10日投開票の参院選で最も有権者の関心が高いのが物価高対策だ。消費税率の一時的引き下げを訴える野党に対し、自民党は「消費税は社会保障の重要な財源だ」と主張する。有権者の思いは――。

 「今日も遅くなってしまった」。福岡県南部で高校生と小学生の子供2人を育てるシングルマザーの女性(40代)は帰路を急いだ。物価高の折、手取りを増やそうと複数の仕事を掛け持ちしているため帰宅が遅くなる。おなかをすかせた子供たちを待たせるわけにはいかず、夕食にスーパーの弁当や総菜を買って帰る日々だ。「本当は作りたい。出来合いは高いし」

 仕事はカウンセラーなどで月の手取りは20万円ほど。家賃2万円の県営住宅で家族3人、つましく暮らしていても給料日前には底を突き、社会福祉協議会の生活福祉資金を借りることもある。口座の残高が足りずクレジットカードの利用を止められることも度々だ。

 そんなぎりぎりの生活を値上げラッシュが襲った。マイカー通勤しているためガソリン代の値上がりは家計に響く。「以前は満タンにしても4000円台だったが今は5000円台。月1、2回の出費だけど痛い」。電気料金も高くなり、九州電力管内は2021年7月の時点で標準的な家庭が月6489円だったが22年7月は7271円。食料品も値上がりしている。

 政府は低所得の子育て世帯に子供1人当たり5万円の生活支援特別給付金を出しているが「とても足りない。国の支援は一律的なので、もっと困っているところに届くよう一人一人を見てほしい」。参院選ではそんな候補者、政党を探して訴えに耳を傾ける。

 同様の声は自治体からも。県民所得が全国水準より低く、子供の貧困が深刻化している沖縄県の自治体担当者は訴える。「沖縄は交通手段が少なく車を手放せないが、車を持っていると資産と見なされて生活保護を受給できない。国はこうした地域事情にも配慮してきめ細かく支援できないものか」

 厚生労働省の16年度「ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の8割は母親が働いているが、そのうち「正規の職員・従業員」は4割強にとどまる。平均年間収入は243万円(15年)で、国税庁統計の平均給与(433万円、20年)の6割弱の水準しかない。

 福岡県母子寡婦福祉連合会が設置する「ひとり親サポートセンター」はシングルマザーなどの就労を支援しているが、就業時間などの条件が企業側と合わず就労に結びつかないケースもあるという。甲斐英雄所長(65)は「子供がいるとどうしてもフルタイムで働けない場合がある。それぞれの子育て環境に合う職場を探していくほかない」と語る。【中里顕】



「男性ゆえ苦悩する人」へ コミュニケーション術、学びませんか2022/07/07 16:00毎日新聞 

 ストレスを抱え、つらい思いをしている男性は多い。兵庫県西宮市で活動する「プレラかだるべ」代表の千葉征慶(まさのり)さん(65)は、「男は弱音を吐くものではない、困難は乗り越えて当然と思い込み、悩みを誰にも言えず一人で抱え込んでいる人が多い。そういう男性の力になりたい」と言う。【まとめ・東山潤子】

 ◇批判せず傾聴に徹すると

 「プレラかだるべ」は、2007年に西宮市男女共同参画センターで「男性のためのコミュニケーション講座」を開講した際に、講座参加者のフォローアップのために結成しました。

 男性の中には、感情表現が苦手でつらい気持ちや悩みを話せない人、人の話に対して勝手な助言や「その話はこういうことだ」と強引に結論づける人がいます。こういう男性は、意図せず相手を傷つけたり怒らせて人間関係を悪くしたりします。かだるべでの活動はそうせずに済む方法を学び実践するものです。

 活動は月1回、日曜日に語り合いの会を開きます。会のルールは、ここだけの話(他言はしない)、批判はしない、話がないときはパスしてもいい、長時間自分だけが話をしないというもの。話す内容は自由で、今自分が話したいことを話し、誰かが話す時は、ただ聞くだけ。会には多い時で20人ほどの参加者がいます。

 ◇「金の卵」たちに見た現実

 80年代始め、私は大学で心理学を学びました。当時、地方から都心の企業に「金の卵」として集団就職した労働者たちが大人になり、精神疾患を発症する事例が多数発生していました。最初、私はインターンとして、86年に電機メーカーに入社してからはカウンセラーとして、30年以上も働く人たちの悩みに耳を傾けました。

