女子高生が出産男児を殺害、退学恐れて周囲に妊娠を相談できず…家裁が少年院送致に2021/04/15 00:32 

読売新聞オンライン
 昨年12月、栃木県小山市内のショッピングモールのトイレ内で出産し、生まれたばかりの男児を殺害したとして、殺人の非行事実で家裁送致された県内の女子高校生(17)について、宇都宮家裁(瀬戸啓子裁判長)は13日、第1種(旧初等・中等)少年院送致とする決定を出したと発表した。女子高生は周囲に妊娠を打ち明けられないまま、1人で抱え込んだ末に犯行に至った。同様の事件を担当した経験がある弁護士は、孤立させない態勢作りが急務だと指摘する。

 同家裁は12日、少年審判を開き、決定。決定などによると、女子高生は昨年12月18日、友人と訪れた小山市内のショッピングモールで産気づき、1人で女子トイレで男児を出産した。その直後、ハサミ(長さ5・6センチ)で男児の首を切りつけて殺害した。

 女子高生は妊娠の可能性を認識しながら、退学を恐れ、周囲に相談するなどの適切な援助を求めることができないまま、思いがけず外出先で出産。瀬戸裁判長は「出産直後も周囲に助けを求めず、生まれたばかりの男児の殺害を決意しており、その経緯は短絡的」とし、刑事処分より矯正教育を施すことが相当と指摘。「生命を産み育てることの責任の重さを理解させることが必要不可欠。収容時間は比較的長期間の処遇とするのが相当」と結論付けた。

 捜査関係者によると、女子高生は役所に妊娠届を提出しておらず、医療機関も受診していなかった。家族も妊娠を知らなかったが、一方で学校関係者の一部では妊娠の疑いがあることを把握していたとみられるといい、別のある捜査関係者は「周りの大人がどうにか助けられなかったのか」と話す。

 群馬県では今年3月、少女(19)が交際相手の男(21)の自宅で出産後、乳児をビニール袋に入れて遺体を遺棄したとして、2人が死体遺棄容疑で逮捕される事件があった。県内でもかつて少女が出産したばかりの乳児を放置して死なせてしまう事件があった。この事件を担当した弁護士によると、少女は当時、「妊娠や出産を知られたくなかった」と話していたといい、弁護士は「周囲の環境など様々な理由から、未成年者では妊娠を言い出しづらいことがある。周りが気付いてあげられる態勢作りが必要だ」と話している。



もっと「助けて」と言える場に 病院が中高生の妊娠相談 支えたい特定妊婦2021/04/18 11:00  47リポーターズ

 不安げな表情を浮かべ、10代の女性が肩を震わせた。「誰にも言えなかった」。予期せぬ妊娠に悩み、孤立する彼女たちの相談に乗るため、全国20の産婦人科医療機関が昨冬以降、中高生向けの窓口を設置した。保険証を提示せずに匿名で受診でき、無料で妊娠検査を受けられる。背景には、生後間もない赤ちゃんの虐待死や遺棄事件が全国で相次いでいる実態がある。追い詰められた若者が「助けて」と駆け込める場所はまだ少ない。どうすれば悲劇を防げるのか。(共同通信=小川美沙、松本智恵)

 ▽敷居低く

 窓口を設置したのは、予期せぬ妊娠をした女性の相談に乗っている「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会(あんさん協)」https://anshin-hahatoko.jp(本部・埼玉県熊谷市)に加盟する医療機関。協議会は2013年に発足し、若年妊娠だけでなく、貧困など困難を抱える「特定妊婦」を支援。特別養子縁組のあっせんや相談にも対応してきた。発足から昨年9月までの相談は200件。うち、約3割が中高生だ。

 新型コロナウイルス禍では、休校や長期間の外出自粛も影響したとみられ、若者からの相談は後を絶たない。親に話せないまま自宅出産してからSOSを出した学生も。こうした孤立分娩(ぶんべん)は、母子ともに命の危険がある。ほかにも、生後ゼロ日の赤ちゃんを遺棄するなどの「虐待死」をなくすため、中高生向けの取り組みを始めたという。

 あんさん協事務局の鮫島かをるさんは「お金がないとか、誰かに話すと責められるではないかとか一人で悩む若者も、産婦人科に足を運んでもらい、支援につなげたい。産婦人科の敷居を低くしたい」と訴える。いずれは国や自治体に取り組みを進めてほしいと願う。

