高倉 洋子
4:22AM
空気は冷たくなり、場内は静まりかえる。
無機質な機械の音だけが響き渡り、それが暗闇にこだまして消えていく。
「係長、巡回行ってきますわ」
「おうよ」
僕は懐中電灯で足元を照らしながら、薬品室へと向かった。
かつて、その薬品質には「幽霊が出る」という噂があった。
僕はその幽霊を「洋子」と名付けた。
地面にペタリと横たわる洋子。
素材は紙だ。
こいつを柱に貼り付けて遠くから眺めると、暗闇のせいか、本物の女性の霊のように見える。
「ふふ」
僕は、高倉が驚く様を想像して笑いを漏らした。
高倉は僕の一年下にあたる後輩で、やけに恰幅のいい体をした男だった。
しかしそんな外見とは裏腹に内心は極度の怖がりで、たとえ箸が転げただけで叫び声をあげたとしても、それが高倉であれば誰もが納得するといったほど気の小さな男であった。
「高倉の野郎、ここを通ったらブッたまげるぞ・・・」
僕はひとりごちると、そのまま洋子に背を向けた。
その瞬間である。
僕の懐中電灯が照らし出したそれは大きな大きな、それはまるで化け物のように剥いた目と、そして今にも怒りの雄たけびをあげんとせんばかりに開かれた、大きな口であった。そう、高倉である。
「ぎゃーーー!!!」
洋子を見た高倉は、それは恐ろしい形相で叫び出した。
「ぎゃーーー!!!」
それを見た僕は、そのあまりに恐ろしい形相に恐怖して続いて叫んだ。
「ぎゃーーー!!!」
「ぎゃーーー!!!」
暗闇の薬品質に響き渡る、二人の成人男性の叫び声。
本当に怖かった。
いや、これほんと、高倉のあの顔、マジ怖かった。
お前も見たら絶対びびるって!
はーこえー
幽霊なんかマジ目じゃねー
人ってこえーなー