年末年始に困窮者相談会 食料品配布も、支援団体2021/12/17 18:57 

共同通信社

 生活困窮者の支援団体でつくる「年越し支援・コロナ被害相談村」実行委員会は17日、大みそかの31日と元日の2日にわたり、新型コロナウイルス禍で苦境にある人を対象にした相談会を東京都内で開くと発表した。場所は新宿区立大久保公園で、当日は弁当や飲み物も配布する。

 初日は午前11時〜午後5時、2日目は午前10時〜午後4時に開催する。弁護士や労働組合の担当者らが生活や健康の相談に応じ、適切な支援につなげる。

 17日、記者会見した全労連の黒沢幸一事務局長は「困窮は自分の責任と思う人もいるが、社会的な問題だ。実態を可視化するためにも、ぜひ相談してほしい」と呼び掛けた。




三菱電機女性社員が15年間のパワハラを初告白 性教育と称したセクハラ、「独居室」で救急搬送、15分離席で懲戒処分に2021/12/18 09:00  AERA dot.

三菱電機の女性社員が、長年にわたって数々のハラスメントに苦しめられ、退職の危機にさらされている。女性は初めて単独でAERA dot.の取材に応じた。同僚からの性的嫌がらせ、上司の暴言に始まり、独居房のような小部屋に閉じ込められて3度病院に搬送されたこともあった。最後は、上司から離席時間を分単位でチェックされ、懲戒処分の理由にされたという。女性が語った15年以上にも及ぶハラスメントの実態とは――。

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 女性の手元には「懲戒処分通知書」と書かれた一枚の紙がある。2017年12月1日付で、女性が勤務する三菱電機の社判が押されている。

 内容は、女性が上長の承認なしに15分以上の職場離脱を幾度となく行い、注意された後も同様の行為を繰り返したとして「1日の出勤停止」にするとの懲戒処分だった。

「会社は私の離席時間を分単位でチェックしていました。そして他の女性従業員4人と比較するデータを持ち出してきて、『君は離席時間が長い』として懲戒処分を言い渡されたのです。トイレの出入りが映っている防犯カメラのデータまで見られていたようです。ついにここまでするようになったのか……と絶望的な気持ちになりました」(女性、以下同)

 一般的に考えれば、15分超の離席を繰り返したというだけで出勤停止にするのはやりすぎのように思える。なぜ、三菱電機は女性にここまで厳しい処分を下したのか。その背景には、職場内でのハラスメントをめぐり、女性が三菱電機側と対峙してきた積み重ねがあった。

 発端は約20年前までさかのぼる。 三菱電機に正社員として入社した女性は、コンピューター製造部に配属され、社会人としてスタートを切った。だが2001年7月の分社化により部内全員が三菱電機インフォメーションテクノロジー(MDIT)への出向を命じられた。すると、派遣社員の女性から「性教育」を口実にからかわれ始めたという。



「派遣社員の女性が自身の性体験を自慢げに語ったり、私の体験を聞いてきたりしていました。出向先の総務に、仕事中の性的な発言をやめさせてほしいと相談したんですが、これがきっかけで、私に対する嫌がらせが始まりました」

 女性によると、以降は自席がオフィスの隅に追いやられ、上司から派遣社員の面前で怒鳴られたり、過剰な仕事を押し付けられたりすることが続いたという。

 女性は精神的ショックから体調を崩しがちになった。

 このセクハラ騒動については、三菱電機側も把握していた。三菱電機広報部はこう回答した。

「セクハラの申し立てがあったことは事実だが、出向先会社のセクハラ苦情処理委員会で調査し、ご本人への報告をへて、2002年に対応を終えたと聞いている。これ以上の詳細は、ご本人および当時の関係者のプライバシーに関するものなので回答を差し控えます」

 これに対して女性は「会社の『対応』とは、性教育を口実にセクハラ発言をしていた3人が、仕事中の発言だったにもかかわらず、『お酒の席での出来事』として口裏を合わせて報告をしたものです。私の方がむしろ職場の秩序を乱したことを理由に飛ばされました」と語り、双方の主張は食い違う。


