オミクロン株ピークいつ? 感染力強い別系統警戒、海外では再拡大も2022/01/29 06:00 

西日本新聞
 驚異的な速さで感染拡大する新型コロナウイルスのオミクロン株による流行のピークはいつか−。全国に先駆けて感染が進んだ沖縄県では、新規感染者の伸びが減少に転じ、収束の兆しが見えつつある。全国で同様の傾向をたどる可能性がある一方、新たに別系統のオミクロン株が広がった国もあり、専門家は警戒を呼び掛ける。

 「沖縄ではピークを越えた兆しが見えてきている」

 26日夜、厚生労働省に対策を助言する専門家組織の会合。座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は終了後の記者会見で、沖縄県の状況をこう分析した。

 会合の資料や沖縄県などによると、同県では3日以降、オミクロン株への置き換わりで感染が急拡大した。6日には新規感染者が981人となり、過去最多だった昨年8月25日の809人を更新。その後も増え続けた。

 人口10万人当たりの新規感染者数は、13日までの1週間で約654人まで増えた後、600人台で推移。18日までの1週間で約679人に達し、そこをピークに一転して下がり始めた。25日までの1週間は約547人で前週から0・8倍となり、全国で唯一、減少傾向がみられた。専門家は、飲食店の時短営業や成人式の中止などの対策強化が奏功したとみる。

 ただ、軽い症状の感染者が検査を受けていないケースや、行政検査の逼迫(ひっぱく)で感染者の報告が遅れている可能性もある。「ピークアウトかどうか、まだ分からない」。沖縄県の担当者は慎重に話す。

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 「早ければ、この2週間前後でピークが到来する可能性がある」。政府に対策を助言する専門家の尾身茂氏ら有志が21日に公表した提言では、2月上旬にもオミクロン株による「第6波」がピークを迎える可能性を示唆していた。

 念頭にあるのは、オミクロン株の特性だ。オミクロン株は感染が他の人にうつるまでの日数を示す「世代時間」が約2日で、第5波をもたらしたデルタ株の約5日よりも半分以下とされる。専門家の一人は「世代時間が短いと流行ピークは早く来るが、感染者が減る際もスピードが速く、流行期間は短くなる」とみる。

 実際、世界で初めてオミクロン株を世界保健機関(WHO)に報告した南アフリカでは、感染者の確認から1カ月弱でピークを越え、流行は収束に向かった。英国でも、昨年11月下旬の1例目発表から1カ月余りで峠を越えている。

 もっとも、感染拡大のスピードは鈍ったが、国内では感染増加が続く。尾身氏は28日の衆院予算委員会で「この1〜2週間でピークアウトするかどうか予断を許さない」と強調した。

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 新たな懸念材料となるのが、別系統のオミクロン株だ。国内で広がった主流系統「BA・1」に対し、変異箇所の異なる「BA・2」と呼ばれるウイルスで、感染力は18%高いという分析もある。国内では少なくとも27例が見つかった。

 「名前は同じだが、免疫機能に影響しそうなアミノ酸の配列が大きく異なる。BA・2に置き換われば、第7波を引き起こす可能性もある」。京都大の橋口隆生教授(ウイルス学)は警告する。デンマークやイスラエルでは「BA・1」から「BA・2」に置き換わり、収束傾向だった感染が再拡大したことが報告されている。橋口教授は「別系統でも基本的な感染対策は同じ。マスク着用や3密の回避を徹底してほしい」と語った。(山下真)



 




 





時事通信社

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染急拡大を受け、自宅療養者が急増している。厚生労働省によると、25日時点では全国で過去最多の約26万4000人に上り、2週間前の約14倍になった。軽症で基礎疾患がない若年層などは医療機関での受診なしに自宅療養できる運用が一部で始まったが、専門家は「体調に不安があれば、自治体設置の窓口にすぐ連絡を」と呼び掛ける。

 オミクロン株は感染しても軽症で済む傾向が指摘され、自宅療養者は今後も増える見通しだ。ただ感染者から別の人にうつるまでの期間「世代時間」は2日前後で、昨年夏に主流だったデルタ株より約3日も短いとされ、「麻疹(はしか)並みの感染力」との指摘もある。家庭内感染の急増が懸念される中、感染者データを管理する国の情報システムによると、今月下旬に報告された新規陽性者の感染場所は4割近くが自宅とされた。

 東京都などは自宅療養の注意点として、部屋を分け、ドアノブなどの共有部分の消毒を徹底することを求める。看病する人を1人に限り、全員が不織布マスクを正しく装着することも推奨する。

 けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師(感染症)は「オミクロン株は症状が軽いと言われるが甘く見るのは危険」と警鐘を鳴らす。「米国では入院者が増え、日本でも死者が増える恐れがある」とした上で、国や自治体が自宅療養者がいる家庭に対し、米国で配られる高機能マスク「N95」を配備することを提唱。「オミクロン株は感染力が極めて強い。N95が無理でも不織布マスクを2枚重ねるなど工夫してほしい。特に洗面台やトイレなどの共有部分は寒くても小まめに換気を」と訴える。

 昨年夏の第5波では自宅療養者の死亡が相次いだ。菅谷氏は「体調が少しでも心配なら、健康観察を担う自治体設置の健康フォローアップセンターなどに遠慮なく連絡すべきだ」と強調。「受診抜きで自宅療養する運用を始める以上、自治体や保健所は容体が急変した患者を医療機関に迅速につなげる体制を整備する義務がある」と話している。


 







 





 






日刊ゲンダイヘルスケア
 猛威を振るうオミクロン株の流行により、新型コロナウイルスの感染爆発はまだまだ収まりそうにない。1月20日に8638人の感染者が確認された東京都では翌21日からまん延防止等重点措置が適用されたが、日常生活における感染対策をあらためて徹底したい。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

 オミクロン株は「感染力が強く、重症化リスクは低い」と言われる。コロナウイルスの細胞侵入に関わるスパイクタンパク質が30以上変異している上に免疫逃避能力もあり、従来株と比べ気道での増殖力が70倍で、感染力は4〜5倍だと推測されている。

 一方、肺への侵入は10分の1程度なことから、間質性肺炎を起こすケースは少なく、50〜90%程度が無症状か軽症とされる。米ロサンゼルスの感染者約7万人を対象とした研究では、デルタ株に比べて症状が出る人は50%程度、ICU入院は74%少なく、死亡は91%少ないと報告されている。

 だからといって軽く考えるのは禁物だという。

「世界では1日におよそ400万人が感染し、1万人が死亡しています。致死率は約0.25%です。西欧でも、10万人当たり数十人から200人前後の死亡があり、致死率は0.05〜0.2%になります。季節性インフルエンザの致死率は関連死を含めて0.1%、直接死は0.03%程度ですから、オミクロン株の死亡リスクが低いとはいえません。日本ではまだ死亡者は多くありませんが、感染者数が増えれば、それだけ重症者も死亡者も増えます。また、コロナ患者で医療機関が手いっぱいになり、他の重篤な病気の患者が切り捨てられる危険もある。実際、米国の循環器科教授からの私信では、ボストンの大学病院で診ているのはコロナ患者ばかりだと悲鳴を上げていて、脳卒中や心筋梗塞などの緊急性のある患者が犠牲になっているといいます」

 だからこそ、感染対策を徹底することが大切になる。感染力が強いオミクロン株で何より意識しなければならないポイントは「空気感染する」ということだ。

「世界的な医科学誌の『ネイチャー』や『ランセット』でも、感染流行の半年後から、飛沫、接触、そして空気が感染経路であると報告しています。会話、咳、くしゃみなどで鼻や口から排出された飛沫は、空気中で水分が蒸発して乾燥し、飛沫核という微粒子(5ミクロン以下)になって、数メートル以上にわたり空中を漂います。この飛沫核に含まれたウイルスが鼻や口から侵入し、感染させるのが空気感染(飛沫核感染)です。空気が乾燥する冬には、より細かい粒子となって長時間漂う上、ウイルスの生存力が桁違いに上がるため、さらに感染リスクがアップします」

■マスクだけでは不十分

 これまで報告された国内外の感染事例を見ると、飛沫と空気による感染によって、ごく近くで大声で話すとマスクの有無にかかわらず、1分以内に感染する可能性がある。


 換気が悪い室内では、人と人の距離を1メートル以上あけ、アクリル板で間を仕切っても、飛沫核が室内を循環すれば1人がその場にいる全員にウイルスをまき散らす。

「感染対策としてマスクの着用は重要ですが、空気感染を考慮するとそこまで安心はできません。東大医科学研究所の研究では、不織布マスクをしている場合、50センチ離れた時に排出するコロナウイルスが70%以上減り、飛沫や飛沫核で侵入するウイルス量を47%以上減らせる効果があるとしています。逆に言えば、50%以上はウイルスの侵入は防げないということです。95%以上の微粒子を捕捉できると称されるN95マスクでも、完全密着でなければ、ウイルスの10%は侵入するとされています」

