真夜中、女子ドミトリーに珍客。

もう寝ていた私の耳に、長期のミリアムの声と、ここで聞こえるはずの無い男の声。

目が覚めてしまったから、様子を見たら、ミリアムが困った様子で

「Man…。Drink…」

指差す方を見てみたら、『女子』ドミトリーなのに、でっかい男の人が、ベットに大の字になっている。

はは~ん、酔っ払って部屋間違えたな。

眠りを妨げられた私は機嫌が悪かった。

男性の肩をバシバシ叩いて、
「すいません!ここ、女子ドミトリーだから、男性立入禁止です!!」

と叩き起こした。

男性はハッと起きて、

「す、すいません…間違えた…もにょもにょ…」

と、慌てて出て行った。

ミリアムは、まだ少し困った顔のまま、
「Thank you」
と言って荷造りをしていた。


朝、ミリアムはもう居なかった。

置き手紙があった。

英語で書いてあったけど、内容は分かった。

「ありがとう、楽しかった。また来年来ます。また会いましょう。」

一ヶ月単位の長期のお客さんが帰るのは、TMちゃん以来。

朝から何だか寂しくなった。

そっか、住まいに帰って来ても、もう居ないんだな。


ほとんどの人が、旅路の途中。

私の勤務が終わるまで、後いくつ、出会いがあるだろう。

きっとみんな、通り過ぎて行くだけかもしれないけど、私の心に波紋は広がっていく。