『東北』というだけで、地元の匂いがした。
ああ、どうしよう、終わってしまう。
急に頭の中が破裂しそうなパラドックス。
帰り着いた安心感、遠くなってしまった足跡。
混乱して泣いてしまった。
けれども足を止めずに走り続けた。
私がひたすらに向かったのはいわき市。
いわき市にお気に入りのレストランがあって、帰りに絶対寄ろうと思っていたのだ。
未来が現在になっていく。
どんどん見覚えのある地名が出てくる。
本当にあと少しで終わってしまうんだ。
自分の地方に帰ってきたという事が、こんなに強烈だと思わなかった。
レストランに向かって県道に入ると、ネットカフェがあった。
今夜はここにしよう。
素通りして、目的地『マンマ・マリィ』へ。
パスタやピザが、絶品なのだ。
とにかくおいしくて、盛岡から遠いこの店に何度か食べに来ていたくらいのファン。
たくさんあるメニューから、今夜チョイスしたのは、ムール貝とツブ貝のぺペロンチーノ。
期待を裏切らないおいしさに大満足。
このおいしさの秘訣って何だろう…。きっとシンプルなんだろうけど、絶妙な味付けなんだろうな。
食後にコーヒーを飲んで、すっかり堪能した。
真っ暗な道を戻り、今夜の宿に滑り込んだ。
明日はさらに終結へ向かうんだ。
福島に入っただけでこんなに動揺して、私、岩手に帰ったらどんな風になるのかな。
それほどまでに、旅に浸かった日々だったんだな。