海の底 (角川文庫)/有川 浩

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というわけで、時間経ちましたが、有川さんの自衛隊3作品の最後です。

3作品の中で、パニックになる感じが結構エグい感じが強いかも。スピード感もあるので、ちょっとしたパニック映画を見ている気分にもなります。

実際プロットは、各パートを時系列に並べて構成して、ということをされたそうで、そういう動きの感じられる作品でもあります。

でも、そこはただのパニック小説ではなくて、実はこの物語の肝は潜水艦に閉じ込められた子供たちの人間関係―その後ろにある集合住宅に潜む大人たちを含めた人間関係があると思う。潜水艦という限られた空間―それと土地空間的に閉じた集合住宅―土地購入が一生に一度という日本社会、しかも子供の教育の場で否応なく生まれる濃密なコミュニティの形成―その根底にある闇が実は派手派手しいパニックの裏にあって、底暗く恐ろしい。

こういうところに、実はフリーター家を買うの中に出てくる家にまつわる人間関係の裏っかわというのを用いる人だなぁっと思った。

ただ、そういう暗さを描きつつもそこからの脱却も描いている。いつもながらに爽快に。だから、有川作品は面白い。

ちなみに、夕貴は、主人公よりも悪友冬原君のサイドストリー「クジラの彼」が好きである。