新型コロナは現在、濃厚接触者・感染者の追跡対応が必要な2類相当として扱われている。感染者と認定されると保健所が連絡を受け、入院・治療の調整を保健所が行っている。
これまで500人以上のコロナ患者を診てきた長尾氏は「今の制度では患者が放置されているのが問題。重症化するのを待つだけになっている。インフルエンザ並みの5類にすれば、感染が分かった時点で保健所を経由しないで、かかりつけ医で治療を受けることができる」と主張した。
さらに感染予防措置の必要性を訴えた上で「医師はすでに予防接種を済ませている。リスクはほとんどないのだから診察を拒否するのはおかしい」と訴えた。
長尾氏はイベルメクチンの効果を強調。イベルメクチンは2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した物資をもとに開発した抗寄生虫薬。現在治験が行われている。その効果については賛否があり、現在治験が行われているが長尾氏は「これまで100人くらいに投与している。もちろん本人の承諾を得てですが。治験中だがコロナ患者には適用外処方で使用できる。軽症者には非常によく効く」とした上で「菅総理にもお願いしたい」と廉価で使えるイベルメクチンが広く行き渡る措置を取るように要請した。
一方、同じく医師のおおたわ史絵氏医は「メリットはたくさんある。ただ、これまで家から出るなとか言われてきた国民がこれ(5類へのダウングレード)を受け入れられるかが問題。国民への疾患教育が必要」と慎重な姿勢を見せた。
今年7月、厚労省が新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認したのが「抗体カクテル療法」だ。50歳以上や糖尿病、慢性腎臓病、慢性肺疾患の持病があるなどの重症化リスクが高い軽症・中等症患者を対象にして、東京や大阪などで導入されている。発症7日以内でないと効果が少ないともいわれるが、重症患者の増加に歯止めはかかるのか――。
【Q】抗体のカクテル療法とは何か
【A】「新型コロナウイルスの感染を防ぐ『カシリビマブ』と『イムデビマブ』の2種類の中和抗体を組み合わせた点滴を投与するというものです。左のイラストに示したように、中和抗体はコロナウイルスの表面のスパイク(S)タンパクにくっつく抗体です。それによって感染細胞のACE2レセプター(ウイルス受容体)が体表面の上皮細胞などに結合しなくなるため、感染が体内に広まらなくなる仕組みです」
抗体カクテル療法のもとになったのは、30年ほど前に開発された、細胞融合法。これにより同一の抗原に対する抗体が大量につくられるようになった。
この「カシリビマブ」と「イムデビマブ」は人工的につくられた抗体で、「モノクローナル抗体」と呼ばれる。トランプ前米大統領は、このカクテル療法を採用し、1週間でコロナを完治させた。
【Q】発症7日以内でないとあまり効果がないといわれるのはなぜか?
【A】「体の中でウイルスが増殖し始めるのが、発症から1週間以内であるためでしょう。臨床試験の結果、重症化や死亡のリスクを7割以上減らす効果があることが分かっていますが、酸素吸入が必要な状態であったり、ECMO(体外式膜型人工肺)などを使用しなければならないぐらいの重症になるとあまり意味をなさない。『抗IL-2抗体』や『ステロイド剤』の投与、あるいは酸素吸入による生命維持に移ります」
【Q】変異株にも対応できるのか?
【A】「1年前、トランプ前大統領が投与された頃から有効性は認められていましたが、デルタ株など新しい変異株が出てきてからは有効性の低下が報告されました。それで、デルタ株やその他の新しい株に対するモノクローナル抗体を混合して1つのカクテルとして使用するようになり、現在に至ります。今のところデルタ株も含め、有効性の高い治療薬として承認されています。しかし、さらにこれを回避する新しい変異株が出現した場合、その株に対するモノクローナル抗体も付け加えられるように医療現場では準備が必要です」
【Q】現在のところ自宅療養者には投与できない。なぜか?
【A】「日本で行う場合は患者を入院させて体内の検査を行い、保健所や国などの許可を得なければなりません。また特定の病院にしか配備されていないのは、ワクチンと同様に量が非常に足りないためです」
効くとわかっても、現状では、だれもが受けられるわけではない。
(奥田研爾/横浜市立大学名誉教授)
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チャオ! コロナ前ならあいさつ代わりにキスを交わしていたイタリアで興味深い論文が投稿された。男性のコロナ感染者は、感染していない男性に比べて5.7倍もEDになりやすいというのだ。
研究チームは、オンライン調査「Sex@COVID」を通じて、18歳以上の男性2644人、女性4177人を調査。平均年齢は32.8歳。アンケートした昨年4月7日から5月4日はロックダウン中で、ロックダウンやソーシャルディスタンス、精神的・社会的・性的な健康状態を調べるのが目的だった。
そのうち性的に活発な男性985人を抽出。さらに年齢やBMI(体格指数)、不安や抑うつの状態が同程度の人の中から、コロナの感染者25人と感染していない75人を分析した。その結果、感染者のEDリスクは、感染歴のない男性の5.7倍に上ったという。
隔離された病室や療養施設でコロナの苦しみと孤独に耐え抜いて、やっと回復。元気になった喜びで妻や彼女と肌を重ねたのに、アイツが役立たずではツライ。コロナ前はEDでないのだから、なおさらだ。
40代男性が胸のうちを語る。