 ▽秘密は守る

 あんさん協加盟の熊本市の福田病院は昨年11月に窓口を設置。これまで中高生から十数件の相談があった。「性感染症が心配」「避妊せずに性交渉してしまった」などの声や、緊急避妊薬(アフターピル)に関する相談もある。「秘密は守る」と伝え、安心して相談してもらうという。

 同病院ではこれに先立ち、2016年に「母子サポートセンター」をスタートした。医師、助産師、社会福祉士や公認心理師ら専門職が連携し、特定妊婦に相当する女性たちを支援してきた。

 うち、20歳未満の相談は1割ほどだが、社会福祉士の日高恵利さんが「もっと早く相談してくれたら…」と感じたのは一度ではない。「交通費も受診費もない」という理由で出産間近に駆け込んできたケースや、正しい避妊方法を知らず「妊娠なんかしていない」と思い込み、保護者が体の変化に気づいて連れてきたケースもあった。

 ▽早めのアプローチを

 「若年妊娠は問題が多岐にわたり、複雑に絡み合う」と日高さん。来院する10代の女性の中には、複雑な家庭環境で育つ人や、虐待、性暴力の被害を受けた人もいる。本人の希望通り学業を続けられるかどうかも大事な問題だ。学校の実情を知るスクールソーシャルワーカーや、児童相談所、保健所など関係先との連携も欠かせない。

 子どもを育てられない場合は、特別養子縁組の支援もしている。出産後、赤ちゃんと1週間ほど一緒に過ごすうちに「連れて帰りたい」と気持ちが揺らぐ女性たち。「『かわいい可愛い』だけでは育てられないから、育てるには何が必要か考えよう」と声をかけ、丁寧に寄り添う。

 日高さんは訴える。「孤立しがちな若者にどう早めにアプローチし、選択肢を示せるか。もっと多くの医療機関でこうした支援をしてほしい」

 同院では、若年妊娠は特定妊婦に相当するとして支援しているが、自治体によっては認識に差があり、特定妊婦に認定されないこともある。その場合、保健師による訪問など行政の継続的なサポートから漏れてしまう。「認定にある程度の基準が必要だ」とも指摘する。

 ▽男性も当事者

 国の統計や報告によると、19年の20歳未満の出産は7782件。中絶件数は20歳未満が12678件で、うち15歳未満が186件あった(19年度)。

 一方で、中学の授業では原則、中絶や避妊が取り扱われていない。学習指導要領で「妊娠の経過は取り扱わない」という記述があるからだ。性教育が遅れている中で、予期せぬ妊娠をした若者は、出産や中絶の重大な決断を迫られているとみられる。

 あんさん協の鮫島さんは「性教育はどう生きるかを教えることで、男性も当事者であるという認識が十分とは言えないのでは」と指摘する。

 鮫島さんは、ある女子学生が加盟医療機関を訪れ、泣き崩れた姿が忘れられないという。

 女子学生は母親に妊娠を話せないまま中絶可能な時期を過ぎ、体調も悪く、数カ月の入院を要した。20代の恋人とは連絡が取れない。生まれた子どもを「育てたい」と望んだが、実際には難しく、特別養子縁組をした。

 恋人の住居を突き止めたが、間もなく引っ越されてしまい、足取りがつかめなくなった。彼女は心身共に追い詰められた。母親が「こんな理不尽はない」と吐き出すように言ったのが耳に残っているという。

 ほかにも、ずっと一人で不安と闘ってきた妊婦は何人もいた。鮫島さんは「妊娠を誰にも喜ばれず、死を考える人もいる。女性にだけ『自己責任』と迫るのはおかしい。社会で支えるべきだ」と訴える。

 ▽伴走的支援を

 「性教育は男女問わず、自分の人生の道筋を考える上でのライフスキル。誰にとっても自分ごとだととらえてほしい」

 そう話すのは、妊娠や出産の問題に詳しい静岡大の白井千晶教授(社会学)。避妊や中絶だけでなく、子を産む場合はどういった制度を活用できるか、養子縁組などの選択肢も含めて若者に早い段階から情報を伝えるべきだと考える。

 白井教授は、法律の問題点も指摘している。特定妊婦の支援を定めた児童福祉法は、生まれてくる子どもの健全な成育の保障が目的。「女性を支援する視点が十分でない」と説明する。

