アメーバカスタマーサービスに復旧してもらった。
なので、改めて過去ログとしてアップ。


第8話続き




「外見はロッキーホラーショー、でも中身は稲川ホラーショー。これが現在の彼、トンコーの制服を着た村井守くんなんです」
「もっといい例えはなかったんでしょうか」
「お父さんは稲川淳二にロッキーという服を着せていたんです。そして、『お前はロッキーだ。ロッキーはロッキーらしくしろ!』と言い続けた」
「はい」
「ダメよ。もっといい例えがあるはずよ」
「淳二は思った『やだなーロッキーじゃないのになー。難解だなー怖いな怖いな』」
「あれがやりたかったのかな」
「これが現在の守くんです」
「すごくよくわかります」
「え、あれでわかったんだ」
「ここで、思わぬ事態が起こります。トンコーと三女の合併です。理事長であるあなたが経営難の三女に手を差し伸べる形で吸収合併を提案しました。両校が合意し、男女共学クラスが生まれ、守くんは自然の成り行きで三女の制服を着ました」

「はい注目。これ読んでみてください」
「見た目で判断しない」
「言いますよね、女子が『私、こう見えて見た目とかどうでもいい人だから。肝心なのは中身だから』って。そんな風に言われるとおれでもいける。なんて思っちゃうけど騙されるな! これは不細工すらもキープしたいっていう、浅ましい根性です」
「女性観が歪んでるわ」
「私だって先生とか呼ばれて偉そうにこう授業なんかしてるけど、中身は学生時代からなんも成長してない。と思って制服着てみた。でもさあ、正直キッツイだろう」
「(頷く)」
「うん、さすがに年食って少しは中身も成長してたみたいだな。見た目と中身、どっちも大事です。見た目が中身を作り、中身が見た目を選ぶ。村井は中身が女の子だから見た目もそれに近づけたいわけだろ」
「はい。心にあった体とか、心にあった服装がしたいです」
「ちょっと理事長! ここ大事なとこ。聞いてます」
「これ(Blu-ray)の中身がどこに行ったのかどうしても気になって。気になりませんか」
「なりません! 関係ないから! そこに入るという選択肢はないから!」
「勝手に決めつけるな!」
「わかってるじゃないですか!」
「な」
「息子さんのためとは言え、本を100冊も読んで、女装してスーパーまで行くなんて、そうそうできることじゃないですよ。ほんとはお父さん、もうわかってるはずですよ」
「わかってたまるか! 守は男の子なんだよ! 産まれた時からずーっと男の子なんだよ! 初めに抱っこしたの私だから! 出産立ち会いましたから。そん時ちゃんとついてたんだよ! だから守はこっち(ロッキーホラーショー)に入るはずだったんだ! んなの、わかってたまるか!」
「ごめんなさい」
「いいよ謝らなくて。お前は全然悪くない。むしろお前に礼を言いたいよ。守! 今まで息子のふりしてくれてありがとな。へっ。んな18過ぎたら男も女も関係ないよ。どっちみち親には寄りつかなくなっちゃうんだから」
「そんなことないよ。パパ好きだよ」
「校長、守が女子の制服を着て通学することを許可していただけますか」
「ええ、もちろん」
「よろしくお願いします」
「ああ、理事長、理事長、ところで合併問題はどうなるんでしょうか」
「ああ、どっちでもいいです」
「どっちでも!」
「私が取締役を務めている別会社がありましてね。三女が廃校にならないよう、そちらの会社で三女の運営資金を出すことも可能なんですよ。だから三女の名前を残そうが」
「合併!」
「え」
「合併します」
「シスター」
「いやぁ、なんかはしたない。でもなんかこの一週間ほんっとに張り合いがなかったっていうか。ねー」
「ええ、活気というか、華がないっていうか、逆に! 男だけでよくがんばってきたなって思うぐらい女子がいないと、ね!」
「うん、男子がいないと、だからもう伝統とか名前とか、いらないです!」
「じゃあこれは理事長命令です。合併のため、男女共学クラスを復活させてください」

「右のまわしを取れ! 左のまわしを取れ!」

「なんですか、忙しいんですけど」
「あの、昨日の返事を」
「は」
「ですから結婚を前提にですね」
「当たり前です。私カトリックです。結婚を考えない男性とは交際しません」
「じゃあそういうことで」
「ちょ、結婚を前提にの後です。なんと仰いました!」
「や、結婚を前提にまずはお友達から」
「はぁ」
「や、だって急だから。蜂矢先生がおれ、その私を、おれに好意を抱いてるなんて1ミリも思わなかったし」
「だからって友達からですか」
「はい。え、だって友達ですか、今」
「じゃないですね」
「でしょ。あ、それにおれ蜂矢先生にはまだまだお話ししなくてはいけないこともあるし」
「どうぞ」
「いや、や今じゃなくても」
「出た。先延ばーし、先延ばーし、妖怪先延ばし!」
「え、妖怪」
「混ぜっ返さないで! 同じ答えなら早く聞きたい! 男ならスパッと決断したらどうなの…ごめんなさい」
「え」
「こういうところですよね。原先生はもっと、焦らしたり、もつたいつけたり、腰のところで小さく手を振ったりするような女性が好きなんですもんね」
「や、蜂矢先生」
「ダメだーあたし無理だー、先回り、先回り、先回りが止まらない!」
「妖怪先回りですね」
「ふふ」
「ふふふ」
「おかしくありません」
「すいません。でも、蜂矢先生は、今のままがいいです。充分素敵です。完璧す」
「そうすか」
「よろしくお願いします」