私はいつも、撤収の時は、パッキングが全部済んでから靴を履き替える。
今日も履き変えようと屈んだ。
「イテテテテ!!」
靴下が履けない…。
「ぐぎいぃ」
痛みに耐えても、今度は靴が履けない。
「イテテテテ!!あ~っはっはっはっはっは!!!!」
面白い。そう来たか。
跨ろうと足を上げても痛い、バイクを起こそうとしても痛い、ステップに足を上げても痛い。
「あ~っはっはっはっはっは!!」
しくしく
とりあえず、どんぐらい行けるかと、当初の目的通り白神山地へ向かった。
ただ運転してる分には、かろうじて何とかなる。
けれどバイクを止める時に足を下ろす、その度に悶える。
これはキツイゾ…。
十二湖へ向かう途中に、ふっと見えた白神山地。
霧か雲か、ふわふわと白く包まれて、より一層神秘的な姿。
走り抜けると、次々と池が見えてきた。
いくつもある池の中で、たった一つだけ、霧がかかっていた。
水面に被さる霧。
幻想的で、神秘的。
霧の演出は全てのモノに神秘性という施しをする。
雨は強くなっているけれど、私が見たかったのは、青池と日本キャニオン。
どちらも少し歩いて行く。
さあ、どうか。
駐車場から、散策路までですらたどり着けなかった。
歩けない。特に左足が上げられない。
ダメだ…。
とりあえず、食事所に入って体を温めた。
お店のおばちゃん2人とちょっとお話。
「帰ったら仕事無いんじゃないの?いっそ結婚しちゃえばいい!」
それが一番難しいのです…。
少しあったまったから、また唸りながらバイクで走り出した。
走りながら、考えた。
帰ろう。
この状態じゃあ、旅を続けるのは無理だし、どっちにしろ、後は男鹿半島を見て帰る予定だった。
旅の仕上げ…と言いながら、少し引き延ばしていた所もあった。
それに何となく、帰れ。と言われている感じがする。
結論を出しても、「終わっちゃう」とは思わなかった。
正直疲れていたし、北東北というホームグランドを走っているうちに覚悟が決まったのかもしれない。
ただ実感が湧かないだけかもしれないけどね。
進路は決まった。