 こうした現状で求められているのは、若年妊婦が安心して相談できる場所という。各地域に、学業の継続や就業支援、今後の生活も含めて一カ所で相談できる「ワンストップ・サービス」の必要性を訴える。

 白井教授によると、海外では妊娠検査を含め、出産費用が無料となっている国もある。韓国も、未婚母を包括的に支援しようという取り組みが進んでいる。ソウルにある民間施設「エランウォン」には公費も投入され、若年妊婦が無料で入所できる。妊娠中から産後、乳幼児期まで滞在することができ、職業訓練やカウンセリングも受けられ、母親が高校や大学に通う時間は、保育室に子どもを預けることもできるという。

 日本でも一時的に母子を保護する施設はあるが、妊娠中から産前・産後まで継続的なサポートが受けられるところは少ない。「予期せぬ妊娠で危機的な状況に陥った若者に寄り添い、包括的な支援ができるよう法制度の整備も必要だ」としている。

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10年で7倍、大幅増の「特定妊婦」とは 予期せぬ妊娠、生活苦…相談阻む〝自己責任〟https://www.47news.jp/47reporters/6127237.html




10年で7倍、大幅増の「特定妊婦」とは 予期せぬ妊娠、生活苦…相談阻む〝自己責任〟2021/04/17 11:00  47リポーターズ

 「助けを求めてはいけないと思っていた」。福岡県に住む30代の小林結衣さん(仮名)は2019年末、予期せぬ妊娠が判明した後、一度も病院を受診しないまま出産を迎えた。「妊娠は自分の責任で、人に頼れない」と思い込んでいたから。未婚の上、仕事もなく、生活苦だった。破水した時、もし救急車を呼ばなかったら自分も赤ちゃんも無事ではなかった。

 貧困や望まぬ妊娠といった困難を抱える小林さんのような妊婦は、国の調査で7200人以上いる。専門家の間では、この数字すら「氷山の一角」と指摘されている。福岡市など一部の自治体では、こうした妊婦が安心して生活できるような支援を始めた。小林さんも出産後にサポートを受けた一人。今も一人で悩む妊婦へ「あなただけじゃない。一人で抱え込まずに相談してほしい」と呼び掛けている。(共同通信=松本智恵)

 ▽一歩踏み出せない

 小林さんはある男性と付き合いだした19年末、体調がすぐれず生理が遅れた。市販の妊娠検査薬を買って試すと陽性だった。妊娠2カ月。うれしさもあったが、不安の方が圧倒的に大きかった。男性とはこれまで、結婚の話もしていない。妊娠したことを伝えると、次第に連絡が取れなくなった。

 仕事は不安定な派遣社員。貯金もない。両親とは死別し、兄弟とも疎遠だった。妊娠判明の1カ月後には、つわりなどで体調も悪く仕事も辞めざるをえなかった。新型コロナウイルス感染症がまん延し、外出すら怖い。誰にも相談できないまま、家に閉じこもった。

 「誰かに相談しなければ」と考え、インターネットで支援窓口を探したこともあったが「自己責任」という思いが頭をよぎった。避妊の方法を知らなかったわけではないから。自分に対する情けなさが消えない。大きくなるおなかを見て何度も「エコーで赤ちゃんを見たい」と願ったが、病院には行かなかった。

 ▽「もう一人じゃない」

 それでも中絶する意思はなく「この子を諦めるぐらいなら自分も死のう」と考えるようになった。妊娠後期の翌年9月、ついに自宅で破水。痛みに耐えながら死を覚悟したが、「たとえ迷惑をかけても産みたい」と思い直し、119番した。

 搬送先の病院で緊急帝王切開となり、娘を出産。小さな顔と一生懸命泣く様子を目の当たりにし、涙が止まらなかった。不安に反して病院のスタッフはみな優しく、心理士からは困難を抱える母子が暮らせる福岡市の産前・産後母子支援センター「こももティエ」を紹介され、入所した。

 ミルクの作り方や沐浴(もくよく)方法など、育児に必要な知識を学んだ。職員も一緒になって娘の成長を喜んでくれた。周囲の優しさに支えられ、今年、センターを卒業。子育てへの不安はつきないが「もう一人ぼっちではない」と今は思える。職員の家庭訪問を受けながら暮らし、生活が落ち着いたら仕事を探す予定だ。

