朝、

「佳ちゃん、起きる?」

猿の声。

夕べ、というか、今朝寝たから、アラームすら気付かぬほどの爆睡をしていた。

起きるよ!
猿の出勤。最後の見送り。

いってらっしゃい。

ありがとうね。
ほんとにありがとう。

寝ぼけた頭でも、感謝はたくさん沸き出す。

いつも通り、車を見送り、一人の部屋に戻った。

途端に沸き上がる淋しさ。

淋しい!!!

あんなにお世話になったのに、もう何にも出来ないじゃない!!

部屋の掃除をしながら、自分の生活の後を消して行く。

淋しがり屋の猿は、今日帰って来たら、どう思うんだろう…。

そう思うと、胸が痛んだ。

住み慣れてしまう程に居たこのアパート。

もう、帰って来ないんだ。

淋しい。


昼過ぎ、支度が整い、部屋を出る。

ありがとう。ほんとにありがとう。
それ以外に、言える事が無いよ。

最後にTちゃんとランチに行った。

フル積載のバイクは重くて、調子を取り戻すのが大変だった。

少し遠回りして、よく通った泊大橋を渡り、波の上を眺め、58号線に乗り、Tちゃんちへ。

奇しくも、沖縄に上陸した時と同じルートに出る。

始まりはTちゃんち。

終わりもTちゃんち。

着くときには、淋しさで、少しつついても涙が出るほどだった。

家の近くの店に食べに行く。

最後にゴーヤーちゃんぷる。

おいしいけど、淋しさでそれどころじゃなかった。

店を出ても、出発出来ずに、どこかに行こうかと思い立った。

そうだ!ビーチに行こう!

猿も居るし、沖縄と言えばビーチだ!

タンデムはもう出来ないから、原付きとのツーリング。

ビーチのベンチで、海を見ながら、思い出話。

淋しい。


猿の姿が見当たらない。

電話してみると、仕事で北谷にいるそう。

那覇に帰るのは5時。

会えないなぁ。残念だ。

ベンチで話してたら、雨が降ってきた。

屋根の下に避難。

また話しをしていたら、4時になってしまった。

出発は4時のつもりだった。

でも雨が止まない。

弱くはなってるけど…。

まあもう一服しようか、と、その時、TちゃんEyeが猿を発見!

すかさずメール。

雨のおかげで早く終わったのだとか。

良かった!!


4時半になる頃、雨が、上がった。

出発だ。

よぅそろお-Image074.jpg

バイクの前で、本当の本当に最後の握手。

泣いちゃう。泣いちゃうよ。

胸が痛い。

何度も励まして貰って、
何度も握手をする。

あんなに出たかった旅に、出たくないと思った。

みんなと離れたくない!!

淋しくて、苦しい。

なかなかバイクに跨がれない私達。

でも、今日出るって決めたんだ!

「行く!」

振り絞ってバイクに跨がる。

猿、猿、本当にありがとう。

いつか、淋しがり屋の猿に、素敵な伴侶が見つかる事を、遠くから祈ってるよ。

どうか、元気で。

振り切るように走り出す。

Tちゃんと、58号線まで一緒に走る。

居てくれるのが当たり前になってしまっていたTちゃん。

あったかいやさしさに、何度も何度も助けられたよ。

私の誇りだよ。



国道に出る交差点で、私は一人になった。

長かった、沖縄での生活が、終わった。