結局、夕べは一睡もせずにチカちゃんとおしゃべりをしてた。

時間はあっという間に過ぎて、出発しなければならなくなった。

毎年当たり前の様に来ていたこのアパートと、最後のお別れ。

そして、毎年、当たり前の様にお世話になってしまっているチカちゃんとも、お別れ。

今日も仕事なのに、一睡もせずに私を見送ってくれる。


ずっと一緒にいたから、
もう、毎年の様に遊べないから、
チカちゃんの表情が淋しげだから、

近頃めっきり緩くなった涙腺が目頭を熱くしたけど、
ぐっと堪えた。

手を振るチカちゃんに私が言葉で伝えられる事。

「ありがとう」

ただ、これだけ。

これだけの言葉に、全てを詰め込んで、口に出す。

そして、どうか幸せに…。



早朝の那覇を走り、那覇港へ。

受付を済ませ、バイクをフェリーに載せると、サルから電話が来ていた。

こっぱやくから起きて、見送りに来てくれてた。

そして、朝ご飯を買ってくれてて手渡された。


わざわざ、二つも三つももっとたくさん、人の為に動けるこの人達に、もうお世話になるのは嫌だな。

お世話になるばかりの立場は、もう嫌だな。

人に面倒見て貰う度、どんどん私が小さくなる。

嬉しいけれど、申し訳なくて。

私の大好きな旅人は、そんな風に考える事は無いって言ってた。

とても考え方が上手な子で、私もそんな風に考えよう…と思ったけど、
なかなか変われないね。



那覇を出港して、すぐに眠りに落ちた。

ちょうど与論に入港した時に目が覚める。

先週は、ここに居たんだ…。

船から降りずに見る島は、手の届かない存在の様に見えて切なくなった。


この切なさが、無性に旅を感じさせた。