日本の医師の約8割は、「気候変動が人々の健康に影響を及ぼしている」と実感しているとのアンケート結果を、シンクタンク「日本医療政策機構」(東京都)が公表した。世界では近年、地球温暖化の影響で、山火事による大気汚染や感染症リスクの増大などが指摘され、日本でも医療現場で影響が顕在化している可能性がある。

 アラブ首長国連邦ドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、同条約の会議として初めて、健康を巡る問題について集中的に議論する「保健の日」が設けられた。また健康を守る行動を加速させることなどを盛り込んだ「気候と保健に関する宣言」に123カ国・地域が署名。世界的に気候変動による健康への影響について懸念が高まっている。

 アンケートは11月21〜27日にウェブサイト上で実施し、20〜90代の1100人から回答を得た。診療科別では内科が16・1%と最多で、消化器内科、精神科(いずれも8%)▽整形外科(6・5%)――などと続いた。

 「日本で気候変動が人々の健康に影響を及ぼしているか」との質問に対し、「とてもそう感じる」「そう感じる」との回答が計78・1%に上った。医師が直接診察しているそれぞれの診療分野の患者に限っても、51・4%が影響があると認識していた。

 病気やけがの種類ごとに今後10年間での影響についての見通しを聞いたところ、「大きな悪影響を及ぼす」としたのは、洪水や地滑り、山火事などによる「外傷」で83・3%。次いで、熱中症など高温の影響による「熱関連疾患」が79・5%、蚊などによる「節足動物媒介感染症」が75・8%に上った。

 こうした状況について「患者に対して啓発すべきだ」と考える医師は56・7%いたが、情報や資源不足、知識不足、時間不足などで啓発が困難との回答も目立った。実際に「気候変動の主な要因は何か」など知識を問う調査で、4問の設問に3問以上正答できたのは12・9%にとどまった。

 気候変動と健康を巡っては、熱帯夜で睡眠時間が短くなることによる健康被害や、認知症や精神疾患の増加と気温上昇の関係を指摘する論文も出ており、影響は多方面に及ぶ恐れがある。

 日本医療政策機構は「COP28が、アンケートで明らかになった国内の状況に変化を与えるきっかけになってほしい。医師の生涯学習として気候変動と医療を取り扱うことも必要になる」としている。【渡辺諒】


 












 





 






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