作の探偵物語

ベスパが欲しくて 

新聞配達

 

「工藤ちゃん、工藤ちゃん知らないの? 終わってる」

 

♪昔話じゃない

17歳の話してるだけ

 

♪17歳

ハマったドラマは

エモケン先生の

どっかの駅前に

カラーギャングが群れるヤツ

 

♪昔話じゃない

17歳の話してるだけ

 

♪17歳

もう子役でデビューしてました

加賀まりこさんに

良くしてもらいました

 

♪知らねーし

生まれてねーし

そんな君らも歳を取る

 

TikTokもいずれ

昔話になる

 

♪おじさんが おばさんが

昔話しちゃうのは

 

17歳に

17歳に

戻りたいから

 

♪おじさんが おばさんが

昔話しちゃうのは

17歳には

戻れないから

 

♪私は今 17歳

まだ何者でも ない

 

私はまだ 17歳

昔話の ネタがない

 

「純子」

「けど、今見てるこの景色。これが昔話になるんだよね。なんちゃって」

 

「ねえ、純子どこ行ったんですか? ねえ、蛙になっちゃったんですか? お姉さん、お母さん、おばさん!」

「うるさい! 今集中してる」