ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を受け、同事務所のタレントを広告などに起用しないとする企業が相次ぐ一方で、起用するかどうか様子見をする企業も少なくない。こうした企業の対応を、ガバナンス(企業統治)に詳しい八田進二・青山学院大名誉教授はどう見るか。【原田啓之】

 「社長が交代しただけで、経営の実態は何も変わっていない」。八田さんはジャニーズ事務所の現状をこう語った上で、起用について「検討中」とする企業のリスク感覚は「鈍い」と指摘した。

 毎日新聞の取材に応じた81社(1自治体・2団体含む)のうち、少なくとも25社が広告などへの起用を見送る方針を示した一方で、27社が「現在対応を検討中」とした。また、事務所側の動向を確認・注視した上で判断するといった見解も目立った。

 背景の一つに、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」があると見られる。企業に対し、取引先の人権侵害を「防止」または「軽減」するよう求めているもので、今回の対応についてこの原則を引き合いに出す企業も見られた。

 八田さんは「国連の指導原則は、即座に契約を切ることまでは求めておらず、取引先がどのように対応するかを見極める選択肢はある」と指導原則に沿った対応に一定の理解を示す。

 ただ、「性加害問題が注目されてから既に数カ月たっており、『検討中』というだけでは動きが鈍いように受け止められる。事務所に文書で申し入れをするとか、契約継続の条件を明らかにするなど具体的な行動を適時開示しないと、企業がネガティブな評価を受ける可能性がある」と付け加えた。

 81社の中には事務所側に被害者の救済や再発防止について具体的措置を申し入れたという企業もあったが、起用継続を模索する動きも見られた。

 八田さんは「スポンサー企業が、性加害問題を黙認して従来の取引を続けることは国連指導原則などの国際標準に抵触する。タレントという商品が優れているという理由で取引をすることは許されない」と語り、こう続けた。

 「広告の見直しによって、一時的に商品の売り上げが落ちる可能性はあるが、企業には公共性、経営者には誠実性が求められる時代だ」

 「なぜジャニーズ事務所のタレントを中途半端に起用し続けたのかを説明するよりも、こういう理由で広告を変更したと説明する方が、人権を尊重する姿勢を示すことになり、企業の信頼性や経営者としての評価を高めることになる。株主に対しても堂々と説明できるだろう」





ジャニーズとの契約打ち切りで"解決"?「トカゲの尻尾切りで、被害者が声上げづらくなる」専門家が懸念 




アキュラホーム、相葉雅紀の新CM起用について説明 一時は見送る判断も【報告全文】 


 嵐の相葉雅紀がアキュラホームのCMキャラクターに就任し、23日からスタートする新テレビCM『アキュラホームで会いましょう「相葉店長登場」篇』に出演する。これに先がけ22日、同社が公式ホームページを更新し、相葉の起用について説明した。

 同社は「2021年から、吹き抜けのある広いリビングも可能な『超空間の家』という製品特性を表現するため、メインキャラクターをキリンにして『キリンと暮らせる家』CMを展開、そして今年、会社設立45周年の節目としてCMにタレントの起用を考えました。『キリンとの親和性』を第一にキャスティング作業を進め、2004年の『志村どうぶつ園』出演以来、動物に対する愛情や実直、さわやかなイメージを持つ相葉雅紀さんに今年の1月からオファーをしておりました」との経緯を説明。

 続けて「弊社では3月以降、問題の経緯を見守っていました。9月7日の事務所の会見では不十分と判断して9月中旬からの新CMをいったん見送りましたが、9月13日に『故ジャニー喜多川による性加害問題に関する被害補償及び再発防止策』で、ようやく具体策が示されたのを確認できました」として、次のようにつづった。

 「また9月14日に被害を訴える当事者の会が『取引を直ちに停止することを希望しない』として、スポンサー企業に対し、影響力を適正に行使し、再発防止や救済に向けて働きかけてほしいとする要請書を公表したこと、国連の『ビジネスと人権に関する指導原則』では、契約解除などは最終手段として示されていることから、まずは、取引関係による影響力を適正に行使して改善を要求するなどのステップを踏み、再発防止と被害者救済に向けて積極的に働きかけ、その結果がどうだったのかプロセスについての情報開示をしながら進めていき、広く社会に理解してもらうことも広告主の責任ある行動であるということを考慮しました」


