「やっぱあれすか、沖縄の人はBEGINの歌が流れたら焚き火の周りぐるぐる回るんすか」
「姫ぬ頭に何か乗ってるさー」
「カメラ。おー」
「いやささー」
「お客さん、沖縄バカにしてるでしょ」
「諦めよー今井くん、テビチ食って帰ろう」
「このヤマが片付いたらおれ、馬場かよにプロポーズするぞ」
「馬場。あー」
「あれでも銀行員時代は営業成績トップだったんだ。夫に浮気され、開き直られ、息子と引き離されて、一気におばさんが開花した。までもそういうとこがグッと来るんだけどな」
「自分6時間前のガールズバーに戻りたいす」
「わかってねーな。いいか、どんなに若くてかわいい子もいずれはおばさんになる。でもかわいいおばさんはもうおばさんにならない」
「おばさんですもんね、はい」
「彼女たちは姫を救おうとしている。でもおれの姫は馬場かよだ。いや、どのおばさんもみんなだれかの姫なんだよ」
「これお土産、ぼっそぼそのサーターアンダーギー。喜ばない。そんな馬場様に嬉しいお知らせ。板橋吾郎が今さっき被害届を取り下げました。馬場かよ、不起訴、釈放です。喜ばない。ま、厳密には妻の晴海さんに説得されて渋々って感じらしいです。これ以上恥を晒さないでって」
「これ以上?」
「嬉しいお知らせその2。板橋吾郎に逮捕状が出ました」
「やったー!」
「この間の証拠が」
「決め手になりました。のぶりんがんばりました」
「バカじゃなかったーのぶりんバカじゃなかったー」
「その前にいいかしら。今回の誘拐事件の顛末を書いた最新刊! 『結束!結束!また結束!』が最後まで書いてないのに予約だけで重版決定いたしました! あははは!」
「なによシャツのボタン開けちゃって」
「意識してんのよ。裁判員に女多いから」
「ズッキュン」
「姉御」
「んだよ! 結局乳首だけかよ!テビチ食って帰るぞ、今池!」
「そうすね」
「あれ、テビチと乳首って似てんな、はははは」
「証拠がないんだよ! 認めようがないじゃないか!」
「あんなこと言ってるでやんす」
「出頭しましょう。どうせ逃げ切れない」
「私は逃げたい! ごめんなさい、姫を助けたい。でも家族を悲しませたくない」
「一番愚鈍な奴が逃げたいか?」
「愚鈍ってー」
「旦那さん、罪を認めました」
「そうですか」
「はい。うちらにとっては避けられない闘いでしたが、奥様にとっては余計なお世話でしたね。すいません」
「でも良かった。あの人毎晩うなされてたから。辛そうでした。毎朝汗びっしょりかいて、布団がどうとか言ってたけど、でも今夜からはぐっすり眠れるんでしょうね」
「はい」
「帰ろっか」
「パパはー一緒に帰れないの」
「あん、まだお仕事あるんだって」
「6年間、無駄に過ごしたとは思っていません。当たり前だと思っていたことが、身に染みました。人の善意とか優しさとか弱さとか、あとお節介とか。だって信じられる? 知らないおばさんだよ。赤の他人の刑務所入らなかったら絶対出会わない。犯罪者のおばさんが恨み晴らしてくれるなんて怪しいじゃん。でも信じてみた。信じるしかなかった。人を信じたおかげで私は今ここにいます。経験値だいぶ上がりました。でも、やっぱり辛かった、虚しかった、寂しかった、なんであたし、なんであたしだけ」
「しのぶ。や、すまなかった」
「謝らないで。こんなところでこんな形でそんなに簡単に謝って終わりにしないでよ! すいません。あたしたちが経験した苦しみ、あなたは知らないでしょう。あなたがこれから経験する苦しみ、あたしたちは知っています。しっかり罪を償ってください。以上」
「やだ、今一番イケメン」
「69番願います」
「はい」
「更生したぞー」
「更生!」
「おい、姐御の赤けーの持ってこい」
「若けーの。あたしまだ還暦じゃないよ」
「形だけ。形ですから」
「ちょっとー眉毛描き過ぎ、所長じゃあるまいし」
「おばさん、だーれ」
「ごめんなさい、どう説明していいかわからなくて」
「お姫さまよ」
「お姫さま?」
「そう」
「へー、はじめましてお姫さま」
「お世話になりましたー」


