( 最初から読む )
第一章の最終節(第19節)まで、毎日一節ずつの連続投稿です。
-------------------------------------------------------------------
17. マルタ
生涯を教育に捧げ、マレド市の教婦長となった。良妻賢母として評判高く、女性たちの鑑のよう
な存在だった。
1641年 7月 25日、魔女として告発され処刑される。当時 42才。
-------------------------------------------------------------------
私たち全員が罪を認めると、審問官は私たちに赦しを与え、壇を去ってい
きました。替わって壇に立ったのは世俗の裁判官です。裁判官は何の感情も
見せることなく、判決を読み上げました。
「悪魔と結託し、人心を惑わした罪により、火刑に処す」
人々からどよめきが起こりました。まるで、この時を待っていたかのように。
「お慈悲です」 私は叫びました。「私を縛り首にしてください。焼くのは、
私を殺してからにしてください。生きたまま焼かれるのは嫌です。私は罪を
認め、悔悛したではありませんか」
裁判官は何の興味もないとでも言いたげに、僅かに首を横に振ると、刑吏
たちに合図をしました。兵士たちが動くと、群集を割って、道が開きました。
その先には、小さな家ほどもある高さにまで薪が組まれ、その中心には太い
杭が真っ直ぐ立っていました。
女たちの間からすすり泣きが洩れてきました。私の足は震え、兵士たちに
足蹴にされても、もう立つことができませんでした。そんな私の尻に火を押
し付け無理やり立たせると、兵士は私の腕と脇の間に槍の柄を突っ込み、ま
るで狩の獲物のように持ち上げました。尻が焼け、腕の骨が軋み、痛みは脳
天を貫くほどでした。しかし、私が泣き叫んでいたとしても、それは苦痛の
ためではありません。この恐怖から逃れるためなら、両腕をもがれることも
厭わなかったでしょう。