1級河川の堤防「なし」「不十分」3割…7年前とほぼ変わらず、対策急務2022/06/30 09:42 

読売新聞

 国が管理する全国の1級河川で堤防が必要な計約1万3000キロのうち、3割の区間で未設置や、高さや幅が足りずに機能不足となっていることが、国土交通省のまとめでわかった。記録の残る7年前と比較して整備率はほぼ変わらず、堤防整備には長い年月が必要なことから、堤防以外の対策が急務となっている。

 国交省によると、河川整備基本方針に基づき、堤防が必要と定められた区間は、昨年3月時点で1万3369キロに上る。このうち、1級河川を全国109の水系別でみると、堤防のない区間は77水系計729キロで、高さや幅が不十分な区間と合わせると、全水系で計4073キロあった。整備率は69%で、2014年(65%)からほとんど進んでいない。

 熊本県を中心に81人の死者・行方不明者を出した20年の九州豪雨で堤防が決壊するなどした球磨川水系では整備が必要な103キロのうち、堤防が未設置と不十分な区間は24キロで、人的被害が出た場所もあった。福岡、大分県で河川の氾濫や土砂災害が起きて42人の死者・行方不明者が出た17年の九州北部豪雨で流域が大きな被害を受けた筑後川水系では、必要な291キロのうち、11キロの区間で堤防がなく、不十分な堤防は112キロに及ぶ。

 国は「100〜200年に1度の水害」を想定し、河川ごとの計画で優先度を決め、20〜30年以内をめどに堤防を整備するとしているが、橋や線路がすでにあり、大規模改修が難しい場所や地権者との交渉が難航している場所も多い。国は「予算化された区間の整備を急ぎたい」としている。

 山田正・中央大教授(河川工学)は「国は治水対策の予算を削っていた時期があり、堤防整備には橋や線路など解決すべき課題も多い。堤防やダムなど河川の内側だけでなく、流域治水による外側の対策も必要だ」としている。



 




 





 




 




 




 




 




 




 





 





 





 




 





 





 





 




 




遭難の増加 手頃な山でも油断は禁物だ2022/07/03 05:00読売新聞 

 標高が低い山でも遭難のリスクはある。甘く見ず、万全の準備を整えて登るようにしたい。

 2021年の山岳遭難は2635件で、20年より341件増えた。統計を取り始めた1961年以降で2番目に多かったという。

 近年の登山ブームに伴い、遭難件数は増える傾向にある。コロナ禍の影響で2020年は減少したが、再び増加に転じた。

 標高599メートルの高尾山など、人気のある低山が多い首都圏で遭難が増えたのが特徴だ。遠出を控えて、近場の山を目指した人が多かったのだろう。

 東京都と埼玉県の境にある標高969メートルの棒ノ嶺(棒ノ折山)では、転倒、滑落に加え、登山道を見失う「道迷い」や、暗くなって動けなくなる例が相次いだ。中高年だけでなく、若い世代の事故も少なくなかった。

 低山は、林業用の作業道や住民が使う道が多く、迷いやすい。整備が行き届かず、岩や木の根がむき出しのところもある。手頃な山だからといって油断は禁物だ。

 山に適した服装や登山靴、雨具、ヘッドランプ、地図といった基本的装備の必要性は、低山も高山も変わらない。

 早めに出発すれば、日没後に道に迷うリスクを減らせる。コロナ禍での自粛生活で体力が落ちている可能性を考え、無理のない計画を立てることが重要だ。

 山選びの際は、主要な登山ルートの難易度などをランク付けした「山のグレーディング」が参考になる。長野県が提唱し、現在は10県・1山系の962ルートのランクが公表されている。

 登山ルートの技術的難易度を5段階で、また、必要な体力度を10段階でそれぞれランク付けすることで、自分の技術や体力に見合った山を選べるようになっている。上手に活用すれば、遭難を防ぐことにもつながるはずだ。

 低山であっても、氏名や連絡先、行動予定などを記した登山届を提出しておくことが欠かせない。かつては登山口で紙で書いて投函とうかんする形式だったが、今は出発前にオンラインで受け付ける自治体が増えている。

 家族とも共有しておけば、万一の時に警察や消防が早めに捜索に動き出すことが期待できる。

 登山は全身運動で、心肺機能や脚力を鍛えられる。山頂に立った時の達成感は大きい。だが、遭難しては元も子もない。疲労や不安を感じたら、無理をせずに引き返す勇気を持つべきだ。