これを読むと映画はともかく、連続ドラマはオリジナルストーリーがほとんどだということがわかる。
「亜沙子が気になるのは事実だが、惹かれていく心を押し殺すことは簡単だった。恋は一瞬の錯覚だし、錯覚を持続し更新しながらだれかと日常をやり過ごしていくのに不向きな性格だと、多田はすでに知っていたからだ」
「死なせてしまった息子のことは、ふだんはなるべく考えないようにしている。だから、忘れたのだろうと自分でも思っていた。そうではなかったのだ。考えないようにしていることを忘れ、忘れていないことを忘れようとしていただけだった。息子はまだ、こんなにも俺のなかで生きている。ひさしぶりに胸のうちで名前を呼ぼうとして、多田は踏みとどまった。苦しかった」
主人公とは思えないほど感情の起伏の少ない多田と行天にも、それぞれぐらぐらする瞬間があって、まだまだ続きが楽しみだ。
