やっぱり三島に行ってから見直すと生々しいなあ。
今日は三島で撮影した写真を使用。
「ごめんね青春!」第9話
「そうなの。近頃、説明ばっかりじゃない。しかも早く喋れっていうのよ、もう早口言葉よ、で結局カットになる。全部カットよ。もう信じられない~。え、やーだちょっと言ってよー。大変なのよ」
「もう無理。聞いてらんない! なんなの! ご自分だけ悲劇のヒロイン気取りですか!」
「姉妹喧嘩は後にしてください」
「今どんな言葉かけて欲しいか、わかります?」
「え! えっと、その、あの」
「結構です。せめて黙って聞いててください」
「はい」
「なんなの! 勝手にいなくなってこんなタイミングで帰ってきてさあ。いっつも! 話の中心はあの女! バレエの発表会の日も、わざと盲腸になって、お父さんもお母さんも見に来てくんない! 運動会も遠足もそう! お姉ちゃんのせいで全然楽しめない! 今だってそう! せっかく原先生と二人っきりなのに全然楽しくない! はあ。すっきりしました。戻りますね」
「え」
「ご静聴ありがとうございました! えへ」
「どんな言葉かけてあげれば良かったのかな。お姉さんを恨むならおれを恨め! とか。なんとか言ってよ母ちゃん」
「節子さん。結婚すると原節子になる」
「どうなんだよ。兄貴的には」
「んーなんていうか、突っ込みどころがない」
「だろ。おれもそう。だって親父の再婚相手だぜ。もっとこうすげー太ってるとか、欧米かとか南米かとか言いてえじゃん」
「よりによってあんな美熟女と。は、糠床持ってくるとか完璧じゃないか」
「エレナっちょの嫁入り道具なんだっけ?」
「バランボールとDS」
「へ。修学旅行か」
「エレナっちょにとっては、しゅうとめ~」
「どんだけ~みたいに言うなよ」
「原くん」
「ううわぁ、え、え、え」
「原くん?」
「今晩泊めてもらっていいかな。いづらいの家。いいよね。原くんち、部屋いっぱいあるし、友達だもんね(握手しておいて振りほどき)あ、そういうんじゃないから」
「あ、でも今、家、ちょっとあのバタバタっていうか、バチバチしてて」
「なんだあの嫌味なほど働く女は。家事マシーンか!」
「この『おかず』って箱はなんですか」
「お休みにならないんですか」
「あ、授業の準備を。文化祭にかかりっきりで遅れ気味なんで」
「そうですか。お休みなさい」
「お休みなさい」
「恋愛に興味がないんですか」
「お休みなさいのあとに確信付くのやめてください」
「眠れないんです」
「敬語に戻ってる」
「そっちに合わせてるんです」
「わかりました。じゃあ学校以外では友達ってことで、お互いタメ口で、失礼します」
「どうぞ」
「あの、おれも確信付いちゃっていいかな」
「どうぞ」
「お姉さんのこと、許して開けて欲しいんだ」
「私が? 姉を?」
「相当な覚悟で戻って来たと思うんだ。文化祭がそのきっかけになるんだっだとしたら良かったなと思うんし、もし14年前の火事がトンコーと三女を裂いたように、君たち姉妹を裂いたんだとしたら、その2人の関係を元通り修復するのが、おれの…ごめんなさい」
「えっ」
「ああ、ダメだー」
「ごめんなさいって、なんで謝るんですか。フラれたんでしょう」
「このごめんなさいは、その次の機会」
「それだけ? 一夜を共にしたのに手を握って終わり?」
「一夜どころじゃないの。淡島先輩。もう10連泊してんの」
「もどかしい! なにそのディスタンス! なにやってんのよ蜂矢!」
「寒いことやってるやつの方が寒いってバカにしてるやつより」
「熱い!!」
「そう! なぜだかわかるか。寒いって笑ってる連中は所詮は外側にいるからだ。先生な、学生の頃冷めてたからさ、楽しんでる連中を外側から眺めてた。熱くなっちゃって、ばっかじゃねーのって笑ってた。そんな寒いやつだった。参加しても寒い、参加しないやつはもっと寒い。だったら参加した方がいいでしょう。明日からの2日間、とても寒いです。しっかり厚着して、みんなで寒さを乗り切りましょう!」
「警察ってなんで言ってくんなかったんだ」
「言ってどうなる! てめえの息子疑って、問い詰めて白状させて突き出して、まだ高校生の息子晒し者にして表歩けないようにしてなんの得がある! 平助、もう高校生じゃねーぞ。お前は教師だ。文化祭を楽しみにしてる生徒がいる。信頼する先生がいる。あと母ちゃんのこともちゃんと考えて、自分で決めなさい!」
