第2部 「異端の谷」、第4章「脱出」、第4節 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録

 
 
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第4章 「脱出」 第4節 は 9月4日 に投稿します。
  

 
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第4章 「脱出」
 
 
 
4. アンナ





 ついに別れの時がやってきました。
 
  農場を出ようとする私の所に、ジェラルドが駆け寄ってきてくれました。
 
私たちはその場で言葉も無く抱きあい、体を合わせたその一瞬を噛み締め
 
ました。
 
「先にジュネーブに行って待ってるわ。 あなたもすぐに来られるわよね」
 
「勿論だとも」 ジェラルドは微笑みました。 「みんなが安全にアーゾラを
 
離れるのを見届けたら、すぐに後を追うよ」
 
  それから屈んで、私の脇にいるカリーナに言いました。
 
「アンナを宜しく頼むぞ、向こうに着いたら、三人で暮らそうな」
 
  カリーナはその言葉に大きく頷きました。
 
 
 
  私たちはついに長い旅の一歩を踏み出しました。
 
  心ならずも、このアーゾラに連れてこられてから、早くも一年が経って
 
いることが信じられない思いでした。 この農場で過ごした最初の夜、どう

  

やってここから逃げようかと、そればかりを考えていたのが、まるで昨日

  

のことのように甦ります。 それが今、この場所から離れがたく、身を切るよ

 

うな悲しみを覚えるのはどういうわけでしょう。
 
  私は何度も振り返って、私たちを見送るジェラルドをこの目でもう一度
 
見ようとしたのですが、何度、指で拭おうとも、目は涙に霞んで、その役
 
目を充分に果たしてはくれませんでした。