 ▽始まった支援

 福岡市では孤立する妊婦を公的支援につなげようと、昨年10月から会員制交流サイト(SNS)を活用した相談窓口の設置や、妊娠中から暮らせる住居支援を始めた。

 事業を委託された社会福祉法人が運営する「こももティエ」には、ベビーベッドなどの子育て用品が完備された部屋が設けられ、看護師やソーシャルワーカーなどの専門チームが、病院への同行から育児のサポートまで、切れ目ない支援で母親に寄り添う。

 「妊娠したことをパートナーに言えない」。「コロナで夫が失業して子育てが不安」。センターの窓口には多くのSOSの声が寄せられている。宮城や埼玉など遠方からの相談も多い。中絶が不可能な妊娠22週を超えた女性もいるという。

 厚生労働省も2019年から、こうした「産前・産後母子支援事業」を行う自治体への財政補助を本格的に開始している。20年度には母子を受け入れる施設に対する生活費や住居の賃借料も対象に加えたが、福岡市のように相談事業と住居提供の両方を行う自治体はまだ少ないという。

 ▽特定妊婦って?

 「特定妊婦」という言葉を知っている人はどれくらいいるのだろうか。児童福祉法に明記され、貧困を抱えていたり望まぬ妊娠をしたりしたなど、出産前から支援が必要と行政が登録する妊婦のことだ。制度が始まった09年から10年間で約7倍と大幅に増え、2018年は7223人だった。それでも知名度はまだ低い。

 登録された人数も地域間でばらつきがあり、支援が必要な妊婦を十分に把握できていない。19年には20代の女性が就職活動で上京中にトイレで赤ちゃんを出産し、殺害する事件も起きた。その後も、産んだ赤ちゃんを母親が遺棄、虐待する事件は後を絶たない。

 こももティエの大神嘉センター長は「小林さんは無事に卒業できたが、一歩間違えば母子ともに危険な状態になっていた。本来であれば妊娠中から『特定妊婦』として登録され、細やかな支援が行われるべきケースだった」と指摘する。

 ▽アウトリーチも

 自治体はこうした妊婦を把握する方法として、妊娠届提出時の面談や病院などとの連携を挙げる。だが予期せぬ妊娠などに悩む女性は「責められるのではないか」との不安から、行政窓口や病院への相談は想像以上にハードルが高いという。

 センターでは今後、地元の民生委員や子ども食堂などとの連携も模索。地域に心配な妊婦や母親がいないか情報を共有し、必要であればセンター側から訪問するなど「アウトリーチ型」の支援もしていきたい考えだ。妊婦の中には知的障害などを抱え、相談場所や方法が分からずに孤立する人も多いという。

 生まれてくる子どもの養育についても、妊娠中から丁寧な支援が欠かせない。妊婦が若かったり、病気だったりする場合、自分で育てることが難しいケースがあるが、出産後すぐに決断することは難しい。センターでは今後、里親団体とも連携し、出産後にどういった選択肢があるのかを知り、将来についてじっくり考えることができる仕組み作りを進めたいとしている。

 ▽一人で悩まず

 娘とともに新生活をスタートさせた小林さんは、妊娠時の自分と同じ境遇を持つ人がいたら「助けを求める声に耳を傾け、手を差し伸べてくれる人はきっといる」と伝えたいと語った。相談を阻む自責の念や批判への恐怖は痛いほど分かる。だからこそ「大丈夫だよ、優しい人はたくさんいる」とも呼び掛けたい。

 福岡市のこももティエに加え、福岡県は特定妊婦らの相談事業や妊娠中から暮らすことができる住居の提供を、21年度中にも始める。大神センター長は「少しずつ取り組みは広がっている。一人で悩まず声をあげてほしい」と訴える。

 こももティエではウェブサイト(https://comomotie.jp)から、ラインやメールで匿名での相談が可能。ほかにも全国妊娠SOSネットワークのウェブサイトでは各県の支援団体を記載(https://zenninnet-sos.org/contact-list)しており、最寄りの相談先を知ることができる。

 ▽相談できる社会を

 記者も18年に妊娠が判明し、19年に子どもを産んだ。つわりや腰痛などの体調不良や、胎内に宿った小さな命を守る重圧。親になるという責任に何度も押しつぶされそうになることがあった。

 それが予期せぬ妊娠であったら、状況はさらに複雑となる。ただでさえ急激な体の変化に戸惑う女性が、「自己責任」だからと、たった一人で自らを責め、苦しい状況を誰にも相談できない社会であってはいけない。

