セヴィニエ夫人の手紙 (パリの毒薬事件) | アルプスの谷 1641

アルプスの谷 1641

1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録

 


 
 セヴィニエ夫人の手紙は、娘の健康問題から、パリの毒薬事件へと移って
 
いきます。 パリの毒薬事件と、それに伴う火刑裁判所の設置については、
 
「アルプスの谷1641、第三部 パリ、毒薬」 (Kindle版) に詳しいので、宜しけ
 
れば、そちらをご覧ください。 (左枠参照)

 
 セヴィニエ夫人は毒薬事件については、実に的確な指摘をしています。 
 
この手紙だけを読んでも、夫人は、魔女、黒魔術、悪魔などに懐疑的で、
 
その存在を匂わせる発言には批判的であることが分かります。 
 

 

(前週続き)
  
 
 ルクセンブルク氏は何も食べないまま、丸二日を過ごしています。 イエズス
 
会の神父様幾人かとの面会を求めましたが拒否されました。 そこで聖人伝を求
 
めた所、これは許可されました。 お分かりのことと思いますが、ルクセンブルク
 
氏は、自分がどの聖人に帰依すればいいのか分かりませんでした。 氏は金曜と

 

土曜、四時間に及ぶ尋問を受けました。 どちらの日かは忘れましたが、審問後は
 
落ち着いた様子で食事を摂っています。 ルクセンブルク氏は自分の無実を明確
 
に晴らすために上手く答弁したのだろう、そして、通常の裁判、つまり議会からの
 
召喚があれば戻ってくるだろうと、人々は考えています。 彼は火刑裁判所を認
 
めたことで貴族社会に多大な害を及ぼしました。 しかし、陛下の意向には盲目
 
的に従うと決心したようです。 セサック氏は男爵夫人の例に倣いました。 ブイ
 
ヨン夫人とトゥングリ夫人の審問は、月曜、アルスナル宮の火刑裁判所で行わ
 
れました。 高貴なご家族の方々が扉の所まで二人に付き添いました。 今のところ、
 
彼女たちの愚かな行いにどす黒い影は何も無く、それに近い灰色でもありませ
 
ん。
(悪魔や黒魔術に関係していた事柄は無いという意味?)  これ以上、明
 
らかになるものが何も無ければ、いくつか深刻な事件は残っているものの、
 
貴族階級の人々は裁判を免れることができるかもしれません。 こうした紳士
 
淑女たちは、神ではなく悪魔を信じていると、ヴィロワ氏は言います。 彼ら
 
は、哀れな女性たちのしたことについては何事にも、本当に不合理で馬鹿
 
げた発言をしています。 フェルテ元帥は親切心から伯爵夫人の出頭に付き添
 
いましたが、その名の通り (フェルテにはプライドという意味がある)、階上ま
 
では行こうとしませんでした。 ラングラ氏は夫人と一緒に出頭しました。 皆、
 
非常に憂鬱そうな様子でした。 この出来事は夫人に普段なら味わうことので
 
きない喜びをもたらしています。 ――「あの方は無実だ」と人々が言うのを
 
聞く楽しみを。 
 
 ブイヨン夫人はヴォワザンの所に行き、死ぬほど退屈な年寄りの夫を亡き
 
ものにするため、毒薬を求めました。 若い男と結婚する計画でしたが、その
 
男は秘密裡に夫人をその気にさせていたのです。 この若い男とはヴァンドー
 
ムのことです。 ブイヨン夫人は、ヴァンドームに片方の手を、もう片方の手は

  

夫のブイヨン氏にひかれて、アルスナル宮に出頭しました。 本当に笑って
 
しまいますね。 このような愚行で有罪になっているのがマンチーニだけなの
 
だから、大したものです。 そうした魔女たちは大真面目に仕事にいそしみ、
 
くだらないことで全ヨーロッパを恐怖させました。 
 
 ソワソン伯爵夫人は、自分を捨てた愛人を取り戻す相談をしています。 その
 
愛人は高貴な王族の方なのですが、その男が自分の元に戻らなければ後悔す
 
ることになるだろうと、夫人が言ったと伝えられています。 これは陛下の
 
ことを指していてと考えられています。 陛下に関係することであれば、全て
 
において重大な問題となりますが、結果がどうなるか見守りましょう。 もし夫
 
人がそのような重大な罪を犯していたとすれば、彼らにそんな話をするはず
 
がないと思いますが。 私たちの友人の一人が言うには、毒殺稼業には上位組
 
織があり、それは手の届かない所にあるということです。 なぜなら彼らはフ
 
ランス人ではないからです。 (裁判に掛けられている者たちは) 皆、小物で、
 
子供の使いっ走りのようなものだというのです。