 相談される内容は、女性の場合は家庭の問題など多岐にわたりましたが、男性は仕事に関連するものばかり。過重労働による疲れ、取引相手との摩擦、システム開発に伴う苦労、中間管理職の板挟みとなる悩みなど、今に至るまで仕事の悩みは変わりません。

 92年に大阪勤務となり、社内のカウンセリングだけでなく、大阪市立男女共同参画センターで「男性のストレスマネジメント講座」を開催したり、相談員として男性のための対面や電話による相談などもしています。

 かだるべでは語り合いだけでなく、「男性のための機織り体験」も実施しました。伝統的な織物と違って、さをり織りという、織り方や素材などに制約がなく、初心者でも簡単にできる手法です。これに関心を示す男性は意外にも多く、自分で織ったマフラーを楽しげに見せ合っていました。

 また、うつ病の参加者がいて、うつ病とジェンダーは関係があるのかという意見が出たので、産後うつの母親が集う団体と共同で語り合う会を開きました。立場や性別を超えての語り合いは好評で、以後かだるべは男女ともに参加するようになりました。

 ◇客観視が自らを解放

 これらの活動は、「アサーション」という相手を尊重したり、対等な関係を築くコミュニケーションの実践です。これによって自分が抱えていたつらさに気づき、誰かに話せるようになります。話をすることで、自分を客観視し、さらになりたかった自分の姿を知り、ようやく悩みやつらさから解放されます。

 私がやっていることは、人が苦悩する力を支えることだと考えています。苦悩する力とは、よりよい生き方を求める力。多くの人が語り合うことで、よりよい生き方になるよう願っています。

 ◇ウェーブ活動推進グループ「プレラかだるべ」

 西宮市から「活動推進グループ」として承認され活動している。「プレラ」は開催場所の施設「プレラにしのみや」の場所にちなみ、「かだるべ」は千葉さんの出身地岩手の「語ろう」という方言から命名された。新型コロナウイルスの影響でオンラインでの活動もしていたが、顔を合わせての定例会を人数制限をして開いている。7月は17日(日)14時から、プレラにしのみやにあるウェーブの学習室にて。参加希望など問い合わせはメール(HCH02703@nifty.ne.jp)で。ホームページはhttp://thomasmore.life.coocan.jp/。

 悩みを抱えている男性同士で語り合う会には、以下もある。

 ▽クレオ大阪南「男のしゃべり場」 最近感じるモヤモヤや不安などについて。次回開催は13日午後7時。問い合わせは(06・6705・1100)。

 ▽伊丹市立男女共同参画センター「ここいろ☆ぱぱサロン」 子育て中の男性同士が育児の悩みなどを語り合う。次回開催は30日午前10時。問い合わせは(072・781・5516)。

 ▽男性相談支援ポータルサイト「オトココロネット」 ホームページ(https://otokokoronet.com/) 相談やイベントの情報を発信している。



 




 




 




 




 






 オンラインゲームの課金をめぐり、若年層が契約当事者となった相談件数が急増している。課金額が10万円以上に上るケースが半数以上を占めるが、消費者庁の相談員が事業者と交渉し、返金されることも多い。同庁は保護者に対し、「諦めずに相談してほしい」と呼び掛けている。

 消費者白書によると、2021年のオンラインゲームに関する消費生活センターなどへの相談件数は7276件で、うち20歳未満が契約当事者の相談は4443件と約6割を占めた。17年と比較すると、全体の相談件数は1.7倍だったのに対し、20歳未満は2.8倍と増加が目立った。

 20歳未満の相談を課金額別で見ると、10万円以上が60.5%で、うち100万円以上は5.5%に上った。課金平均額は18〜19歳が41.6万円、10〜17歳が34.9万円で、10歳未満も17.2万円だった。「子どもがゲーム目的で勝手に現金を持ち出した」といった相談が寄せられ、3歳の子どもが親のスマートフォンを勝手に操作して課金が発生した例もあったという。

 ただ、相談で助言を受け、返金に至ったケースは多い。消費者庁によると、21年度に寄せられた1385件の相談のうち、相談員による助言やあっせんで一部もしくは全額が返金されたのは1207件と87%に達した。同庁の担当者は、「子どものやったこととして諦めずに、消費生活センターに相談してほしい」と話している。