 悩みを抱える妊婦やそのパートナーが、ちゅうちょせずに公的機関につながり、かけがえのない命が守られる社会となってほしい。

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一般社団法人 あんしん母と子の産婦人科連絡協議会(あんさん協) 





共同通信




時事通信社

 子どもを性暴力被害から守ろうと、文部科学省などは16日までに、幼稚園や保育園、小中高校などで活用できる教材を作成した。水着で隠れる部分を見られたり、触られたりして嫌な気持ちになったときは、「嫌だと言って逃げよう」などと教えている。

 恋人同士の間で起きる暴力(デートDV)やインターネット交流サイト(SNS)を通じた被害なども例示。同省によると、発達段階に応じた性被害防止の教材を作るのは初めてという。

 名称は「生命の安全教育」。幼児や小学校低学年向けには、水着で隠れる部分のほか口や顔は「自分だけの大切なところ」と教えた上で、他の人に見せたり触らせたりしないよう指導。触られて嫌な気持ちになったときは、安心できる大人に相談すべきだとした。

 中高生向けには、性暴力を「望まない性的な行為」と定義。体に触るだけでなく、言葉によるケースもあり、被害は性別にかかわらないと指摘した。交際相手にスマートフォンの履歴をチェックされたり、SNSの返信をすぐに返さず「遅い」と言われたりした場合など、どう対応すべきか考えさせる項目も設けた。

 教材に関する指導の手引では、性暴力被害を打ち明ける児童生徒がいた場合、専門機関と連携して対応するよう求めたほか、保護者には事前に授業の狙いを伝えるよう要請した。

 道徳や保健体育の授業などでの活用を想定しており、今年度中に教材を使ったモデル授業を複数の学校で行う。文科省は「ぜひ各学校で活用してほしい」としている。
















読売新聞オンライン





デイリー新潮

残高証明書

 大阪市阿倍野区の聖天山(しょうてんやま)に建つ真言宗「正圓寺(しょうえんじ)」は、千年前、平安時代に開基された寺院。地元で「天下茶屋の聖天さん」と親しまれるナニワの名刹はいま、事件屋たちに乗っ取られ解体の危機にある。なぜそんな事態となったのか。

 ***

 きっかけは、寺の敷地内に特養老人ホームを建設しようとしたことだという。正圓寺の15代目住職、辻見覚彦氏が経緯を明かした。

 2017年3月、施設運営のための社会福祉法人「天下茶屋聖天福祉会」が設立され、辻見住職が理事長に就く。市からは3億7120万円の補助金、福祉医療機構からも8億7120万円の融資が決まった。工事を請け負うのは地元のゼネコン“今西組”で、建築費は12億円也。

 だが、着工後まもなく資金繰りに窮する。補助金や融資が交付されるまでは銀行などからの“つなぎ融資”で工事を進めなければならないが……。

「どこの金融機関も融資に応じてくれませんでした。原因は、私自身が架空の“残高証明書”を大阪市の福祉局に出してしまったからです。福祉会の基本財産1億円には寺からの寄付金を充てるつもりでした。しかし、どうしても1億円が用意できず、寺の総代から借り入れました」(辻見住職)

 一旦、その1億円を福祉会の口座に入れて残高証明書を入手。総代にはすぐ返金したものの、不正は金融機関に広まっており、資金手当ては頓挫した。

「あとで元に戻したらエエ」

 その時期、金策を相談していた経営コンサルタントが不動産ブローカーを連れてきた。正圓寺の敷地の一部は阿倍野区に隣接する西成区に入り込んでいるのだが、ブローカーは、「今西組は寺とアンタの資産を差し押さえるつもりや」と言い立て、宅地開発しやすい西成が最初に狙われるからと、土地の名義を変更するよう畳みかけてくる。

 変更先はブローカーが実質支配下に置く会社だったが、「形だけやから。あとで元に戻したらエエ」と言われて応じたという。

「事あるごとに残高証明の不正で脅される一方で、言葉巧みに唆(そそのか)され、寺の資産を奪われていきました。遂には、不動産ブローカーが“わしの師匠”と称する事件屋の登場で、後戻りできないところまで追い詰められることになったのです」(辻見住職)

「週刊新潮」2021年4月8日号「MONEY」欄の有料版では、辻見住職が追い詰められる過程と事件屋たちの人物像を詳報する。

2021年4月16日 掲載