このブログで時事問題は扱うつもりはありませんでしたが、今回、当ブロ
グの主題と関係無くもないようなニュースがありましたので、覚書程度では
ありますが、取り上げておきたいと思います。
既にニュースでご御存知かとは思いますが、2月28日、第265代ロー
マ教皇ベネディクト16世が生前退位しました。
コンクラーヴェは遅くとも3月15日より前に開始され、世界中の枢機卿が
ローマに集まり、次期教皇を選出することになります。
(投票はシスティーナ礼拝堂で行われます。もしもローマ旅行を計画されて
いる方がいらっしゃるなら、相当な長い期間、礼拝堂には近付くこともでき
ないので注意が必要です)
教皇は終身職であるため死去による退位が普通であり、教皇が自らの意志
で退位するのは1415年退位のグレゴリオ12世退位以来、殆ど600年
ぶりだそうです。
この事が示しているように、ベネディクト16世の教皇在位は、カトリッ
ク世界が大きく揺れ動いた8年でした。
1 カトリックの聖職者による児童への性的虐待
約40年間で、1000人の聖職者が加害者となり、15000人の子供
が犠牲になったと報告されています。この件では、ベネディクト16世自身
が事件に隠蔽に関わったケースがあり、最悪の場合には法王が司法の場に引
き出される可能性もありました。
2 バチリークス (Vatileaks)
教皇の執事がバチカンの機密文書を持ち出し、その内容が明るみに出まし
た。その内容には、違法な資金洗浄、収賄、教会内の性関係などが含まれて
いました。(バチカンはこの文書の内容は事実を反映していないと主張してい
ます) この件に関しては、ベネディクト16世が一般的な会計標準をバチカ
ンに適用しようとしたことで教皇に対する脅迫があったことも分かっています。
(この財政的不正が原因で、今年2月まで、バチカンではカードが使用でき
なくなっていましたが、ベネディクト16世の退位でカードが使用できるよ
うになったようです。旅行される方はこの点では一安心ですね)
3 外交問題
どちらかといえば学者に向いていたベネディクト16世は、現実の政治に
は向いていなかったかもしれません。モハメッドを否定的に言ったビザンツ
皇帝の言葉を引用してイスラム世界の怒りを買い、また、ナチスによるホロ
コーストはでっちあげだと発言した枢機卿を見逃したことで、ユダヤ人を怒
らせました。
しかし、表面的な事柄ばかりを見るのは間違っているように思います。身
内に甘かったのはベネディクト16世に限ったことではありませんし、上の
事件の多くは、ベネディクト16世の教皇在位以前に起こっていたことです。
なぜこの時期に次々に問題が暴露されたのかについては、考えてみる必要が
ありそうです。もしかしたら、バチカン自身が大きな転換期に差し掛かって
いるのかもしれません。
旧態依然としていながら、今なお12億の信徒を持つカトリック教会は、
その動向如何で全世界を激震させうるのです。
( 記念切手が発売されます )