幽霊が恐くない理由 | sick

幽霊が恐くない理由

今日、自宅にゴキブリが出ました。


大きくて、それはそれは立派なゴキブリ。


黒光りするその体は、


まるで大正の時代から藁葺き屋根をしっかりと支えてきたような、


太くて立派な大黒柱さえも連想させます。


彼は、ひたすら小さな個室の中を走り回ります。



さて、


これが幽霊だったらどうでしょう。


ドアを開けた瞬間、そこには女が立っていた。


それはそれは驚くことでしょう。


しかし、


そこで僕はまず、彼女にここから出ていってもらうよう説得するはずです。


「行き場所がないのかどうか分からないけど、ここにいられたら迷惑だ。よそに行ってくれ」と。


「ここは、俺が家賃払ってんだ。お前、ちゃんと自立しろよ」と。


そんなことを言われたら、


いかに幽霊と言えど、多少なりとも傷ついてしまうかもしれません。


ですが、それで彼女の自立心を養うことができるなら、この一幕も決して無駄なものではないはずです。


ところが、


ゴキブリの場合は、まず話が通じません。


幽霊ならば、なんとなく“話せば分かる”雰囲気を帯びていますが、


ゴキブリはまず、こちらの案を打診することさえも叶わないのです。


「おいお前、郷に入れば郷に従えよ」と、


「お宅らのルールはどうか知らんけども、こっちの世界じゃそういう行為は違法だぞ」と、


「不法侵入って知ってっか?」と。


言ったところで彼らはまったくその言葉を理解してくれはしないのです。


幽霊もやはり幽霊であるだけに、それはそれは必死なのかもしれません。


しかし、


ゴキブリはガチです。


生きるのにガチで必死です。


追い詰められようものなら、こちらに向かって飛んでくる始末です。


人間と見るや否や、意味もなく全力で走り回り、


あまつさえ隙間があれば忍び込み、


食い粕があればつついてみる。


無駄に触覚を激しく動かし、


無駄に足が速い。


幽霊は人を驚かすために出てくると言いますが、


その“意志”があるだけまだ良いのです。


ゴキブリは、人を驚かそうという意志もなく、


そこに悪意もなければ善意もありません。


ただただ、


直感と本能に従いながら、利害を考慮することもなく、そこに楽しみを見出すわけでもなく、まるでロボットのように、無感情に、人に不快感を与えるのです。


意志を持ち、そして話せば分かりそうな幽霊と、

何を言ってもまるで理解できない究極のバカ頭、ゴキブリ。



巷には、幽霊が出ると噂される曰くつきの物件などがあるようですが、


そりゃお前、













ゴキブリよかマシだろ。