トンガ大噴火 日本は「空振」の津波か…専門家「100年以上ぶりのケース」「南半球で寒冷化も」2022/01/17 15:51 

FNNプライムオンライン


トンガ諸島にある海底火山が噴火した影響で、14時間にわたって発令された津波注意報。
気象庁は会見で「本当に津波かどうかわからない」と異例のコメントを出しました。
未知なる「津波」とはどんなものだったのか、めざまし8で専門家が解説しました。

継続する“波動”…「空振のメカニズム」

フィジーやトンガなどで確認された「海底火山噴火に伴う隆起による津波」。
しかし、東北大学災害科学国際研究所の今村文彦氏は、今回日本で起きた津波は「空振による津波」なのではないかと指摘しています。
では「空振」というものはどういうものなのでしょうか。

実際に2011年に起きた霧島連山中央部にある新燃岳噴火による被害を見てみると、噴火と共に遠く離れた場所の建物の窓ガラスが、風の勢いによって割れてしまっている様子が確認できます。
今回は噴火の規模、距離も大きいということですが、「空振」のメカニズムを今村氏はこう語ります。

東北大学災害科学国際研究所 今村文彦氏:
噴火に伴いまして、空気が一気に押されます。それで、気圧が高いものが四方八方に伝わります。海の上では気圧が高いので、海面がいったん押されるんです。
その後、「空振」がどんどん溜まっていきますので、押されたものがまた上がったり、また次に下がったり。

この「空振」が長い距離、進めば進むほど多くの波動が継続して続いてしまう。これが重復のメカニズムになります

そして、今村氏はトンガから離れた複数の波が重なり、潮位が高くなったと考えられると指摘。
さらに、海の中には小さい島や色々な地形があったりと、複雑に絡み合って津波の勢いが増してしまったことも、今回の日本の潮位の変化に影響したのではないかと考えられます。

実際に日本の地形は複雑です。例えば岩手県「リアス式」は外に出ている岬の先端に、また、「V字型の湾」は引っ込んでいる部分に勢いが集中しやすい状況があります。
2011年の東日本大震災で起きた津波との違いはあるのか、今村氏に聞きました。

東北大学災害科学国際研究所 今村文彦氏:
地震は海底での変化によって海面が動き、それが伝わりますけども、「空振」は海または陸、関係ないんですね。
今回は、太平洋全域に渡りましたし、しかも中米を越えてカリブ海までいってしまった、海を越えた津波になるわけです。これは非常に例としては、まれになります。

「空振」による津波は非常にまれであると言及。さらに、過去の記録については…

“1883年以来”「空振」による津波 南半球では一時的な寒冷化の恐れも…

東北大学災害科学国際研究所 今村文彦氏:

東北大学災害科学国際研究所 今村文彦氏:
噴火そのものも低頻度ですし、空振によって津波が起こったという記録自体は、100年以上…1883年インドネシアのクラカタウ島の火山の噴火ということになります。

そして、東京大学地震研究所の青木陽介准教授は、今回のトンガの噴火で考えられる他の被害についてこう語りました。

東京大学地震研究所 青木陽介准教授:
今回のトンガの噴火は特に大きくてですね、噴煙が大気圏超えて成層圏までいっていますので、そうすると塵とかが落ちてこなくなって、太陽の光を遮るってことが考えられますね。
そうすると地球が受ける太陽光のエネルギーが減りますので、特にトンガに近い南半球では、一時的な寒冷化が危惧されますよね。
南半球で起きたので南半球中心になると思いますけども、北半球にも影響はあるかもしれないですね

非常にまれなケースの「空振」による津波。
噴火活動はおさまるのか、引き続き最新の注意していく必要があります。

(「めざまし8」 1月17日)



 




 





 







BBC News

国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)は18日、海底火山の大規模噴火とそれに伴う津波が発生した南太平洋の島国トンガについて、最大8万人が影響を受けた可能性があるとBBCに話した。ニュージーランドなどはこの日、軍用機を派遣して被害調査を開始した。

15日午後5時10分(日本時間午後1時10分)ごろ発生したフンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山の噴火では、火山灰が空高く吹き上げられ、爆音は2383キロ離れたニュージーランドでも聞こえた。この地域における噴火としては、過去数十年で最大規模とされる。

この影響で、トンガに高さ1.2メートルの高波が押し寄せるとの警報が出されたほか、日本やアメリカなどでも津波警報が発令された。トンガの島々はその後、火山灰に覆われ、停電が発生し、通信も途絶えた。