 その上で「そしてなによりも相葉雅紀さんの仕事に対する姿勢やお人柄も踏まえ、CMの放送を決定しました。もちろんこれで良いということではなく、タレントを起用した広告主という責任ある立場で、被害者の救済と再発防止に向けて、今後どのように事務所が取り組むか、弊社としても再発防止計画を改善することを求める要望を出し続けながら、万が一の場合の厳しい対処への覚悟を示すことが必須になると考えます」と呼びかけた。

 CMでは、「キリンさんと住みたいな〜」と淡い夢を語る少女の言葉に「住めるよ!」と自信満々で約束してしまう相葉店長。高難度の設計や予算など数々の問題から受注に難色を示す社員も現れる。それでも同社がうたう“完全自由設計・高性能なのに、適正価格”というフレーズのもとに「あきらめないぞ」と情熱を燃やし、設計士や現場監督、大工、そして無謀と思われる受注に異論を唱えていた若手社員とも力を合わせ、約6メートルという高い吹き抜けを持つ“超空間”のリビングを実現させる。



 こうして少女が思い描いていた“キリンと住める家”が完成。「断ることを知らない」熱血漢の相葉店長が見せる力強い表情と充実感に満ちた笑顔、優しいまなざし、そして映画の予告編を思わせるドラマチックな演出が見どころとなる。

■報告全文
株式会社AQ Group (本社:東京都新宿区、代表取締役社長:宮沢 俊哉)の相葉雅紀さんCMについて、下記の通りお知らせいたします。

弊社は、創業以来、真摯に完全自由設計の木造注文住宅に取り組んでおります。

2021年から、吹き抜けのある広いリビングも可能な「超空間の家」という製品特性を表現するため、メインキャラクターをキリンにして「キリンと暮らせる家」CMを展開、そして今年、会社設立45周年の節目としてCMにタレントの起用を考えました。「キリンとの親和性」を第一にキャスティング作業を進め、2004年の「志村どうぶつ園」出演以来、動物に対する愛情や実直、さわやかなイメージを持つ相葉雅紀さんに今年の1月からオファーをしておりました。

弊社では3月以降、問題の経緯を見守っていました。9月7日の事務所の会見では不十分と判断して9月中旬からの新CM をいったん見送りましたが、9月13日に「故ジャニー喜多川による性加害問題に関する被害補償及び再発防止策」で、ようやく具体策が示されたのを確認できました。また9月14日に被害を訴える当事者の会が「取引を直ちに停止することを希望しない」として、スポンサー企業に対し、影響力を適正に行使し、再発防止や救済に向けて働きかけてほしいとする要請書を公表したこと、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」では、契約解除などは最終手段として示されていることから、まずは、取引関係による影響力を適正に行使して改善を要求するなどのステップを踏み、再発防止と被害者救済に向けて積極的に働きかけ、その結果がどうだったのかプロセスについての情報開示をしながら進めていき、広く社会に理解してもらうことも広告主の責任ある行動であるということを考慮しました。

そしてなによりも相葉雅紀さんの仕事に対する姿勢やお人柄も踏まえ、CMの放送を決定しました。もちろんこれで良いということではなく、タレントを起用した広告主という責任ある立場で、被害者の救済と再発防止に向けて、今後どのように事務所が取り組むか、弊社としても再発防止計画を改善することを求める要望を出し続けながら、万が一の場合の厳しい対処への覚悟を示すことが必須になると考えます。

具体的には、人権に関するポリシーの制定など、再発防止特別チームが提言した内容に基づいた、さらに具体的な再発防止策、被害者救済、組織のガバナンス強化策に期待しています。また弊社も、これまで以上に人権デュー・ディリジェンスに取り組んでいきたいと思います。