僕らは旅人。

小さい頃から旅に出る。

道はデコボコだし、獣は出るし、荊のトゲが僕らを傷付けようとするけど、

どうやら僕は、何かの力で守られているようだ。

僕の体はまだ小さい。

だから、道の脇にある荊のトゲは僕に届かないし、
狭い道だって楽に通れる。

それに、獣が道を塞いでたって誰かが先に行って倒してくれてる。

僕は守られている。


僕らは道を進んで行く。

だんだん体が大きくなる。

成長しているんだ。

僕はまだ、何かに守られている。

獣はいつも他の旅人と戦っているから、その隙に脇を通り過ぎれるし、

荊のトゲは、誰かが落としてくれている。

まだ危ない目にはあっていない。

道が狭いけど。


僕らは道を進んでいる。

道はいくつかの分かれ道があったけど、

ぼくはいつも荊のトゲが落ちている道を選んだ。

荊のトゲが落ちていない道の方が少し広かったけど、
トゲに引っ掛かれたくなかったし、トゲの落とし方も知らなかった。

それに誰かの後を歩きたかったから、狭くてもそっちを選んだ。

実際は道が狭くなっているのではなく、僕が大きくなっているのだけど。

でも僕は守られているから、間違ってないんだ。


僕らは大きくなった。

僕の選んできた道は、荊のトゲは落ちていたし、
獣は誰かが戦っている隙を見てやり過ごせた。

なのに気づくと僕は傷だらけになっていた。

道はひどくデコボコで、大きくなった体は重くて、歩く度に足の裏に石が刺さった。

そして大きくなった体には、狭い道の脇に並ぶ荊の『幹』のトゲが肌に届き、
落とされていた『枝』のトゲも新しく芽を延ばしていた。

この道はしばらく人が通っていないようだ。

誰も倒してくれなくなった獣からは、走って逃げた。

戦いたくとも戦い方を知らなかった。

足の裏も、肌も、ボロボロになった。

だけどきっと僕は守られているはずだ。

だってまだ生きているもの。


道の先を見ると、真っ暗な深い森が見える。

そういえば、僕はいつから太陽を見ていないのだろう。


でも僕は守られているから大丈夫さ。