これまでのところ死者は報告されていない。衛星画像からは、トンガ中心部から離れたいくつかの島が完全に水面下に沈んだ状況がうかがえる。

IFRCのフィジー事務所のケイティ・グリーンウッド氏は、緊急支援が必要だと説明。

「噴火や津波、噴火が原因の浸水の被害を受けたのは、トンガ全域で最大8万人に及ぶ可能性があるとみている」と述べた。

現地情報が限られる中、ニュージーランドとオーストラリアは17日、被害状況を調べるため軍用機を派遣した。

ニュージーランドの国防軍は、「一帯と、海抜が低い島々の被害の初期調査を支援」するため、航空機1機が出発したとツイートした。

同国のジャシンダ・アーダーン首相は16日、津波が「深刻な被害」を引き起こしたと説明。飲み水は火山灰で汚染されているとされ、欠乏していると話した。

また、トンガの一部電力と携帯電話回線が復旧しつつあるとした。

トンガ駐在のニュージーランド外交官ピーター・ランド氏は、現地の状況について、火山灰が降り積もって「月面のようだ」と話した。

援助団体によると、火山灰の影響で、当局は住民らにボトル入りの水を飲むよう呼びかけているという。また、肺を守るためにマスク着用を指示しているという。

現地の映像では、火山灰で空が暗くなる中、低地から避難する人々が乗った車の渋滞が発生したことがわかる。この何時間か後、トンガではインターネットや電話の回線が断絶し、全人口約10万5000人との連絡がほぼ途絶えた。


今回の大規模噴火を起こす数日前から、海底火山では噴火がみられていた。トンガ気象庁は硫黄とアンモニアの臭いが報告されているとして、警戒を呼びかけていた。

津波が火山付近だけでなく太平洋の各地で発生した原因については、科学者らが解明に取り組んでいる。「気象津波」と呼ばれる、気圧の波が起こす現象だった可能性や、海底火山の未確認の崩壊が原因となった可能性なども検討されている。




トンガ沿岸部で「大きな被害の可能性」 海外の津波専門家が指摘2022/01/17 06:00  朝日新聞

南太平洋のトンガ諸島で15日にあった海底火山の大規模噴火は、太平洋沿岸の広い範囲に津波をもたらした。インドネシア気象気候地球物理庁の津波専門家ダリヨノ氏が朝日新聞の取材に応じ、「トンガの沿岸部でも大きな被害が出ている可能性がある」と指摘した。

 ダリヨノ氏は今回の津波被害について、「日本から米国も西海岸まで、これほど広範囲に津波の被害が及んだことに驚いている。火山活動がそれだけ巨大であったという証拠だ」と指摘した。

 ダリヨノ氏はさらに、沿岸部に押し寄せる津波の高さが、波の強さを左右する。50センチ以下であれば波の力が比較的弱いため被害は少ないが、高さが1メートルを超える場合は建物の破損などの被害につながると説明。

 今回、トンガ沿岸での津波の高さは120センチ〜130センチだったと推定されるといい、「沿岸部に大きな被害が出ている可能性がある。内陸部の標高が低ければ、津波が内陸部にも達して、被害はさらに深刻になる」と指摘した。

 また、日本の一部地域に到達した津波の高さが1メートルを超えていたことにも触れ、「津波が海底の地形、海流などの海洋学的条件から高さを増したと考えられる」と分析した。(ジャカルタ=半田尚子)





トンガ噴火、火山灰で飲料水汚染 リゾート地全壊2022/01/17 16:27  ロイター

[シドニー/ウェリントン 17日 ロイター] - 南太平洋の島国トンガ沖で15日に海底火山が大規模噴火を起こし、津波が発生したことを受けて、オーストラリア、ニュージーランド両政府は17日、トンガの被害状況を確認するため偵察機を出動させた。

オーストラリアのセセルジャ太平洋担当相は、国内ラジオとのインタビューで、現時点では多数の死者は確認されていないが、一部で深刻な被害が出ていると発言。トンガの空港は比較的良好な状態のようだが、英国人女性1人が行方不明と報じられていると述べた。ニュージーランドの地元テレビによると、この女性は波にさらわれたという。

オーストラリア駐在のトンガ政府高官は、偵察機が17日夜に帰還するとし、トンガ政府が支援の優先順位を決めるまで、支援活動を待ってほしいと述べた。支援物資の搬入で新型コロナウイルスが持ち込まれることを懸念しているという。トンガでは新型コロナの感染は確認されていない。