 マスクをしていても空気感染は十分に予防できないとなると、重要なのは、やはり「換気」だ。

「室内を長時間漂う飛沫核を屋外に排出する必要があります。WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病対策センター)の報告では、換気が1時間に2回以下になると、ウイルスの拡散に有意な関連があるとしています。ですから、換気は1時間に2回以上の頻度で行うのが望ましい。個室や仕切られた場所で、適切な換気が徹底されていれば、別のグループへの感染リスクはほぼなくなります」

 換気は部屋の対角線上にある窓やドアを開けると、空気の流れができて効率がいい。

「外気を取り入れながら、エアコン、扇風機、空気清浄機を使って換気を補助するのも効果的です。温かい空気は部屋の上、冷たい空気は下にたまります。扇風機や空気清浄機の風向きを斜め上方向にして空気を拡散するといいでしょう」

 3回目のワクチン接種が遅れている現状も考え、マスク着用、ソーシャルディスタンス、換気をあらためて徹底すべきだ。




日刊ゲンダイヘルスケア
【腰痛のクスリと正しくつきあう】

 前回、腰痛の薬物治療に使われる「NSAIDs」(非ステロイド性抗炎症薬)について詳しくお話ししました。今回は、最近になって腰痛にも多く使用されるようになった解熱鎮痛薬「AAP」(アセトアミノフェン/商品名=カロナール)について解説していきます。

 昨年から日本で始まった新型コロナワクチン接種では、副反応で生じる発熱に対応する解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが推奨され、ドラッグストアなどで品薄状態が続いたのは記憶に新しいところです。

 アセトアミノフェンは、脳の中枢神経や体温調節中枢に作用し、脳の痛みに対する感受性を低下させたり、皮膚の血管を広げて熱を放散させることで体温調節にも効果があると考えられています。NSAIDsとは違って炎症を抑える作用はほとんどなく、効き目が穏やかで体への負担や副作用も少ないため、子供や妊婦にも処方される薬です。

 そのため、「小児用の熱冷まし」というイメージを持っていて、腰痛の強い痛みに対する効果を疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。しかし米国や欧州では、以前からNSAIDs(ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンなど)よりもアセトアミノフェンの方が効果、安全性、価格の面でバランスが良いとして医療現場においても繁用されています。

 日本でも、21世紀に入ってからアセトアミノフェンを再評価する動きがあり、多く用いられるようになっています。関節リウマチなど炎症を伴う激しい痛みには不向きですが、慢性腰痛に対しては有効性と安全性が高いことが考慮され、腰痛診療ガイドラインではNSAIDsとともに第1選択とされています。また、慢性疼痛(とうつう)治療ガイドラインでも同じく使用が推奨されています。


 ただし、安全性が高いといっても、注意しなければならない点もあります。NSAIDsで見られるような胃腸障害や腎障害の副作用は比較的少ないとされていますが、問題となるのは肝障害です。

 アセトアミノフェンは、現在は1日に最大4000ミリグラムまで使用することが可能ですが、総量1500ミリグラムを超える高用量を続ける場合は肝臓に負担がかかるとされ、定期的な肝機能検査を行うなどの注意が必要です。

 アセトアミノフェンは市販の総合感冒薬にも含まれているケースもあります。アセトアミノフェンのほかにも使用している医薬品があって不安な方は、薬剤師に相談してください。

(池田和彦/新宮アゼリア薬局・管理薬剤師)





旭川・療育園クラスター終息から1年 対策強化 感染者を抑制 離職相次ぎ人員不足2022/01/30 05:00 

北海道新聞
 旭川市の重症心身障害児(者)施設「北海道療育園」で、入所者と職員の計176人が新型コロナウイルスに感染した大規模クラスター(感染者集団)の終息から間もなく1年を迎える。同園は、障害者施設としては全国的にも類を見ない規模に拡大したことを教訓に、職員の密を回避するなど対策を強化し、終息後は感染者数を最小限に抑えてきた。ただ、今も後遺症とみられる症状を抱える入所者や職員がいるほか、離職による職員不足も課題となっている。

 同園は2020年12月1日にクラスターと認定され、2カ月後の21年2月2日に終息。感染した入所者105人は園内にとどまり、自衛隊看護師など外部支援を受けながら療養した。感染経路は不明だが、拡大の要因として《1》食事などの介助で入所者と職員が密着《2》職員休憩室を複数の課で共有し、マスクを外して会話した―などを挙げている。