我がマンションの近くにはコンビニがある。

徒歩一分ほどの近さ。

言うまでもないがかなりの常連である。

酒が足りなくなり、酒気漂う真っ赤な顔で訪れたことも一度や二度ではない。

故にどの店員さんもわきまえたもので、どんなにたくさんの酒やつまみを買っても、
箸の数は聞かれない。

知っているのだ。二人分に見えても、たった一人の女の腹に収まることを。

私は少し恥ずかしさを覚えるわけだが、
どうしても見栄をはって「二膳下さい」とは言えない真面目さがある。


そんな折、晩酌解禁日で弾むような心持ちの中買い出しに訪れる。

かごの中身はビール三本とレトルトのおでん、もつ煮込みである。

近頃にしては多目ではあった。

すると、
「お箸は何膳付けますか?」

思わず顔をあげて店員さんを見つめてしまった。

そこはかとなく女性に対する気遣いを感じた気がした。

「女性一人の量じゃないよね、そうだとしてもそう思われたくないよね」

そんな心の声が、その眼差しから伝わってきたのだ。

私は一呼吸おいて、


「一膳で」



慈悲の眼差しが泳ぎ俯いたのは、どちらの意味だったのか、私にはもう知るすべはなかった。