脚本家の山田太一さんの追悼企画で「今朝の秋」の再放送があった。これ何度見たかわからないけど見るたびに発見がある。


「今朝の秋」

脚本:山田太一

出演:笠智衆、杉浦直樹、倍賞美津子、杉村春子、樹木希林


蓼科で一人暮らしをする老人(笠智衆)の家に息子の嫁(倍賞美津子)が訪ねてくる。実は息子(杉浦直樹)が入院していて余命3ヶ月だと。そこで息子の見舞いに状況する父。そこに家族を捨てて家を出た母(老人にとっては元妻。杉村春子)が訪ねてくる。


父親は息子をタクシーに乗せて蓼科に行く。


「病気も悪いことばっかりじゃないな。元気じや、お父さんとこんなこと、絶対ないもんな」


「こんな気持ちのまま、死ねるとは思えないけど」


「、まだ、きっとバタバタするだろうけど、なるべく、見苦しく、ないように、したいな」


「案外、わしの方が早いかもしれんよ」

「そんなことはないだろうけど」

「多少の前後はあっても、みんな死ぬんだ」

「そうだね、みんな死ぬんですよね」

「特別なような顔をするな」

「フフ、いうな、ずけずけ、しかしね。フフ、こっちは五十代ですよ、お父さんは八十じゃない。そりゃあ、こっちは、少しぐらい、特別な顔するよ。フフ(顔歪んで泣いてしまう)」



よく出来た嫁だと思われていた妻も夫の病気を知るまでは別れようと考えていた。


「人間てね、夫以外の人、好きになっちゃうことあるのよ。どうしても好きになっちゃうこと」

「よしてよ。子供に、よくそんなこといえるわ」

「子供だって、現実は知るべきよ。結婚したって、そういうことはあるの。努力したって、別れるしかない事もあるのよ」


束の間のそしてニセモノの一家団ランと知りつつも、みんな黙って家族として過ごす。


こんなドラマ書ける人、いないよな。

これからも繰り返し見て行こう。



余談。

小津安二郎監督の「東京物語」で老人の親と娘を演じていた笠智衆と杉村春子に元夫婦役を演じさせているのが面白い。「東京物語」の頃の笠智衆は若いのにかなり老け役だったから、こういう洒落たキャスティングができたんだろう。


余談の余談。

樹木希林がとてもチャーミング。