同高官によると、海底ケーブルが損傷を受けたため、海外との通信回線を復旧するには1週間以上かかる可能性がある。トンガ内閣は優先課題を協議中。国内の電話回線は復旧したが、火山灰で飲料水が汚染されていることが問題という。

トンガのリゾート地ハアタフビーチのオーナーがフェイスブックで明らかにしたところによると、同ビーチは全壊した。

国際赤十字の関係者は、最大8万人が津波の被害を受けた恐れがあるとの見方を示している。







河北新報


南太平洋のトンガ沖で起きた大規模噴火に伴う津波について、今村文彦東北大教授(津波工学)は「爆発で生じた『空振(くうしん)』と呼ばれる空気の圧力変化が、海面変動を引き起こし、日本に伝わる過程で増幅したと考えられる」と分析。過去に例のない珍しいメカニズムだとの見方を示す。

■波重なり増幅、専門家推測 

 今村教授は、日本各地で空振の通過によるとみられる急激な気圧変化が観測された後、潮位が変化したことに着目した。
 空振は広がりながら海面を押し下げ、その後、海面は盛り上がるように復元して波を形成する。約8000キロ離れた日本に到達するまでに波が重なり合い、大きくなったとみる。
 1960年のチリ地震津波をはじめとする「遠地津波」は、波が押して返すまでの周期が長い。今回は10分以下と短かったことからも空振が原因と推測する。
 久慈市の久慈港では1・1メートルの津波を観測し、気象庁は16日午前2時54分に岩手県への津波注意報を警報に引き上げた。湾には地形によって固有の波の周期があり、今村教授は「久慈港は津波と周期が一致して共振し、津波が大きくなったのではないか」と語る。
 火山学が専門の中村美千彦東北大教授によると、大規模噴火を起こした火山島では昨年12月から噴火が断続的に発生。今回は噴煙高度などから、20世紀最大級とされる1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の大噴火に迫る規模だった可能性を指摘する。
 噴火に伴う津波は、山体が崩れて海に流れ込んだり、海底が陥没したりして海面変動が引き起こされる。当初、トンガを襲った津波は火山性地震が原因とされたが、詳しいメカニズムは分かっていない。

 中村教授は「火山島でマグマの噴出が止まったという確証はない。今後、激しい噴火が起きれば大きな津波が生じ、遠地津波として日本に押し寄せる恐れがある」と推移に注意を呼び掛ける。





日刊ゲンダイヘルスケア
 日本時間の15日午後1時10分ごろに発生した南太平洋のトンガ諸島での大規模な火山噴火。これは首都ヌクアロファから北に60キロメートル余り離れた海底火山で、当初、気象庁は「日本での津波被害の心配はなし」としていたが、約11時間後の16日0時15分に津波警報・注意報を発表し、日本の広範囲で津波が観測された。気象衛星「ひまわり」による観測によれば、噴煙は高度およそ1万6000メートル、半径260キロメートルに広がるという。

 そこで懸念されているのが、1991年6月に起きた20世紀最大級のフィリピン・ピナツボ火山大噴火との類似点だ。ツイッター上でも、〈1991年のピナツボ火山の巨大噴火と同程度かそれ以上ではなかろうか…〉〈91年に起きたピナツボ火山のときもこれほどのレベルじゃなかったような〉などと不安の声が相次いいる。

 ピナツボ火山の場合、最初の噴火では7000メートル以上の噴煙だった。その後もしばらく噴火を繰り返した影響で、日本では93年夏の気温が平年より2〜3度低くなる冷夏が襲った。

 立命館大環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は日刊ゲンダイの記事『相次ぐ噴火で火山灰蓄積…“災害級”冷夏の到来を専門家が指摘』(2019年1月22日公開)で、こう話している。

《大規模噴火で噴煙が1万メートルを超えると成層圏に達するので、地上に落ちず、成層圏に灰が滞留します。灰の蓄積で太陽光が遮られると、地球への日射が減り、冷害をもたらすのです。噴火後の冷害や飢饉は過去に何度も経験しています》

 実際、93年は米が大凶作で、国産米は入手困難になり、タイなどから緊急輸入。「平成の米騒動」と呼ばれた。江戸中期の「天明の大飢饉」もそうだ。相次いで噴火した岩木山や浅間山の火山灰が要因で、日射量を低下させ、農作物に壊滅的被害をもたらしたとされている。


 今回はピナツボ火山の最初の噴煙よりもはるかに高い。トンガ諸島での大規模な火山噴火はまだ1月だから、その影響が今年あってもおかしくない。年初から不安が募る。