 その後、女性は度重なる出向命令を受け、その先々で嫌がらせが繰り返されていたと証言する。

「異動を機にパワハラから逃れられると思ったのですが、すでに風評が広がり、ほとんど仕事を与えられなくなりました。私が上司に仕事を手伝いますと声をかけると、『会社に来なくていい』『君に与える仕事はない』などと言われ続けました」

 三菱電機広報部はこの上司の発言について「事実として確認していない」と否定している。

 そして2017年4月、長きに渡る出向が解除された。本社である三菱電機のある部署に配属になった。

 だが女性にあてがわれた勤務場所は、神奈川県鎌倉市の工場だった。ここは子会社や関連会社が入ったビルで、本社からの社員は女性一人だった。

「所属は本社なのに、出勤はなぜか鎌倉の工場でした。物置を急いで改造した場所に座らされた時は、目の前が真っ暗になりました」

 部屋の広さは4畳ほど(三菱電機は「約11平方メートルで6畳」と回答)で、窓にかけられた緑色のブラインドからわずかに光が入るだけ。しかも、場所は社内のごみ置き場の隣。部屋の前の廊下には、出入り口をとらえるようにカメラが設置されていた。



 仕事は経済紙3紙を読んでIT業界の記事をピックアップし、リポートするというもの。仕事は終電近くまでかかることも多く、次第に睡眠時間が削られていったという。

 三菱電機広報部は「ご本人から業務を満足にこなすのが難しいとの相談があったため、これに応じて負担軽減の措置を取りました」と回答したが、過酷な職場環境だったこともあり、女性が17年6月27日、7月24日、8月21日と、立て続けに3回も倒れて病院に搬送されていた事実も認めた。

 原因は睡眠不足による過労と熱中症だった。倒れた後、床に使い古されたカーペットが敷かれ、内線電話が設置された。内線電話は総務課と産業医のいる診療所にはつながるが、「119番」や外線にはつながらなかった。この時期、女性の携帯電話は壊れていて、修理に出す時間と気力すらなかったという。

「1回目に倒れた時は、救急車で搬送されました。その時、消防隊の人が『えっ、こんなところが職場なんですか』と驚いていました。しかし、2〜3回目はタクシーでした。救急車を呼ぶと会社の安全対策に問題があると思われてしまうからでしょう。倒れる前後に体調のことで相談しようとして、診療所に電話をしても予約が取れずに一方的に切られてしまいました」

 三菱電機広報部は「タクシーはご本人の希望で、産業医がご本人と話をした上で病院で診てもらった方がいいとのことでタクシーで向かった」と回答した。だが女性は取材に「倒れた時に話し合えるような冷静な状況になく、タクシーを希望したことはない」と反論している。



 内線電話について問うと、三菱電機側は「関係会社含め社内のいずれの内線番号にもかけられる電話で、ご本人に話した上で進めた。体調不良などの緊急時には総務部門にすぐに連絡がとれるように直通電話も設置していた」(広報部)と答えた。

 3回目に倒れる前日である8月20日、三菱電機は「全社的な労働時間管理」として、女性の部屋にICカードをかざして施錠解除する装置をドアに設置した。ICカードを触れる位置は目の高さほど。もし倒れたらICカードをかざしてドアを開けることができなくなる。そうなったら、「この部屋で死ぬかもしれない」という恐怖が女性を襲った。そのため、女性は内線電話を倒れた時のために床に置いていた。

 女性と会社側にはこうした経緯があり、冒頭に記したように17年12月の懲戒処分につながっていく。

 会社は女性が15分以上の職場離脱行為をしたとして、出勤停止1日の懲戒処分を下した。人事課は、その根拠として、他の女性従業員と離席時間を比較したデータを提示してきた。人事課はデータの出所を明らかにしなかったというが、女性は「廊下にあるカメラのデータではないか」と思ったという。

 なぜなら、女性が働いていた建物3階には階段付近にカメラが設置されていたものの、向きは階段の方ではなく、女性従業員が使うトイレの方を向いて映していたからだという。離席時間の比較として出されたのも女性ばかりだったことも疑念を深めた。