「コロナに感染したのは昨年10月です。会社で感染者が出て、濃厚接触者だったためPCR検査を受けたら陽性で。ホテル療養しましたが、症状はまったくなし。それでも狭い個室に缶詰めで、『もし悪化したら』と怖くなることがありました。10日で退院したときはうれしくて、真っ先に彼女に連絡しましたよ。で、彼女がウチにくれば、そういう流れになりますよね。でも、彼女の体に触れても、彼女に触れられても、全然ムクムクする感じがしなかったんです。『きっと病み上がりだから』と慰めてくれたのですが、それからもダメでした」
元気な男性でも、酒の飲み過ぎで勃たないことはよくあるが、ホテルを退所した日は「とにかく人肌が恋しくて、食事を後回しでシタかった」という。
パートナーと快気祝いをするはずが、まさかの不能で、その後もリベンジならず。コロナ前は元気だった男性がなぜなのか。
昭和大藤が丘病院泌尿器科教授の佐々木春明氏が言う。
「新型コロナウイルス感染症は、血管に悪影響を及ぼし、血栓を作ったり虚血状態を生じさせたりすることがあるといわれます。陰茎の動脈は1〜2ミリと極めて細く、ちょっとした動脈硬化で詰まりやすい。無症状でも、血管内ではそんな変化が生じているのかもしれません。また、感染後の闘病生活は孤独で、心理的なストレスがとても大きい。血管内の異常とストレスが重なり、感染した男性はEDになりやすいのでしょう」
コロナの症状には、味覚障害や嗅覚障害も知られ、治癒後も後遺症として続くことがある。多くは1カ月ほどで治るとはいえ、海外の報告では5〜10%は回復に数カ月を要することもあるといわれる。男盛りの年齢でさらにEDでは、生きる喜びが大きく損なわれるだろう。
PDE5阻害薬で血管の内皮機能を改善
EDを回復する手だてはないのか。
「新型コロナ感染症によるEDの原因の一つが血管内皮障害とすれば、PDE5阻害薬が効く可能性は十分です。この薬は陰茎の動脈を拡張させ、海綿体への血流を促すことで勃起を起こすのですが、血管内皮細胞を保護する働きもある。新型コロナによるEDには、最適の薬といえます」
PDE5阻害薬は、バイアグラ、レビトラ、シアリスに代表される薬。狭心症に使われる硝酸薬をはじめ、併用タブーの薬もあるため、服用するときは医師に相談することだ。
シアリスと同じ成分で低用量のザルティアは、前立腺肥大の薬として保険適用になっている。ザルティアは有効成分が5ミリで、シアリスは10ミリか20ミリだから、ザルティアにED改善の効果はないが、興味深い可能性がある。
「前立腺肥大の患者さんでザルティアを最低、半年間毎日服用すると、血管の硬さを調べる数値が改善するのです」(佐々木春明氏)
なるほど、PDE5阻害薬の血管内皮機能改善効果が期待できる。
■ビタミンD不足は独立したリスク
もう一つは、ビタミンDの可能性だ。スペインの研究チームは、コロナ感染者にビタミンDを投与するグループとしないグループに分けて重症化リスクを比較。投与しないグループは50%が重症化したが、投与したグループはわずか2%で済んだ。
このビタミンDについては、2015年の米国心臓病学会でEDとの関係が示されている。米ジョンズ・ホプキンス大医学部の研究者は、ビタミンDの血清値が十分なグループと不足しているグループを比べて、EDの発症リスクを比較した。すると、不足しているグループのEDリスクは十分なグループに比べて1.3倍だった。「ビタミンDの不足は、糖尿病や高血圧などとは独立したEDの発症リスクである」と結論づけている。
スペインの研究から、ビタミンDが不足した状態でコロナに感染すると、その分だけ血管の内皮機能が悪化。極細のペニスの血管は大きなダメージを受けてEDの原因になることが推察される。さらに米国の研究で、そもそもビタミンD不足の生活を続けることが、EDを助長することが読み取れる。ビタミンDの不足は、コロナ感染にもEDにもダブルパンチなわけだ。
では、ビタミンDをどうやって補うか。ビタミンDは食品では摂取しにくく、紫外線を浴びると体内で合成される。暑くなる前の午前中などに、半袖&短パンで20分ほど散歩すればいい。海やプールで泳ぐのもいいだろう。
「散歩などの有酸素運動はEDの改善に効果的。一石二鳥です」(佐々木春明氏)
もちろんサプリで手軽に摂取するのもいいが、熱中症にならないくらいの散歩なら、ストレス発散にもなる。パートナーと一緒に歩けば、よりリラックスできるだろう。散歩で日焼け、そして夜はあの薬が“男の性活”を、ひいてはパートナーとの円満ライフを守るのだ。
和歌山県は12日、7月11日〜8月10日に新型コロナウイルスに感染した人のワクチン接種状況を発表した。568人のうち498人が未接種で、45人は1回接種、2回接種し終えていたのは25人だった。県はワクチンに高い予防効果が認められる一方、万能ではないことも改めて分かったとし、「引き続き感染予防の徹底を」と呼び掛けている。
県によると、2回接種を終えた人は35万3430人おり、感染率は0・007%(10万人に7人)。これに対し、未接種または1回接種の人の感染率は0・090%(10万人に90人)だった。
2回接種したのに感染した人の大半は軽症か無症状だったが、2人は酸素投与が必要だった。ただ、人工呼吸器が必要なほど重篤になる例はなく、重症化の予防に成果を上げているとしている。
県はこのほか、県内の介護福祉施設の協力で、70歳代以上の入居者90人を含む、ワクチン2回接種を終えた10〜100歳代計100人の抗体を調査。80歳代以上は抗体の量を示す値が低い傾向にあることが分かった。このうち10人は抗体を獲得したと推定される値を下回っていたという。
県福祉保健部の野尻孝子技監は「ワクチンの効果はきわめて高く、接種を推奨するが『祖父母は2回ワクチンを打ったから大丈夫』とお盆に帰省されると感染する可能性がある。2回接種を終えた人同士で接触して感染した例も複数あり、感染予防対策はきちんと実施してほしい」と話している。