「ラジオネーム、住職」
「うわあ」
「カバさん、いつも楽しく聴いてますよ」
「はいはいはい、ダレにごめんねですか?」
「まずご先祖様にごめんね、仏様にごめんね、それから森羅万象」
「あの1人に絞ってもらっていいですか」
「ケチくせーな。じゃあ、死んだ母ちゃんに。母ちゃんとは随分前だけどさおれが25で母ちゃん21ん時にね、知り合ったの」
「ああそうですか」
「猛烈に口説いたよ。今で言ったらストーカーだね。楽しかったことしか覚えてないんです。最近特に思い出すね。楽しい人だったんです、みゆきちゃんは」
「急性心筋梗塞で、もう意識は戻らないって言われました。お別れしろって言われたけど男3人でしょう。なんだか喋りづらくて。そしたら次男が…『みゆきちゃん、なんだよ急に、いいのかよこんなことで、おれ、なんて言っていいかわかんないよ』(酸素マスクを外す)『あー面白かった』それが最後の言葉なんです。なんのこと言ったかわかりませんよ。人生のことかもしんない。結婚生活のことかもしんない。夕べのさまぁ~ずのことかもしんないし、でも30年連れ添った女房が『あー面白かった』って言って死んだら最高しゃない。泣いちゃいけないような気がして、そうだろカバさん」
「めちゃめちゃ泣いてますけど」
「『幸せだった』とか『楽しかった』じゃなくて『面白かった』んだって。これ以上望むことなんてないじゃない」
「ええ、住職にはごめんねうなぎの特製ジャンパーを差し上げます」
「まあ、再婚するんだけどさ」
「はあ!」
「だからごめんねしたいのよ。死んだ母ちゃんとは正反対のなんでも出来るかわいい人だよ」
「ジャンパー返してください」
「まあ母ちゃんにしてみりゃ、それこと面白くないかもしんねーけどさ。そうか、再婚するから思い出すんだな、みゆきちゃんのこと。多分この先もそうだよ。だからみゆきちゃん、こんなおれでごめんね」
「原先生が、あの火事の、放火の犯人なんですか?」
「はい、ごめんなさい」
「謝らないで! え、姉が疑われたのはたまたま現場にいたから? それだけ?」
「そ、それだけ」
「それだけでしょう」
「だって、好きなおとと花火見てただけでしょう。放火の犯人は原先生なんでしょう」
「ごめんなさい」
「謝らないで! いや、謝って! あなたのせいで姉は、父は、はっ、ていうか、む無理、理解が、全然気持ちが追いつかない!」
「蜂矢先生」
「来ないで! 放火魔が教師って、どうなんですか? なんで黙ってたんですか。ばれなきゃいいって思ってたの? なんで今になって言うの? 明日文化祭! ここで!」
「はいじゃない! 全然わかってない! だって、だって私、好きって言いましたよね」
「はい」
「なのになんで!」
「す、好きだから」
「好きだからなに? え、これくらい、これくらいのことでは嫌われないって思ったんですか」
「違います。おれが好きなんです! 蜂矢先生のことが好きです」
「ふん(泣く)」
「う、嘘じゃないです。火事のことも、も、言い訳しません。正当化もしません。何言われてもその通りです。だから正直に話して、何もかも失う自分を想像しました。1人ずつ大切な人を思い浮かべて、ごめんねとさよならを言いました。その時に一番悲しくなったのが蜂矢先生だったんです。蜂矢先生にさよならを言うのが一番キツかった。だから電話しちゃいました。これも文化祭の前日に言うようなことじゃないと思いますけど、言いますね。蜂矢先生、あなたのことが好きです。大好きです! 理由はまだわかりません」
「私は知っています。私たちが運命で結ばれているからです」
「え」
「だからそこら辺の男女みたいに付き合って別れて乗り換えてより戻してなんてことをしなくていいんです。たとえ煮え切らない男でも、たれ目でもたれカッパでも。放火魔でも。許しませんけど。それも全て試練です。今は許しませんけど、乗り越えましょう。いずっぱこの名にかけて!」
「いずっぱこ」
「あんたが放火魔でも私はハートのつり革の伝説を信じます」
「はあ」
「いずっぱこなめんなー! じゃあ。ちゃんとご飯食べてください」
「はい」