「トイレの出入りをカメラで確認され、その時間をチェックされていたと思うとぞっとします」

 データには同じ階の女性従業員が何時から何時まで離席していたかが分単位で記録されていた。同データに女性は含まれず、人事課から別途作成されたデータを提示され、「君の(データ)は離席が多いだろう」「他の女性はこんなに短い」と指摘された。

「他の女性は、データが取られていることすら知らないと思います。カメラは『防犯目的』としているようですが、私が労基署と一緒に立ち会った際には、1階や他のフロアの同じ場所には防犯カメラはないことを確認しています。防犯なら1階の玄関にあってもいいのに不自然です」

 これらの女性の主張に対して、三菱電機広報部は「女性の懲戒処分の内容はコメントを控える」とした上でこう回答した。

「ご本人の度重なる職場離脱に対し、上司より何度も注意を行うも改善が見られなかったことから、実態調査の一環として居室入退室の記録データを確認したことがある。その際には防犯カメラの映像についても入退室記録と突き合わせる形で確認した。(他の従業員との比較データに関しては)防犯カメラではなく入退室記録データを基に離席状況をサンプルとして提示したもの。トイレの出入りを含め、防犯カメラから得た情報を比較したものではない」

 また、カメラの設置状況については「安全、防犯管理上の観点からご本人が勤務する前から各フロアに設置している。フロア内に3カ所あり、階段付近に2カ所、エレベーター付近に1カ所、とフロアの出入り箇所に設置している」と答えた。

 懲戒処分を出された直後、女性は東京労働局に訴え、処分は撤回されたという。

「労働局は、女性特有の生理現象があるため、離席時間や回数をカウントすることはセクハラに当たるとして会社側に指導してくれました」

 女性は、18年7月に精神科を受診し、後に適応障害と診断を受けた。余っていた有休を消化し、19年2月から休職状態にある。休職期間が21年7月に終了したことを受け、9月に電機・情報ユニオンに相談し、団体交渉を申し入れた。

 女性から相談を受けた電機・情報ユニオンの米田徳治委員長はこう話す。

「女性が3回も搬送されたことを考えると、本当によく生きてくれていた、というのが率直な思いです」

 女性は、労働環境が悪いために病気を発症したとして、労働基準監督署に立ち入りを要請し、19年3月22日に調査が行われた。労災の申請は落ちたものの、現在再審請求をしている。米田氏は、企業側だけでなく、監督責任のある厚生労働省の問題も指摘する。



「監督係官の調査に明らかな瑕疵(かし)がありました。労働基準監督署は現場の写真を撮り、女性に聞き取りをしているにもかかわらず、目の前にある状況を見て見ぬふりをしていたことが調査結果復命書から読み取れます」

 中央労働基準監督署は取材に対してこう回答した。

「調査の結果内容は、個人情報が含まれているため、当事者以外にはお答えすることができません。復命書にあることは事実の通りになりますが、それについて会社側にどう指導したかは調査内容になるのでお答えしかねます。労災の請求に対する結果は、請求人に伝えた結果がすべてになります」

 日本労働弁護団常任幹事で労働問題に詳しい佐々木亮弁護士(旬報法律事務所)はこう話す。

「そもそも15分の離席で出勤停止にするのはやりすぎで、処罰が重すぎます。出勤停止処分だとその日は無給になるはずで、ペナルティーが大きすぎます。わざわざカメラで撮影した記録を証拠としている時点で、女性の行動を監視しようとしていたとみられても仕方がないと思います。他の人と比較する必要があったとはいえ、そんなデータを取っていること自体が異常です。ただ、(女性の適応障害が)労災として認定されなければ私傷病の扱いとなり、企業が設けている休職期間が終われば自然退職か解雇になってしまう可能性が高いと思います」

 前述のように、女性の主張と会社側の言い分が食い違っている部分は多々ある。三菱電機広報部は「(女性が加入する)労働組合と団体交渉を行っているため、これ以上詳細な内容はご回答致しかねます」とのことだった。

 だが女性は長年のハラスメントに苦しんだ上に、今は退職の危機に追い込まれていることは間違いない。(AERAdot.編集部・岩下明日香)