映像制作者の映像レビュー
★★★☆☆


日本でHIPHOPが流行ったのは、それまで表現する手段を持てなかった層の連中に、ラップという自己主張の機会を与えたからだ、という話を聞いたことがある。


だから、というわけではないが、何も刺激がない田舎で、勉強ができるわけでもなく、コミュニティにも溶け込めず、ただ漠然とビッグになりたい、有名になって金持ちになりたい、いい女と付き合いたい、みたいな夢を見るラッパーという設定には、すごくリアリティがある。


映像的にはぬるいな~という箇所があったり、演技が厳しいところも幾つかあって、個人的には正直、巷で騒がれているほどの感動は覚えなかったが、観た後に少し胸が締めつけられる切なさがあった。


それはきっと、夢を追いかけたり、現実に潰されそうになったり、それでも前へ進むしかなかったり、っていう心情が、多くの人の共感を呼ぶ”普遍”にまでたどり着いて表現されているからなんだろう。


決してクレイジーな連中ではない。HIPHOPという生き方を選ぶしかなかった、そこにしか居場所を持てなかった人種が確実にいて、だからこそ、そいつらの放つ言葉の弾丸は聴く者の心を貫く。


企画と脚本が素晴らしい作品。