隣の席になった私達は次第に仲良くなった。
彼にちょっかいをかけられて、私がそれを嫌がり、
それがうるさくて先生に注意を受ける、というような極めて小学生らしいやりとりを毎日のようにしていた。もちろん、ちょっかいをかける彼は私のことが嫌いなわけではないし、嫌がる私も当然嫌ではなかった。小学生がする恋愛とは良くも悪くも爽やかなもので、彼は彼女といつの間にか別れていた。
すると、友達から付き合っているのかと聞かれることも多くなり、否定はしていたが満更でもなかった私は、毎日が楽しかったのを覚えている。
私は彼のことが好きになっていた。



当時の私にとって、恋とはまさしくファンタジーであった。見たり聞いたりして楽しくはなるが、そこに自分という存在を介入させようとは思ったことがなかった。恋とはあくまでUFOのようなもので、それが実在するかどうかは人によって違う。見ようと思えば、夜に飛ぶヘリコプターも自分の中でUFOにできる。そんな、現実か妄想かよく分からないふわふわとした存在が私の中の「恋」という感情であった。

だからこそ、今でもしっかりと覚えている。
夏休みに入り、毎日会っていた彼に何十日間も会えなくなったとき。布団に入り、無意識にすごく彼に会いたくなった。そして、会いたいと思っている自分がいることに気がついた。
それは、大して信じてもいなかったUFOが一気に現実になった瞬間であった。
恋をしていることを自覚した。
彼のことが好きだと思った。
驚きよりも嬉しさの方がずっとずっと大きかったのをよく覚えている。あれは間違いなく、私のこれまでの、そしてこれからを含めた人生の中で最高に素敵な出来事であった。


恋を知り、勝手に甘酸っぱくなっていた私の夏休みは終わり、新学期が始まった。時間が経っても彼とは相変わらず仲が良かった。
ある日彼は私に好きだと伝えてくれた。はっきり口に出して教えてくれたわけではないが、彼の好きな人が私だということを教えてくれた。
嬉しいよりも恥ずかしい気持ちが勝った私は、彼の言葉も、自分の気持ちも誤魔化した。彼が少しがっかりした顔で「まじで空気読めてない」と言ったあの瞬間は、今でも私の脳のしわに深く刻み込まれている。これは私が今までしたことの中でトップ5に入る最悪な出来事であった。




秋の陽にあたる柿